第1184話 41枚目:進捗順当

 そこから午前中のログインが終わるまで砂を水に変え続けたところ、どうやら端に近いところでは、あの触れると水分を奪いつくされてミイラになる砂の層が無い、という事が分かった。

 これはつまり端から除雪ならぬ除砂しろって事だろうなぁ……と大半の召喚者プレイヤーは判断したし、司令部も同じ判断を下したらしく、そういう内容の指示が来た。

 なので私はひたすら他の魔法系召喚者プレイヤーと一緒に、集められてくる砂を水に変える(戻す)のに集中していた。おかげで、かなり大きく作られた拠点(砦)の中がすっかり冷えていたよ。リアルくらいに。


「砂漠のど真ん中で冬の寒さを体感する事になるとは。……いや、そう不思議な事でもないか」


 夜はそれぐらい冷えると聞いているし……昼にあの寒さだったからやっぱりおかしいのか。いやでも、ログアウトする時には夜になってたしな。時間の流れは通常空間と連動するみたいだから。

 若干首を傾げながらもお昼ご飯を食べ終わり、指定された時間まで外部掲示板をうろうろしてから再ログイン。さって、どのくらい除雪もとい除砂は進んだのかなっと。


「あぁ、見た目では分かりませんでしたが、本来は周囲と同じ岩のように固い地面だったんですね」


 ログアウト時点で屋上に一番近い角部屋を使わせてもらったので、外の眺めはかなり良い。……けど、ログアウトしてる間にまた高くなってるな。拠点(砦)。どこまで高くするつもりなんだろうか。

 建築の方はともかく、改めて高いところから見まわしてみると、かなり砂の排除は進んでいるようだ。この空間の外縁部が3分の1ほどは地面が見えている。そしてどうやら遠くまで広がっているように見えた透明な壁の向こうの景色は外縁部を参照していたらしく、荒野というか、緑の少ない大地が広がっているように見えた。

 ただ、その透明な壁の手前に氷の塊が山積みになってるんだよな。まぁ確かに、砂に水分が触れさえしなければいいんだから、砂の無くなった場所に置いておくのは間違ってないんだけど。


「とはいえ、拠点のスペースも限られてますからね。一方で砂の量はまだまだ果てしなく存在していますし、置ける場所に置いておかないと無理がありますか」


 内部時間が夜の間だったらそんなにとけないだろうし。……そういえば合間の生産作業でお札を作ったな。設置型の、一定範囲の気温を下げる奴。南側の大陸は全体的に乾燥していて暑いから、その対策に作ったつもりだったんだけど、もしかしてそれが使われてたりするんだろうか。

 そこまでをざっくり確認してから、改めてクランメンバー専用掲示板で状況を確認。……うん、大体は私がログアウトする前と変わらないな。変更点は、一部でいいからあの触れるだけで水分がごっそり持って行かれる砂の層を出す指示が出てる事だろうか。

 なんでだ? と思ったら、「第四候補」が応援に来てくれるらしい。なるほど、確かにゴーレムやドールなら、そもそも水分が無いから掘り進めることが出来るのか。


「まぁ問題はその下に何があるかって事ですが……「第四候補」の事ですから、もしかしたら砂そのものをゴーレム化してどこかに置いておく、とかも出来るんでしょうか」


 そもそも何で砂を水に変えて(戻して)、それを更に凍らせるという手間をかけてるかって言うと、砂をどける為だからな。もっと言えば砂に埋まってる筈の街並みや湖を確認する為だ。

 水に変えなくて(戻さなくて)も砂をどけられるなら、その方が楽に決まっている。氷に変えて積み上げられるようになったとはいえ、それでも場所は限られてるんだし。


「……原因というか、この空間異常が起こった理由、もとい問題点を考えるなら、出来るだけ砂は水に戻しておいた方がいいんでしょうが……」


 まぁその場合は、私が責任をもって魔法を叩き込む事で水に戻すとしよう。それこそ、砂に触れても水が砂にならなくなってからとか、砂がモンスター化してからでも、私の威力なら間に合うだろうし。

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