第1189話 41枚目:盆地の底
竜都ほどではないが十分広い街を砂から掘り出しつつ、神殿で捧げものをして水を祝福してもらう。応援として来てくれる人達がしっかり補給物資を持ってきてくれるとはいえ、それでもガンガン捧げものは減っていく訳だ。
モンスターが出ればそれを倒して捧げものにする事も出来るんだが、ちょっと拍子抜けするぐらいに何も出てこない。いや、神様に守られた街の中だって事を考えると、出てきたらダメなんだろうけど。
水分が根こそぎ失われた影響か、それとも避難する時に持って行ったのか、植木鉢の類は見かけてもそこに植物の気配はない。掲示板への書き込みによれば“導岩にして風守”の神が保管していた物の一部に植物の種があったから、同じものを通常空間で探しているそうだ。
「で、だいぶ街は掘り出せた筈ですが」
捧げものによって力を取り戻したおかげか、“導岩にして風守”の神のご神体+その隙間を埋めるレンガの建物は、すっかり窪地になっているこの街を取り囲む形を取り戻している。
見つかった小神殿で祈り、捧げものをしたおかげか、窪地の傾斜がちょっと緩やかになってきた現在でも砂の性質は変わっていない。だから検証班というか司令部は、まず湖を確認しようって事で、一部を深く掘り進めている。
恐らく大通りに近い場所だったのだろうその先はかなり掘り進められ、地面の傾斜もほとんどない。だから、湖がこの先にある事は間違いないのだが。
「……こう来ますか」
なんか。見当たらないんだよな。水が、じゃなくて、湖、もしくはその跡地が。平らな地面が続いてるだけで。
湖まで距離があるのでは、という可能性は、残念ながらない。何故なら配管的水路の配置的に、湖が無ければおかしい場所を狙って掘り進めているからだ。そしてついさっき、その配管的水路の先が地面に突き刺さっている事が確認された。
つまり湖が土に変わっているか、あるいは、空間異常の中で更に空間異常が起こっているか、という事になるんだが……その為にはたぶん、砂を完全に排除しきる必要があるんだろう。
「そろそろ制限時間も半分を切るというところでこれとは。まぁ、一筋縄ではいかないだろう、とは思っていましたけど」
ログイン時間の調整で、午後に入ってから私はちょいちょいログインとログアウトを繰り返している。だからログイン時間的にはそこそこ余裕があるが、そもそもの制限時間的にはそろそろ厳しいと思っておくべきだろう。
一応タイムスケジュール的には、日付変更線直後に再ログインする事も可能だ。というか、やはり日付変更線前後が一番人が集まるって事で、司令部がそう時間を調節している。何せ明日は日曜日だからね。
それに加え、日曜日の夜には時間加速があるので、ログイン時間を早めに消化できるのは何も問題ない。……まぁそれはそれとして、夜遅くまで起きていると朝が辛くなるんだけど。
「できれば日付が変わるまでに決着をつけておきたいんですよね。高難易度はまだ他に見つかっていないとはいえ、制限時間が長い空間異常はまだまだあるんですし」
夜になればご飯やお風呂でそこそこ長い時間ログインできない。もちろんその間にも司令部や動ける
もちろん、リアル都合でログアウトしたい時間は伝えているし、スケジュールには組み込まれている筈だ。だから何か作業というか、攻略進捗が遅れているなら、早回しにしてほしいという指示が来るだろうし。
とりあえず、あれだな。少なくとも一番人手と魔力が必要な、砂を水に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます