第1158話 40枚目:大規模探索

 そして土曜日に突入した。召喚者プレイヤーの稼働率が上がるタイミングなので、ここで一気に探索範囲を広げたいところだ。

 というのは最前線にいる召喚者プレイヤーの総意でもあるので、金曜日の夜には司令部による探索方針が発表されていた。もちろん特級戦力であり、領域スキル持ちの私の動きもそこに組み込まれている。

 もちろんそれは承知の上だしそれに沿って動くつもりではあるが、平日とはいえ人数の増えた召喚者プレイヤーがしっかりと探索すれば相応の情報は集められる。その結果が、ちょっとな。


「……世界地図から読み取れる範囲、とはいえ、竜都に残されていた地図と、実際の地形がかみ合わない、ですか……」


 加えて言えば、地図とのズレの中心となる場所には陽炎の柱っぽいもの……竜都の大陸で攻め落とすのに苦労した防衛拠点、その中心にあったものとほぼ同じものが見つかっているらしい。つまり、空間異常だな。

 流石に規模までは同じではないというか、もうちょっと小規模だろうが、それでも空間がおかしくなっているのは確かだ。今までの感じだと個人プレーの気配が強い筈だが、それでもある程度他の「モンスターの『王』」の情報は手に入っているのだろうか。

 ちなみに北側の大陸でもほぼ同じものが発見されているので、“歪”める独自の力って訳ではなさそうだ。つまり、高確率で空間の歪みの方だな。


「というか、東に行くにつれて出現頻度が上がってるって時点であれですし……」


 もちろん現在の状態で対処する方法はない。大人しく北、というか、御使族のところへ向かえって事だろう。

 とりあえずフリアドの運営的に、大陸2つ分を同時攻略しているからか2年かける予定なのはまぁ間違いなさそうだからいいんだけどさ。問題は、割と目の前に迫ってきた感のある年末でな?

 ミニイベントが挟まったとはいえ、短期間のイベントが続いている。って事は、年末年始のイベントの規模が大きくなるという前振りだ。そして今のところ、そのイベントの舞台になりそうな場所が見当たらないんだよな。


「たぶん、今現在の探索で見つけろ、って事なんでしょうけども」


 何を探せばいいんだろうな? いや、本当に。集落等、という雑な目標しか与えられてないからどうしたもんか。

 とりあえず、司令部から伝えられた今日の目標は、砂漠の中心部を探索する事だ。何せあの調節塔の精霊さん達に聞いた限り、そこに全部の調節塔を遠隔管理する為の大きな施設と、それに付随する大きな街がある筈だからね。

 砂漠全体を「何かある度」を頼りに歩き回るより、そこを見つけて機能させた方が砂漠を歩きやすくするためには有効な筈、って話だな。確かに砂漠全体の環境が、飛び石的にでも改善されれば、竜族の人達で防衛が出来るだろうし。




 という訳で、道中は普通に【調律領域】を最大展開した状態で砂漠を移動。たくさんの召喚者プレイヤーとその仲間の住民が一緒だから、ちょっとした大移動だな。

 ここまで大勢が移動していれば「何かある度」の精度も一度の移動とは思えないぐらいに上がっていく。それに従ってちょいちょい寄り道して「古代の環境調節塔」を機能させながら移動する事、内部時間で10時間ぐらいか。

 調節塔が見つかるたびに掘り出しと簡易拠点及び転移ポイントの設置をしていたので、思ったより時間を食ったな。まぁ、通常なんの補助もない状態で移動するよりは早いだろうけど。


「さて、途中で出会った精霊さん達にも大体とはいえ方向と距離の確認を取りましたし、たぶんここにある反応がそうだと思うのですが……」


 で、イベントページの地図を見ると、結構広い範囲で「何かある度」が高くなっている場所に辿り着いた。道中の精霊さんにも確認を取ったし、全体地図でも砂漠のほぼ真ん中だから、たぶんここだと思うんだよ。

 既に多くの召喚者プレイヤーが主に魔法でせっせと砂をどけて、砂に埋まっているだろう何かを掘り出す作業に入っている。もちろんニーアさんも参戦済みだ。

 私の領域スキルの範疇で、という制限はついているが、それはどうやら旗を使うとそれだけで「安全地帯」判定されるらしく、モンスターの群れがやってきてしまうから。それはちょっと。


「範囲が範囲だからか、ちょっと掘ったぐらいだと何も出てきませんね。魔力の制限なしで1時間掘って砂しか出てこないとは」


 私のログイン制限がもう少しに迫ってきてるんだが、どうするかな、これ。久々にエルルに背負ってもらう事になるか?

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