第1160話 40枚目:ややこしい答え
そこからしばらく周辺探索と穴掘りを続けた結果、精霊さんに聞いた調節塔の基礎部分が見える深さまで掘っても何も出てこなかった。
正しくは基礎部分に相当する場所には岩盤があったのだが、司令部から派遣されてきた元『本の虫』組の人が調べた結果、これは元々この場所にあったもので、地下水脈を守る為の岩盤だという事が発覚。砕くのは厳禁、となった。
ある意味砂漠の底が見えてしまった訳で、それでも何も見つからないというのは現場ではどうしようもない。……という事で、「第一候補」に動員がかかったようだ。まぁかかるよな。
『で、ここが現場であるか。……しかし派手にやったであるな』
「今までは砂を掘れば何か出てきましたからね。今回は違ったみたいですけど」
主に北側の大陸における、集落跡地の力場的除染で忙しいところを呼び出してしまったので、ちょっと声がお疲れだな。見た目は本人デフォルトのぬいぐるみだから変化が無いけど。
私は【調律領域】を展開したままだが、こちらなら特に儀式的なものに対する干渉はない。なので「第一候補」は仮拠点の転移ポイントから出てきてすぐのところで、何か祈り系の調査スキルを使ったようだ。
たぶん簡易儀式とも言えるそれはどちらかというと種族特性からの特殊技能なので、現状
『…………。なるほど、大層ややこしい事になっているようである。ひとまず、そうであるな。「第三候補」』
「何でしょう」
『砂を掘り進めたのは間違いである可能性が高い為、一旦埋め戻してもらえまいか』
「何で大元に辿り着いたらパターンを外すんですかね」
まぁ砂はちょっと離れたところにどけただけなので、風で押して流し込めば簡単に埋まるんだけど。もちろん司令部の人も一緒に話を聞いているので、この場にいる
で。その後「第一候補」の再探索で仮拠点の位置を移動した。「何かある度」が高い範囲からちょっと離れたところだったのだが、それを更に南へと移動させる。
何の意味が? と思いながらの作業だったのだが、それが終わって「第一候補」が言う事には。
『うむ。恐らくここは、正しい入り口を通らなければ干渉できない類の亜空間であるな。位相がずれている、と言うべきか。もっともその入り口も砂に埋まっている上、周囲の状況によって隠蔽度が上がるようである』
「……転移ポイントを設置するのに都合の良い場所は、その正しい入り口の真上だった、と?」
『そういう事であるな』
「分かりませんよそんなの」
『その意見には心底同意である』
例によって、分かるか! という理由で詰みかけていたらしい。いや、分からんって。一応私は一括管理する大事な場所だって事で、そこに入る条件とかある? って精霊さんに聞いてたからな? 特にないって聞いたから素直に穴掘りしてたのに。相変わらず運営は情報の出し方が下手だな!
とりあえず仮拠点をどけた場所を掘っていく。「第一候補」の探知もしくは調査によれば、ここにその「正しい入り口」がある筈だが……。
「そしてあっさりと見つかる大扉。しかし良く壊れませんでしたね、こんな大量の砂に埋まって」
『空間を操作する以上、物理的なものに対する耐性は高いのであろう。そもそも入り口である以上、壊れると大変な事になってしまうであるからな。元から飛びぬけて丈夫ではある筈である』
一枚板を立てただけのような形で、大きな扉が砂の中から出てきた。ただの扉ではないという証明のように、その扉の下まで掘ってもぴくりとも動かない。なので現在は浮いている。たぶん、空間軸が固定されているのだろう。
「第一候補」曰く、扉自体は特殊だが中に入るのは普通にできる筈、との事だ。それでも一応、色んな意味でまず大丈夫だろう私とエルルが様子を見る事になったけど。
なので後方で撮影班の人が録画を開始したのを確認し、扉を開けてみると。
「…………「第一候補」?」
『まぁ、多少は想定していたであるが』
……その、扉を開いた先が、陽炎のような状態になっていた。これってつまり空間異常が起こってるって事だよな? と「第一候補」に聞いてみると、実質的な肯定が返ってくる。まーじで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます