第1203話 41枚目:攻略模様

 ダンジョン内部で、領域スキルの展開自体は問題なくできた。……問題だったのは、その展開コストとダンジョンからの影響の強さだな。範囲を限定してなおかつ【王権領域】と【調律領域】を重ね掛けた上でギリギリってどういう事だ。

 これは、下手に旗を使ったら私でも維持コストで削り切られるのでは……? と思ったが、とりあえず安全圏は確保できた。既に探索準備は万端だった召喚者プレイヤーの人達が張り切っている。

 だからダンジョンの探索は、まぁ、順調と言えば順調……だったのだが。


「神が神だとは言え、こう来ます?」


 この空間異常の中にいるのは“理知にして探求”の神。研究、探索といった具体的な行動に加護を与え、好奇心、探求心といった精神に祝福を与える、主に研究者が信仰している神だ。存在が知られれば召喚者プレイヤーからもそれなりに信者が出てくるだろう。

 もちろん「モンスターの『王』」の影響もかなり強いが、神の力や影響も十分にある。その結果どういうダンジョンになったか、というとだな。


「まさかのパズル系ダンジョンとか聞いてないんですけど。それもダンジョンの構造自体を作る方の。しかもパズルに使うパネルを探索して収集しないといけないとか」

「モンスターも弱点属性や弱点部位がはっきりしている分だけ他への攻撃が通じないやつばっかっすね。ある意味分かりやすいと言えば分かりやすいっすけど」


 っていう感じだ。なおモンスターはその辺から湧いてくるが、宝箱や罠はパネルに書いてあって動かせない。そしてパネルにはその存在が書いてあるだけで、そのパネルが実体化した場所のどこにあるかは分からない。

 いやまぁ、滅茶苦茶頭を使う構造というか仕掛けだから、納得ではあるんだけどね? 司令部というか、元『本の虫』組の人達が集められたパネルを前に、どう組み合わせればいいかを楽しそうに話し合ってるのはいいんだけどさ?

 とはいえ、場所が場所だからこの行動自体が神への捧げものという扱いなのか、それとも「モンスターの『王』」の力を削っているからか、パネルを集めて構造を作り、モンスターを倒して探索して、罠や宝箱を解除したり開けたりしたら、かなり「モンスターの『王』」の影響力は下がってきてるんだけど。


「というか、宝箱の鍵もパズルになってるってどうなってるんでしょう」

「そういう場所だから、で封殺される気がするっす」


 それもそうかも知れない。しかしフライリーさん、戦力は十分だからって私の頭でくつろいでていいのだろうか。

 ……まぁ、いいんだろうな。近くを通る召喚者プレイヤーが大抵はとても良い笑顔になってるから。私が手元で組紐作ってるのもあるかも知れないけど。主目的は「モンスターの『王』」の影響をカットする為だけど、普通に領域スキルとしてのバフもかかるから、戦闘が一方的に過ぎるんだよな。


「ところで先輩、移動しながら出来る作業っていうのは分かるんすけど、さっきから何作ってるんすか?」

「お香を作ろうとして失敗作になった、香りの強い液体があるらしいんですけど、それを布や糸に染み込ませてから乾かすと、それもお香になるらしいんですよね」

「……先輩が作ってるのは普通の組紐っすよね?」

「これ、私が作ったお札を細長く折りたたんだものを編んでるので」

「あれっ!? 糸にしては幅が広いなと思ったらそうだったんすか!?」


 そうなんだよな。ちなみに、ちゃんとその液体、香り液を吸い込むのは確認済みだ。効果の方もばっちり確認が取れている。もちろん本来ならこんな作業をしている場合じゃないんだろうけども。

 だってダンジョンアタックには違いないんだし。パズルという名の謎解きメインだとは言え普通にモンスターは出てきて戦闘になってるし。

 ……まぁ、特級戦力が暇に置物してるっていうのは、いい事だ。……たぶん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る