第1114話 39枚目:遠回りの発見

 で、どうなったかって?

 大騒ぎだよ。


[アイテム:護りの加護の小さな盾

耐久度:100%

説明:“神秘にして福音”の神から授けられた神器

   耐久度の限り持ち主をあらゆる悪影響から護る加護が込められている

   他の装備と組み合わせる事が可能

   また、加護を受けた者の魔力によって耐久度を回復させる事が出来る]


「何故気付かなかった私!!!」


 ログアウト直前の私から提案されて、ルシル達がわいわいしながらそれぞれに箱庭を作って、皆で揃って異界の理からの防御を願いつつ捧げたら、案の定最高オブ最高の神器が与えられたってさ!!

 デザインも白くて丸い盾にルピナスとカスミソウが浮き彫りにされてるいつものやつだしどこを見ても最高しかないんだけど! ほんっとに! どうして! 気付かなかった!!

 と、日曜日午前中のログインで、ルシル達にその、直径2㎝ぐらいの神器を見せてもらったその場で地面ドンしてしまった私だ。何が痛恨だってな、私はこの、綺麗なボタンみたいなアイテムを見たことがあるんだよ!! コトニワで!!


「しかもそのまんま「箱庭の騎士」の盾じゃないですかこれ……っ! そのボタンサイズって事は「小さな盾の証」じゃないですか……っ! めっちゃ懐かしい……!」

「……とりあえずお嬢。立とうか」

「情緒がやられたのでちょっと待ってください!」

「なんだそれ……」


 完全に不意打ちだったのでちょっと復帰に時間がかかったし、間にそこそこ素が出てしまったが、ともかく。正直現状まだ「そんな最高なことある???」って感じだがともかく。

 今私が言った「小さな盾の証」だが、そもそもコトニワはブログパーツだった。しかし世界観的なあれで、使われるステータスこそ単純だったものの、プレイヤー・敵NPC問わず襲撃要素もあった訳だ。実際ルージュを欲しがった交流前のマリーに攻められまくったし。

 とはいえ、24時間ずっと張り付き続けるという訳にはいかない。そういうときに完全な安全を保障する、まぁ、いわゆる拠点シールドだな。それを張る為のアイテムが、「小さな盾の証」だった訳だ。


「強力な分だけ「庭の主」として貸与された力では作る事が出来ず、ボックス様に貢献をした時のご褒美として与えられるだけだったので、結構な貴重品だったんですよ」


 つまりイベントの景品である。フリアドでいう「白紙のスキル書」と同レベルって言ったらいいか。もちろんある程度の数は確保してたんだが、特殊なアイテムだからか保管場所が特殊だったんだよな。つまり引継ぎ対象に入ってない。残念。

 それが効果は変われどまた手に入って、しかもこうやって手に取れるなんてなぁ……。感無量にもなろうってもんだよ。しかもボックス様の何が最高ってな? いや全部最高なんだけど。


「しかも今回、私達に合わせてちょっとカスタマイズしてくれてますからね」

「ん? なんか違うのか?」

「違うというか、裏にトンネルみたいな穴が開いてますよね?」

「? ……あぁ、あるな。これか、装備と組み合わせられるっていう部分は」

「そうなんですが、それに加えてですね」


 ここでちょいちょいとルウを手招き。左耳の上あたりで髪飾りのようにつけている、皆でお揃いの組紐ミサンガと、ルウが貰った「護りの加護の小さな盾」を受け取る。

 「護りの加護の小さな盾」の裏にある、そこそこ厚みのあるボタンの中を通る穴に、組紐ミサンガを通してみると……ほーら幅がぴったりだ。詰まることも無いが勝手に抜け落ちることも無いジャストサイズ。最高。ほんと最高。

 で、これをある程度通してから、ルウの同じ場所に着けなおすとだな。


「この通り。デザイン的にも何も問題ないどころか最初からこの為のものだったのではと言わんばかりの馴染み具合。やっぱり皆でお揃いにしてよかったですね。私も貰ってきます!」

「おい待てお嬢、確かやる事が山ほど……ってもういないだと!?」


 もう、この、最初からセットだったのでは? というか、元々こういう飾りだったのでは? という感じの一体感よ。こんなのテンション上がるに決まってるだろ! 私もお揃いにするんだ!

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