第1152話 40枚目:探索準備

 という訳で、イベント開始までは砂漠の入り口をうろうろしてモンスターと戦い、素材を集める事に終始した。砂も採取してみたけど、除染の手間の割に普通の砂だったな。奥地に行けば変わるのだろうか。

 前のイベントの報酬は一言で言うと建材だったので省略したが、恐らく町や村の後を見つけてそこを拠点にするのに尋常じゃない量を使うんだろうし。もしこっちの大陸でまだ残っている神殿を中心とした街があるなら、そこへの応援にも使うんだろう。あればだが。


「まぁ救援が最優先なのは分かっていますし、だからこそ空からの大規模な捜索が封じられているんでしょうけど……」


 出来なくはないんだが、ちょっと尋常じゃない被害が出るからな。もちろん私とエルルだけで砂嵐の突破チャレンジもしてみたんだが、やっぱりなんか意図的な妨害だったらしく、いつまで経っても振り払えなかったのだ。

 ま、空を飛んでたらどこからともなく砂嵐が巻き起こるって時点で、完全にあちら側(もしくは運営)からの妨害だとは思ってたけどさ。地上を歩かせるつもりなのはともかくとして、だったらもうちょっと環境をどうにかした方がいいと思うのは気のせいだろうか。

 まぁでも、召喚者プレイヤーがほぼ総出でモンスターの素材を集めて研究したかいはあったらしく、装備的な意味で進捗があったようだ。


「砂漠のモンスターの素材を使うと、確定で【乾燥地行動適正】が付与された装備になる、と。確かに必要でしょうけども」


 もちろん使う素材によって付与されるレベルはまちまちだが、それでも全身の装備をそれで揃えればそこそこのレベルになる。そしてどうやらこの【乾燥地行動適正】がある状態だと、水属性の魔法を行使する魔力がマシになるんだそうだ。

 なので現在、水担当の召喚者プレイヤー1人に装備を集中させ、ある意味生命線と呼べるその召喚者プレイヤーを中心にした探索隊を結成する方向で各クランは探索計画を練っているらしい。

 もちろん満腹度やスタミナの減少を抑えて行動時間を延ばすという意味でも、探索隊に属する召喚者プレイヤーは全員、ある程度の数の装備は揃える前提なのだが。


「モンスターはいくらでもいますから、同じことを考えた召喚者プレイヤーで、海から見える範囲が賑わう訳ですね」


 なおそんな独り言を言っている私は何をしているかというと、「皇竜の御旗」を掲げた状態で、南へと長い城みたいな砦の切り崩しを補助している。エルルは南の方の最前線だ。司令部的には砂漠の端を確認しておきたいらしい。

 まぁ確かに、もうすでにある程度モンスターの素材は集まってるし、なんなら拡張した領域スキルの範疇でうちの子がモンスターを狩ってるけどさ。例によって素材は生産組にお任せしているから、対策装備も現在進行形で作成中だろう。

 うん。分かるよ? 砂漠より荒野の方がまだ今までの足である、馬相当の生き物が行動しやすいだろうなって。そして砂漠が大陸全体に広がってる訳じゃないんだから、そりゃ避けられるもんなら避けたいだろうっていうのも。


「エルルが壊した部分はそのままもらえますから、捧げものいっぱいでそれはいいんですけど」


 各種耐性スキルも伸びてるし、いいんだけどね?

 探索イベントの準備をしてた筈なんだけどな。いや、これも準備っちゃ準備なんだけど。うん。うん? やってる事が生産作業とあんまり変わらないような気がするぞ?

 いや何も間違ってない。何も間違ってはいないんだが……。


「……まぁ、実際イベントが始まれば前線で動けるでしょう。ルイシャンの機動力は無視できませんし、そもそも砂漠を探索できる召喚者プレイヤーは少ないですから。それにちょっとでも広域を探索しようと思うと、移動速度はあった方がいいですし」


 ルイシャンにも【乾燥地行動適正】が付与された装備が作られてる筈だからな。たぶん、今度はちゃんと……というと若干語弊がある気もするが、ちゃんとしっかり探索が出来るだろう。たぶん。

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