第1162話 40枚目:発見と懸念

 土曜日の夜のログイン時間を使い切りそうなところで、何とか砂漠の東の果てを確認する事が出来た。端に近づくにつれて「何かある度」が高い場所が減っていくのが分かった時はどうしようと思ったよね。

 まぁ環境を調節してまで休める場所を作る必要があるのは砂漠の内側だし、それでいくと外側に行くにつれてその必要が減っていくのは確かなんだけど。確かに行けるかいけないかで言ったらギリギリ行けたけど。

 ともかく、砂漠を抜けてすぐのところにかなり大きな集落跡があったから、残った時間で可能な限り外壁を修理して、そこで休むことになった。……砂漠へ向かう直前の、最後の準備をする町だったのかな?


「砂漠自体が、ダンジョンのない世界におけるダンジョンみたいなものだっただろうしなぁ……」


 ハイリスクハイリターン的な意味で。特殊な環境に特殊な生き物が生息するのは当たり前のことだし、特殊な生き物からは特殊な素材が採れるからね。

 さてまぁそんな感じで私はログアウトして、翌日。イベントが折り返しになる日曜日の午前中ログインでクランメンバー専用掲示板にまとめられた全体進捗を確認すると、どうやら南側の大陸であるこちらは、私が今いる集落跡で、砂漠を南に抜けた召喚者プレイヤー集団との合流が出来たらしい。

 で、召喚者プレイヤーがたくさんいるなら調査も捗るって事で、この集落跡が結構重要な場所だったらしいのもあり、かなりの情報が出てきたんだそうだ。


「周辺の主だった集落と、そこへの道のりが書かれた地図は大きいですね」


 なので、その地図をもとに各地へ散開する召喚者プレイヤーと、この集落跡を調査する召喚者プレイヤーに分かれているようだ。やっぱり人数が多いっていいな。

 なおその地図には近づくと危険な場所や接触注意な集落という情報も書き込まれていたらしく、そっちには召喚者プレイヤーの中でもかなりの精鋭と言っていいメンバーに加え、古代竜族の人が同行してくれているそうだ。

 うちの子も調査に参加してくれたのか、ログアウト前よりイベントポイントが増えている。……そういえば、今回はポイントを引き換える為のイベントページが出て無いな。単純にポイントを集めるだけか、イベントが終わってから引き換えられるようになるのか。


「ともあれ……私はここから、北を目指して移動ですね。まだここの集落跡も調べ切れていないようですが、防衛準備の方も整ったようですし」


 つまり私(の種族特性)なしでも何とかなるようになったって事だからな。時間も限られてるし、さくさく「次」へ向かわないともしかしたら何か足りなくなる可能性もある。

 年末年始にどんなイベントが来るかは分からないが、御使族の島を挟むもしくは囲む形で竜都があるんだったら、私個人としても早く辿り着いておきたいし。

 とりあえず今回のログインも司令部からの要請通りなので、召喚者プレイヤー側の準備はもう出来ているだろう。予定を聞いているエルル達も動けるようになっている筈だ。


「たぶんこの大陸が魔族の人達が本来住んでいる土地だった、というのが、若干気にはなりますが……まず、目の前のやれる事からやっていきましょうか」


 主に今までの事と、魔族の人達と実際に暮らしてみてのあれこれから。……本来住んでいる土地、という事は、あのやらかし責任者達が逃げ出した先も、ここである可能性が高いんだし。

 もちろんこっちも空間異常がどうこうとかになっていなければ生きてはいないんだろうけどね。残された資料を見る限りの性格を見るに、何かまたやらかしてても一切不自然じゃないというか。

 むしろ今までのフリアドの事を考えると、そのせいでまた別の厄介案件が発生してないかな……って。うん。そんな気がちょっとしてる。


「……気にしすぎ、だといいんですけど」


 それを確認する意味でも、今やれる事を目一杯やって、出来るだけ早回しにして時間を作るしかないな。頑張るか。

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