第1159話 40枚目:手探り状態

 私の残り連続ログイン時間が30分を切ったところで、穴を掘っている場所からちょっと離れたところに先に仮拠点となる場所を作ってもらい、そこでログアウトする事になった。……そうだね。【調律領域】は展開できなくても、種族特性のバフを受けるだけでも違うから。

 なお他の、同じくログイン時間が危ない召喚者プレイヤー達はどうしたかというと、仮拠点を作る際に転移ポイントを設置して、そこから撤退していた。なるほど。ここなら転移してきたら私の種族特性由来のバフがそのまま積み込まれるか。

 素直にお昼ご飯を食べて、午後のログイン予定時間まで外部掲示板を眺めつつ待機だ。午後はちょっとややこしいんだよな。たぶんちょっとでも多くの召喚者プレイヤーが最前線で動けるようにだろうけど、ログイン時間が分割されてるから。


「ま、あくまで予定は予定。砂漠の真ん中で見つかったもの次第では、そこから午後のログイン時間を使い切るまで連続ログイン、とかもありうるわけだけど」


 精霊絡みだからなー。しかも古代技術。だからたぶん、魔族の人達が作ったものだと思うんだよなー。不死族の人達も技術的には出来るだろうけど、大掛かりな施設を作るイメージは無いからなー。

 しかも聖地があるって事で、比較すると他の場所より神の力が通りやすい土地だ。魔族の人達と御使族の人達の合作とかでも何の違和感もないぞ。……つまり、中から出てくる何かがこちらの想像を超える可能性も高いって事なんだけど。


「流石に神様自体がそこに居たりはしないだろうけど、精霊さん達による水関係の大元だし、何かありそうなんだよなぁ……」


 そしてその場合、矢面に立つのは私な訳だ。まぁ公式の皇女だしな。仕方ない。半分その為の団体行動なんだし。




 という訳で、おやつ時までは予定通りに行った。

 誤算だったのは、いくら砂を掘っても何も出てこないって事だ。今まで「古代の環境調節塔」が見つかった深さなんてとっくに通り過ぎてる。砂地にものすごい大穴が穿たれてるよ。

 場所が悪いのか? と、「何かある度」が高くなってる場所のさらに中央付近まで私が移動する事で作業場所を移したりもしてみたが、こちらも空振りだ。これ、空から見たら結構大きなクレーターみたいになってるんじゃないだろうか。


「おかしいですね。イベントページ大神からの啓示を見る限り、ここに何かある筈なんですけど」

「……そうだな。周りの地形と比較はできないが、流石に大神の加護が誤魔化されてるって事は無いだろうし」


 エルルと一緒にオートマップとイベントページの地図を見比べてみるが、場所はあってるんだよな。たぶん。ちょっと自信なくなるくらい何も出てこないけど。

 今現在も多くの召喚者プレイヤーが周囲を含めて歩き回り、自前の神殿に戻って祈りを捧げてイベントページを更新しているようだが、「何かある度」の分布に変化はない。どういう事だ?

 ……あるとすれば何か特殊条件付きの立地って事だが、例の陽炎の柱みたいな空間異常の痕跡も見当たらないんだよな。どうしたもんか。


「まぁルイシャンも特に反応せず、精霊さんも引っ込んだまま姿を見せないって時点で、何か条件が必要なんでしょうけど」

「魔族絡みならショーナが何か見つけててもおかしくない筈なんだが」

「それっぽい様子も報告もありませんねぇ」


 うーん、分からん。繰り返すが、場所はここであっている筈だ。「何かある度」はMAXになってるからな。その範囲が今までの調節塔と比べると、ぐっと大きいだけで。

 もちろん既に司令部には報告がいっている。その上で指示が来ないという事は、現在はまだ検討中なんだろうか。流石に司令部でも情報が足りないとどうしようもないだろうし。


「……何名か、物質系種族の住民の方も来られているようですから、そちらでも何の反応もないようですね」


 となると、あと残る可能性は……御使族ないし特定の神への信仰関係か?

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