第1199話 41枚目:順調攻略

『ところでカバーさん。今出てきた「神が疲弊してた」みたいなことって、どこかで情報出てきていましたか?』

『いえ、こちらで確認できている限りでは全くですね。とはいえ、まだ攻略及び情報の開示が完了した空間異常の方が圧倒的に少ないので、今回が情報収集だった、という可能性も十分にあります』


 という事だったので、やっぱり情報は足りなかったようだ。うーんこの消化不良感。いきなり出てこられても感情移入しづらいんだよな。それでなくても単純作業しかしてないっていうのに。

 砂に触れないように気を付けさえすれば、まぁ、確かに、平和と言えば平和だったのかもしれないが……いや、平和だったのもギミックをところどころ力業で縮めたからだな? 主に“導岩にして風守”の神に出てきてもらうとことか砂を掘り返すのに大量の使い魔を動員したとことか。


『今のところ司令部では、この空間異常は「作業量としての高難易度」だろうという方向で意見がまとまっているようです。なので、仕掛けや謎、情報という意味の難易度は低いのではないだろうか、という推測が出ているそうですね』

『あぁなるほど、そういう感じの……まぁ確かに言われてみればそうなんですけど』


 ちょっと思うところはあるが、まぁ、難易度が低いというのは歓迎するべき事だな。今回が作業量的な高難易度だっていうんなら、仕掛け的な高難易度とか情報的な高難易度とかもあるって事だろうし。

 どうやら「モンスターの『王』」の影響を受けている“湧水にして脈穴”の神の半身(?)側についている眷属さんは、他の眷属さん達が抑えてくれるようなので、私達召喚者プレイヤーはせっせと再生系の回復魔法や石の棒を使って巨大な人型から「モンスターの『王』」の影響を取り除いている。

 元は水だからか、結構器用にまとう砂を操って追い回してくる巨大な人型だが、その砂を石の棒を使って水に戻して変えて、その分だけ空いた場所を通して本体である土部分に再生系の回復魔法を通すだけの簡単なお仕事だ。


「最前線を張れる召喚者プレイヤーなら、逃げ回りながらレイドボスに張り付いて攻撃する、っていうのは、今まで何度もやってる事ですしね。取り巻きもいないならこんなもんでしょう」


 一応その合間に湖跡地の底も覗き込んでみたんだが、こちらもすっかり地下水脈に繋がっていた部分まで空間があいたと見てよさそうだ。巨大な人型は、膝から下が砂になって湖跡地の壁面に張り付いていた。不思議な事だが、あれでそこから上の重量を支えているらしい。

 時々一部召喚者プレイヤーが湖跡地に飛び込んでいると思ったら、その支えている部分を水に戻す変える事で、足が滑った感じになって街への上陸を妨害していたようだ。なるほど、それで時々ガクンっと巨大な人型がバランスを崩してたんだな。

 本来なら、あのデイカーと呼ばれた眷属さんが取り巻きというかセットだったんだろうが、しっかり他の眷属さんを復活させておいた事が幸いして、今のところ封殺できているっぽい。


「ま、作業メインの空間異常というなら、多少単調さが勝つのも仕方ありません。無事日付が変わる前に決着を付けられるなら、それで何も問題ない訳ですし」


 まぁその。若干、だな。嫌な予感というか、何というか。“湧水にして脈穴”の神、という、その名前からして明らかに重要な神が関わる空間異常で、作業優先ってなると、ちょっと思うところがあるというか。

 もしかすると、運営的にはクリア報酬である「加護の証」を、“湧水にして脈穴”の神だけじゃなくて、もしかしたら“導岩にして風守”の神の分も。明らかに重要な神様だから、可能な限り多くの召喚者プレイヤーに配るつもりだったんじゃないかなって。

 だってほら、作業量が多いって事は、たくさん召喚者プレイヤーが参加できる、参加した方がいいって事だから。


「……まぁ、今までの行いを振り返れって話なんですけど」


 まーやってしまったものはしょうがない。何、応援という形でトップ召喚者プレイヤーはかなりの人数が来てくれてるんだ。補正は大きいかもしれないが特殊効果があるなら何か別の形で入手チャンスがある筈だし、ここで手に入らなかったとしてもこの後頑張れば取り返しはつく筈だ! たぶん!

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