第1123話 39枚目:検証開始

 なお私と「第一候補」を呼んだのも不死族の人達であり、実際お城に到着してみるとルイシャンとフライリーさんも来ていた。少ししたら「第五候補」も来たのだが、やはり同じく不死族の人達に呼ばれたらしい。

 他にも数名召喚者プレイヤーや住民が呼ばれていたらしく、全員をざっくりと見回したところ、共通項らしい共通項は、特殊なスキルもしくは種族特性を持っている事ぐらいだった。


『まぁ、それで合っているのであろうがな』

「合ってるんですか」

「合ってるんすか……」


 フライリーさんも種族由来の特殊スキル持ちだからな。あの『妖精郷』の限定展開は確かそうだった筈だ。妖精族自体がほぼ前線に出てこないし、妖精族召喚者プレイヤーもフライリーさん以外には見た覚えがないから、活躍の機会が来ないだけで。

 ……任意選択種族に入ってなかったからな、妖精族。ランダムで引き当てるしかない。なお、引き当てる確率と難易度によるリセット率は別だ。あと現存する『妖精郷』も1ヵ所じゃなかったらしい。

 しかしかなりの人数が呼ばれたようだ。球体も水の玉も1個ではないが、順番に呼ばれるにしたって、結構時間がかかりそうだな。それぞれの特殊スキルと種族特性の組み合わせまで考えると、もっとかかるだろう。


「……と、思っていましたが、割とどんどんはけていきますね?」

「そうっすね。部屋から出てきたらそのまま帰る人も多いっす」

『今回は特殊スキルの詳細か、日程の都合を聞くだけなのかもしれぬな』


 なるほどそれもそうか。不死族の人は残らず研究者気質だが、別に常識が無い訳ではない。それに今は竜族のお城にいるんだから、その辺のフォローというか抑えに回る人がいるもんな。

 で、そんな会話をしてちょっと肩の力を抜いたあたりで「第五候補」が呼ばれていった。さほど間を開けず、フライリーさんが呼ばれてルイシャンと一緒に移動していく。

 入れ替わりに戻ってきた「第五候補」はこっちにひらひらと手を振って帰っていき、そんなにかからず出てきたフライリーさんは、どうやらお使いのようなものを頼まれたらしくこちらも帰っていった。


「で。何故か最後まで残されているんですが」

『……もしや、都合を聞きつつパッチテストのようなものはしておったのかもしれぬな』

「もしくは、ある程度仮説ぐらいは立てられていたとかですかねぇ……」

『我らは特殊スキルの内容もある程度知られているであるから、先に方法論が完成していたとかであるかも知れぬ』


 そんで待たされて待たされて、カーリャさんに抱えられた「第一候補」と私だけになって、竜族の人じゃなくて不死族の人がひょっこり迎えに来たらこういう会話にもなるよね。

 話が早くて助かるよ~。とにっこにこの笑顔で言われれば毒気も抜かれる。見た目はその辺に居そうな感じの、薄茶色のひげと髪が一体化したような人の良さそうっぽいおじさんなんだけど。

 これでヘルトルートさんの数倍できかないほど生きてるっていうんだから不思議だなぁ……。と思いつつ案内された先には、ひときわ大きな目がちかちかする球体が入り口から一番遠い場所に置かれた、そこそこ大きな部屋だった。


「それではこれより不明物に対する特殊項目の調査を開始します」


 で、その部屋の壁際に、それぞれなんかメモする感じのものを持った不死族の人達が並んでるんだよね。……なるほど。特殊項目。部屋が広くて球体の位置があそこって事は、私の種族特性の影響を見る為か。たぶん「第一候補」も似たような特性かスキルを持ってるだろうし。

 しかしまーキラッキラした興味津々って顔が並んでるな。……一応入り口で止まって様子を見ていたエルルの警戒度が上がるほどに。

 なおその後に続いた説明で、今回皇女わたし御使族「第一候補」が参加する実験って事で、意図して危害となる行動をしない、と、“天秤にして断罪”に誓いを立ててきたことが分かった。徹底している。


「ただし、全く意図せず予測も不可能な事態が発生した場合はご容赦いただきたく思います」


 ちゃんとその一言もついてきてたけど。うん。まぁ。それが本当に事故なら、仕方ないな。

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