第1221話 41枚目:調査状況
とりあえず今のところ何も起こっていない、というか見つかっていないので、素直に森の中にある丘、その上にある集落へ移動だ。なお周囲の森だが、この木自体は空間異常の周囲にも生えていたそうなので、これ自体は普通の植物らしい。
木としての性質を調べるのは外である通常空間でやっているらしいので、そっちの情報待ちだ。もちろん内部でも、集落を構成している建物はこの木を使っているらしいので、建材という意味で調べているようだが。
それと、この村か町には特徴的なところが1つあった。外から見れば一目瞭然なそれは何かというと。
「防壁が無いっていうのは相当に特殊ですね。竜都ですらぐるりと周囲を囲む高い壁があったというのに。隠れ里かなんかだったんでしょうか」
「まぁ俺らはまた事情が特殊だからな……」
「でも確かに不思議だね。もしそこまで強い種族だったら、ボクらも知ってそうなものだけど」
「そうだねぇ。防壁が無くても、子供や町を守れるって事だしぃ。少なくとも、何か特殊な能力ぐらいは持ってそうな感じだねぇ」
っていう事なんだよな。周りの森が防壁替わりだったのかとも思うが、森自体はもっと周囲に広がっている普通の地形だったし。住民がいないせいかも知れないが、トラップっぽいものも無い。
だからもし「防壁が必要ない」のであれば相当な強さがある筈だし、「代替手段がある」ならよほど特殊な種族特性か技術(魔法含む)を持っていたという事になる。となれば、サーニャのいう通り、ある意味有名になっている筈だ。
……だから神の名が分からなかったのかな、という気もちょっとする。有名なら、神の名からどんな種族だったかを調べて、そこから芋づる式に全部ギミックが分かりそうだし。
「で、中心まで来ましたけど……とりあえず今のところ、普通でしたよね?」
「そうだね。特に引っかかるものは無かったよ」
「雑草まで全部黒いのは気になったけどぉ、そういう土地なのかなっていう気もするねぇ」
「……何となく違和感はあるんだが、それが何かまでは分からないな」
エルルは何か引っかかっているようだが、それが何かは分からないようだ。まぁ何もないよりはずっといいな。分からないって事はモンスター由来でもないって事だろうし。
特に何事もなく辿り着いた村か町の中心は、大体の村や町と同じく広場になっていた。地面を何かで覆っていることも無く土がむき出しで、丘の頂点だからかやや丸みを帯びている。シンボル的な物や祭壇的な物は見当たらない。
それでも一番人がいるのはここなので、儀式が行われていたとしたらここなんだろう。わざわざ外でやるとは思えないし。
「道が1本だけ太くてまっすぐこの広場に繋がっていましたから、もしかしたら外から来たり、あるいは外に出て行ったりする形の儀式だったのかもしれませんが……」
「それ、例えば逆になってたらどう考えてもダメだよねぇ」
「ダメなんですよね」
ダメなんだよな、どう考えても。その道の方向が真北っていうのもかなり悪いんだけど。例えばの話であって、他にもいろいろ可能性はあるんだけどさ。
でも「どう間違えたか」の有力候補ではあるんだよな、残念ながら。地形的にそれが一番「ありそう」なのは確かだし。
「……お嬢」
「どうしました?」
まぁそれはそれとして、どう動いたもんかなーと思っいながら広場を横切ったりしていたら、エルルから声がかかった。振り返ると、微妙に眉間にしわを寄せている。何か見つけたか気付いた?
「たぶんだが……この広場の真下、そこそこでかい空洞があるぞ」
「……。入り口とか分かります?」
「いや流石にそこまでは分からん、けど、何かどっか、繋がってそうな感じは……ある、か?」
うーん? という感じでだいぶ悩みながらだが、間違いなく発見報告だな。それが聞こえたらしい範囲の人達の動きが、地面を調べたり叩いたり方向に変わったから。
しかし丘の中心に大きな空洞か。……もしかすると、この丘自体が人工物って可能性もあるのか。確かに、やけに村か町を作るのに都合の良い地形だなとは思ったけど。
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