第1220話 41枚目:調査開始
ルディルの準備を手伝い、主に大型の調合道具を私のインベントリにしまってから高難易度な空間異常に突入だ。
なお今回からステージが変わったというか難易度が上がった判定になるのか、制限時間が表示されるところまで捧げものをしても、神の名前が出てこなかったらしい。
これより前に発見されていた空間異常の仕様は変わっていないようだが、“理知にして探求”の神が言及していた集落の場所にあった空間異常は全部そうだったようだ。
「一応、どうすれば解決と言えるのか、という目標は出てきたようですが……それも「儀式を本来の形に修正し、完遂する」ですからねぇ……」
「んな曖昧な……」
「というかぁ、それってもしかして、儀式の途中でこうなったって事ぉ?」
「あ! 言われてみれば!?」
「その可能性が非常に高い、そうですよ。先行した人達の調査によれば」
もうこの時点で頭が痛い。しかも本来の形に修正し、って事は、何か間違った状態で行われてた儀式って事だ。初っ端からかなり頭が痛い。これ、世界規模スタンピートと「モンスターの『王』」だけが原因じゃないな? って気すらしてくる。
前提条件の時点で厄介さのレベルが際限なく上がっていく訳だが、これたぶん、実際に調べてみたらどんどん頭を抱えたくなるんだろうな……って気もちょっとする。だって絶対碌な事になってないだろ。
とはいえ、解決しないという選択肢は無い訳だ。頭は痛いけど。その厄介さに頭は痛くなるけど。
「……。なぁ。これ、お嬢は踏み込んだ時点でダメなんじゃないのか?」
「生贄を要する儀式だったとは聞いてませんし、
「うっかりどこかに当てはまってしまう……っていうのはありそうだけどねぇ」
「姫さん???」
「やらないという選択肢はありませんし。2重に領域スキルを発動すれば大体の儀式は止まりますし」
「そういう事じゃないんだが!?」
私の生贄適性が高すぎる案件にエルルが思い当ってしまったようだが、うん、まぁ、その、まだ自衛できる分私の方がマシかなっていうか、だからエルルとサーニャに来てもらった訳だし。
さっそく短くもお説教が入ってしまったが、ともかく。空間異常の内部だが、どうやらちょっとした丘が中心にあるようだ。ただ丘の高さとしてはさほどでもなく、その周囲に生えている乾燥地帯に適応したらしい堅い木の森に隠れてしまう程度となっている。
煤でも被ったように黒い木の背が高いっていうのもあるだろうが、この木自体は珍しいだけで普通の木らしい。とりあえず、今現在までで分かっている範囲では。しかし葉っぱまで筋張ってて硬いとは不思議な木だな。
その中心にある丘には、この周囲の木を使ったらしい木造建築が並んでいるようだ。ただどれも平屋であり、とりあえず調べられた範囲では丘を掘りぬいた地下がメインの作りをしているらしい。
で、問題は、だな。
……住民が、ただの1人もいないって事だな。
「丘自体はそれなりの大きさがあり、高さ自体は無くてもなだらかでそこそこ広さがある。ちょっとした町ぐらいの人数が住んでいる痕跡もある。のに、誰1人として、住民がいないと」
「おかしくない?」
「おかしいんですよね」
サーニャの素直な感想で正解である。絶対におかしいだろ。前提条件と合わせて嫌な予感しかしないんだけど。
「モンスターの群れが来たから逃げた、とかじゃなくてか?」
「生活感が残ってたらしいんですよね……中身の残ったお鍋とか、台所に積まれている食器とか……」
「でも、襲撃はあったんだよねぇ?」
「周りの森には、モンスターが大挙して襲い掛かった時のものと思われる痕跡が残ってるようです」
「なら襲撃自体はあったって事か。で、その痕跡は?」
「丘を中心としてぐるりと見て回った限り、どの方角でも、森の半ばまでで不自然に途切れているとの事です」
「何それ怖い!」
うん。そうなんだ。
とりあえず分かってる範囲の情報を見る限り、どうにもホラーなんだよなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます