第1166話 41枚目:イベント準備
と、いう訳で。生産作業漬けという名の準備を終えて、月が替わった。もちろんカバーさん達元『本の虫』組こと検証班も最初から飛ばしていくつもりらしく、エルル以下うちの独立部隊所属の竜族の人達と一緒にボックス様の神殿で試練に挑んでいたりもしたようだ。
何を集めてたの? と、エルルに聞いてみると、どうやら特殊なレンズや特殊加工に使う液体系の素材を集めていたらしい。なんのこっちゃ、と思ったが……しばらく考えて思い出した。そうだ。魔族の人達と共同開発した「過去を撮影・録画できる魔道具」の材料だ。
対『バッドエンド』の防犯カメラとしても、恐らく今回も過去を調べる類なイベントへの対策としても、あればあるほど良い。……とはいえ、材料も加工も一筋縄ではいかなかった筈だ。それを、ボックス様の試練を利用して荒稼ぎしていた、という事になる。
「うーん、検証班が実に頼もしい」
最初から全力通り越して本気だ……。とちょっと戦慄したが、まぁ、味方なので。流石にここまでのパターン的に、今度もあのゲテモノピエロは「モンスターの『王』」に接触を図るだろうし、イベントには余計なちょっかいをかけてくるだろうし、対策はあればあるほどいいから。
「いや、それがなお嬢」
「何でしょうエルル」
「あの大量の行方不明者が出た件があるだろ。あの時に試練モドキが活性化したので、実はそれなりに被害が出てたらしい。人命じゃなくて物損の方で。そういう後始末に追われたのもあって、いろんな形で被害に遭った召喚者が元凶に怒りを燃やしてるそうだ」
「……本当に、ここぞとばかりやらかした分はきっちりとヘイトを稼いでいきますね、あの集団。敵役としては花丸満点ですが。本人達がそれすら楽しんでる節があるのでちょっと思うところはありますけど」
まぁあれもゲテモノピエロこと『バッドエンド』の仕業っていうのはほぼ確定してるしな。……なお、あの時手に入った宝の地図っぽい地図だが、そこに書かれていた地点は、やはりこの2つの大陸で合っていたようだ。
ただ何とか探り当てたその場所は、今見つかっている範囲だと例外なくあの陽炎の柱のようなものがあるだけらしい。いや、うん。しらみつぶしにするよりはいいだろうし、確かに見つかった方がいい物ではあるけどね……?
ちなみに、例外なく、という部分で分かる通り、私が手に入れた地図に書かれていた場所も陽炎の柱のような空間異常があるだけだった。いや、うん。大陸全体の地図が楽に埋まるんなら、それはいい事なんだけど。
「素直にお宝やボーナスステージが出てくる、とは、到底思えないのが問題なんですけど」
あとは、地味に「今見つかってる範囲だと」っていうのが若干引っかかる。そう、まだ見つかってない場所、該当する地形が見つかっていない地図もあるんだよ。全体の数割ほどらしいんだけど、たぶん、今は踏み込めない場所を示してるんじゃないかって説が強い。
だから結局問題は、あの陽炎の柱のような空間異常の中に何があるか、になる訳だ。バックストーリーから読み取れる範囲では、とりあえず大体の場合は神殿、もしくは神殿と神様がいるようだが、「モンスターの『王』」の力がどれくらい影響してるかは分からないからな。
「……というか、影響は出てますよね。割とがっつり」
なおこれは「第一候補」からの情報なのだが、神の力が通りやすい2つの大陸を主な活動拠点兼メイン神殿の設置位置にしていた神というのは、神話に属さない、概念的なものを司る神が多いらしい。
具体的に言うと、種族の始祖(ティフォン様達“細き目の神々”やオンラ様達“角掲げる神々”等)や、文明の起こりや技術体系の根幹(“叡智の神々”や“権威の神々”等)が神話に属する神となる。
だからそれ以外、アライメントを司る神々(“中立にして中庸”等)や、全ての神話に共通するが公平でなくてはならない審判を司る神(“天秤にして断罪”)、創世が終わってから
「空から降ってきたあのよく分からない奴が、神の眷属だっていう話か?」
「それもあります」
「……それ、も?」
「も、ですね」
フリアドがサービスを開始して最初の5月だから、あの、負けイベントを正面からひっくり返した初めての
内部時間ではおよそ10年前。随分と状況も変わったものだと思いつつ、それでもまぁ、忘れる訳がない。
……正気を取り戻す為とかこつけて、一発殴るぐらいは許してほしいものだ。
なぁ? ――乱数の女神こと、“偶然にして運命”の神。
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