第1119話 39枚目:変化理由
大音量で響き続ける不協和音だが、それをかき消すような爆発音が響き渡った。おっと? なんか思ったより威力が出たな? 私のステータス自体は当時より下がってる筈なんだけど。
ある意味儀式の最中ではあるが、私の領域スキルは基本的に、私のステータスを上げる事はない。となると考えられるのは装備が大幅に良くなってることぐらいだが、だからと言ってマジで地形が変わりそうなほどの威力が出るもんなのか?
しかし本来の目的、混乱する戦場に気付けというか活を入れるというか、混乱を収めて立て直す為のきっかけ、という部分は果たせたようだ。大音量の不協和音に負けないようにか、いつもより強めに拡声されている気のする司令部の指示が響き始めている。
「とりあえずこれで良し。あの大穴は司令部が上手く活用してくれるでしょうし、一旦戻りましょう、エルル」
『……今迄みたいにモンスターが溢れる様子もないのが不気味っちゃ不気味だが、そうだな。しかし、頭に響く音だ』
「何か
というか、たぶん、あると思う。何故なら領域スキルの出力を上げた覚えはないのに、私の魔力の減り方が加速しているからだ。もちろん魔法を使ったのとは別口で。
そんなに魔力を食う何かというと、今この場で真っ先に思いつくのは「護りの加護の小さな盾」の耐久度回復だからな。この不協和音による影響を防いでいて、その結果耐久度がガリガリ削れているんなら、当然それを回復対象にしている私の魔力も持って行かれるだろう。
で。そんな広範囲に影響を与えるこの不協和音はなんだって話なんだが……。
「これは、突入した人たちが上手くやってくれましたかね」
『だと思うが……いや待て』
たぶんあの長い城を彷彿とさせる感じの砦に、核を直接どうこうって感じのクリティカルなダメージが入ったんじゃないかな、と。
が。何故かエルルはそのまま戦場全体を一望できる中心部に戻ってきて、そのまま何かを探すようにあちこちを見回し始めた。ん? 何探してんの?
と言っても多分答えてくれない気配がするので、陽炎のようなものに変化が無い事をもう一度確認して、私は突入部隊専用のスレッドを開いて確認だ。最新情報があるならここだし。
突入部隊の人達視点の動画はまた後で確認するとして、今も次々書き込まれている文章を追いかける。どうやら撤退中のようで、遠目に見えた派手な戦闘模様の通り、かなり強力なゴーレムタイプのモンスターだったらしい。
背中に管のようなものが何本も繋がっていて、削っても削っても即座に修復されたとの事。管自体も再生するらしく、どれだけ削っても傷1つ残さず直され続けてかなり精神的にも厳しかったらしい。うっわ、それは確かに厄介だ。門番としては最適解だけど。
が。あの派手な戦闘は、隠密特化した探索部隊を内部に送り込む為の囮、という面もあったらしい。どうやらやってくれたのは、その探索部隊の方だったみたいだな。
そこまでを把握して、エルルが何を探しているのか察した。なるほど。
「ヘルトルートさんなら、突入部隊の人達を拾って司令部の所へ帰還したらしいですよ」
『っ!?』
「詳しくは司令部の発表待ちですが、拾える限りの情報だとヘルトルートさん、核っぽい重要そうなものを引っこ抜いた上でその周囲をかなり徹底的に破壊してきたそうですよ。それでこの不協和音ですから、大金星じゃないですか」
『…………そうじゃないかと、思ったは思ったが……!!』
いやー、弟が無茶したんじゃないかと心配するとかお兄ちゃんしてるな。そもそもヘルトルートさんじゃないかと思った時点で察知力がすごい。真面目で頼りがいがあって付き合いも良いとかスーパーお兄ちゃんだな。流石エルル。
ま、立て直しは出来つつあるとはいえ、この不協和音の中で行動し続けるのはキツいからな。成果もあった事だし、たぶんその内司令部から一時撤退の指示があるんじゃないかな。情報共有もかねてその時に会いに行こうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます