第1163話 40枚目:情報と推測

 イベントページの地図を見る限り、砂漠の東にあった集落跡から見つかった地図は大体合っていたようだ。私も見せてもらってオートマップに反映させたが、あの地図に書かれていた集落があった場所は「何かある度」が高く、実際に集落跡が見つかっている。

 という事は、危険な場所、や、接触注意な集落、というのもその通りだという事になる訳だが……どうやらそちらは、ほとんどあの陽炎の柱、つまり空間異常の痕跡に変わっていたらしい。


「既に厄介な気配しかしないんですよね」

「全くっすねー」


 つまり何か問題がある=どこかのタイミングでイベントになるって事だからな。全くフリアドの運営は。

 それはともかく、主に地図に載っていなかった小さな集落跡を「何かある度」を頼りに探す形で北へと向かって行っているのが現状だ。問題なく進めてはいるが、やっぱりモンスターの数と襲撃頻度が上がってるな。

 モンスターの強さについてはちょっと分からないが、戦闘時間が微妙とはいえ伸びてるって事は強くなっているんだろう。つまり、順当に進んでいく難易度が上がっているって事である。


「まぁ妥当なんですけど。沿岸部の砦も、南より北に向かうときの方が難しかったですし」

「今ちょっと攻略は停滞気味みたいっすね。南側は順調らしいっすけど」

「メインである召喚者プレイヤーは内陸の調査に向かっているでしょうし、あの近くは領域スキル相当の影響も強いですからね」


 後は、要救助対象だな。南側にはほとんどいないみたいだが、北側には相変わらずのペースで見つかるらしい。そう、御使族を含めて。てことは、やっぱり北側の方に重点を置いて守ってるって事になる。

 東側の探索も続いているらしいが、あちらはその、陽炎の柱のような空間異常だらけで碌な探索が出来ないらしい。それにモンスターの数がすごい事になるようだ。それでも探索を続ける召喚者プレイヤーのガッツがすごいな。

 けどまぁここから分かるのは、東側は今の時点で探索する場所じゃないって事だ。つまり北に行けって事なんだろう。


「たぶん次の8月までかけて御使族の所に行くようになる気がしますね。東側はそこからなんでしょう」

「北側の大陸も似たようなもんらしいっすもんねー」


 そんな会話をしてから、大人数で移動開始だ。日曜日の間に進めるだけは進んでおきたいし、モンスターが強くなるのは既に分かってるからな。建材もしっかり準備してあるし。




 という事で日曜日は「何かある度」を頼りに北へと移動する事で溶けていった。途中まで他の召喚者プレイヤーの人達が探索して拠点を整えていたと言っても、やっぱり時間がかかったな。

 ただ時間をかけたかいはあったようで、地図の上では砂漠の北の端ぐらいまで北上する事が出来た。ぐるっと砂漠の回りを回れるようになったって事だな。モンスターの妨害が無くても十分広いんだけど。


「問題は、北に移動するにつれてあの空間異常の痕跡が増えていったって事なんですけど」


 もちろんモンスターの強さと数も上がっているが、それはエルルが何とかしてくれるので。だから、今のところは壊せない障害物扱いである陽炎の柱のような空間異常の方が問題だ。

 集落がある筈の場所にあれがあって集落が無くなっているので、拠点を作るのが大変なんだよな。もちろん、集落の跡がある方が楽、というのが正しいんだろうけど。

 それに加えて、なお厄介になりそうなポイントがあってだな。


「……「第一候補」と御使族の方々曰く、この大陸は神の力が通りやすく、それ故に規模の大きな神殿が多く建てられ、他と比べると随分神と人との距離が近い、筈なのですが」


 つまり信仰が強いって事だ。聖地の影響である筈のそれは、「第一候補」が御使族の人達から聞いた限りは聖地に近い程顕著らしい。つまり神殿が大きかったりたくさん建てられたりしてる筈って事だな。

 なんだが。今のところ探索できた集落跡からは、そこまで大きな神殿というものは見つかっていない。むしろ、この大陸の平均からすれば小規模に入る神殿しか見つかっていない。

 でも大きな神殿は他より多い筈、となると。当然ながらそれは、陽炎の柱のような空間異常の痕跡がある、その場所にあった集落にある筈、という事になってだな。


「あの空間異常が「モンスターの『王』」によるものではなく、こっちの神々が何とかとった防御態勢だっていう可能性が出てきたじゃないですか」


 つまり、救出対象である。

 ……イベントだな、これは。

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