第1188話 41枚目:攻略早回し

 効率と情報って大事だね、と、しみじみ思っている現在は土曜日午後おやつ時だ。何でかというと、それはもちろん、あの触れるだけで強制ミイラ化した深さを越えたからだ。

 砂を掘り出して運搬するのは相変わらず「第四候補」の使い魔が担当だが、どうやらあの砂が凶悪になるのは神の力で抑える事が出来たらしい。つまり“導岩にして風守”の神が目覚めて出てきた事で、安全な砂の範囲が広がったって事だな。

 また“導岩にして風守”の神が保管していた「重要な物」の中にはこの街の詳細な地図があり、祀られている神も様々な小神殿がある場所を優先的に掘ったかいもあっただろう。どうやらこの街、神々が集まって話し合う場所の1つだったみたいだし。


「空間が閉じている現在でも、掃除をして捧げものをすればちゃんと影響があるんですねぇ……」


 どっちかというとそっちにびっくりした部分もあるが、ともかく。

 砂の様子を確認しながらとはいえ、最初の頃に比べればペースはだいぶ上がっている。そして小規模とはいえ神殿や建物が掘り出されて機能し始めたから、あの氷に変えて保管するしかなかった水も使い道が出てきたらしい。

 というのも、この街。中央に湖があるからか、かなり高度な配管的水路が張り巡らされていたのだ。水が巡るのであれば溜める場所もあるって事で、貯水タンク的な物が見つかったらしい。


「で。しっかり神の祝福を受けた状態の水を砂にかけると、触れた端から砂を消してくれる、と」


 もちろん水も消えているから、神の力だけが消費されてただの水に戻り、結局砂が増えるって事もない。これで更に加速がついた。水が消費されるのだから、砂を水に変える戻す作業は続けなきゃいけないんだけど。

 それに、祝福された水っていうのはやっぱり量が限られる。だから現在、砂を取り除くのが難しい配管的水路に流し込まれる方が優先されているようだ。それ以外でも砂の取りこぼしが無いように仕上げ的に打ち水されている。

 それに配管的水路だけでも機能するようになれば、もしかしたら“湧水にして脈穴”の神に多少なりと力が戻るかも知れないし。もちろん小神殿への捧げものもされているんだけど。


「神の祝福を受けた状態、つまり神の力が込められた水なら砂を消せる。という事は、正しい形で“湧水にして脈穴”の神が目覚めれば、砂を一掃するのもそう難しい事ではない筈ですし」


 その、砂の出所がまだ分からない以上、あんまり楽観視する訳にもいかないんだけどな。それでもちゃんと捧げものがされれば、神が相手であってその影響深度が深くても、「モンスターの『王』」の影響を排除できるっていうのは今までの空間異常で証明されている。

 ……ただ気になるというか、若干疑問が解消されてないのは、この空間異常において関連している神として名前が出てきたのは、“湧水にして脈穴”の神だけだ。だから“導岩にして風守”の神が出てきた時驚いたんだし。

 司令部がその存在を知っていれば、ざっくりと砂をどけた後ですぐに祭壇を作って捧げものをしていただろう。神の力が強いには越したことがないのだし、それがまともな神であればなおの事、だ。


「という事は、(運営が意図して)名前と存在を隠していたって事にもなりかねませんし……」


 問題は、その必要があるのはどういうパターンかって事だな。

 この空間異常における解決方法は「湖及び“湧水にして脈穴”の神の完全復活」だ。だから厄介な事になっているのは分かっていたのだが、もし「他にも神がいる」のならその厄介さは跳ね上がる。

 幸い、と言うべきか“導岩にして風守”の神は「モンスターの『王』」の影響を受けていなかったようだし、受けていたとしてもせっせと捧げものを捧げられている以上、そのうち解消されるだろう。


「その辺もあって、資料というか追加情報は早期に見つかるようになっていたんですかね」


 ……いや、それもどうなんだろう。見つけたというか、出てきてくれたのは私が【調律領域】を雑な供給状態で展開したからだしな。しかもあの反応的に種族特性込みだし、たぶん普通では条件を満たせない。

 特級戦力のお仕事だったか、隠し要素をうっかり初手で開けてしまったか、区別がつかないのも時々問題だな。この後の難易度が読めないって意味で。

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