第1081話 37枚目:最終攻勢

「あれは終わる空気だっただろうが運営!!」

「いい加減にしろや運営っ!!」

「気持ちよく終わるタイミングで終わらせとけっつーんだよぉおおお!!」

「まぁ死力を尽くした直後だから喜べもしなかったけどな!!」

「戦争がガチ過ぎなんだが運営!!?」


 と、運営への不満()も戦闘意欲に変えた召喚者プレイヤー勢は、応援として「蝕み毒する異界の喰王」と戦っていた分だけ「手」に対する対処も分かっている。混乱している召喚者プレイヤーを庇う動きをメインにしながら、順調に戦闘を進めていった。

 そして一旦落ち着いてしまえば、こちらも最前線を張れる召喚者プレイヤーだ。注意事項を司令部から聞きなおし、応援としてきた召喚者プレイヤーの動きを見て、自分の動きを最適化していくのは速い。


「流石に、これ以上の連戦は――キツいんですよっ! ここで沈んでおきなさい! [マジックランス・ガトリング]!」


 私も割と本音を吐きながら、かなり範囲が狭まった範囲に残っている取り巻きとモンスター、ついでに突然虚空に現れた白い板を攻撃して、前衛を支援。向こうの方でも何か聞こえたから、たぶん「第二候補」も大技を使ったんだろう。

 全方位を囲むような形で、様々な大技が体力バーの表示された台座に叩き込まれる。体力バーが残り1割を切った時の反撃、広域への超重力の展開と「手」の組み合わせでまたかなりの被害が出たから、これ以上戦闘を長引かせると巻き返されるって判断だ。


「正直、私も(ログイン時間的に)かなり厳しいですからね……」


 なおカバーさんは最前線で戦ってる模様。あの剣手に入れてから本当に絶好調だな。充填する毒物の類があればこそなんだろうけど。

 もちろん他の召喚者プレイヤーにも手を抜く理由なんて一欠片だってない。若干名ラストアタックの奪い合いにすらなっているようだが、叩き込まれる攻撃の勢いは、激しくはなっても緩まる事はない。

 激しいエフェクト。衝撃波。そういうのに紛れつつも、青い体力バーは確実に黒くなっていき、


『――あぁ、残念。本当に。せっかく、こんなに、楽しそうで、美しい、光景、なのに――――』


 なのに、の先は聞き取れず、「拉ぎ停める異界の塞王」は、こちらも端から崩れて消えていった。領域スキルの展開にリソースが持って行かれる動きが止まる。

 最後の欠片まで、塵1つ、そこに居たという痕跡を何も残さず、綺麗さっぱりと消滅して。


[件名:イベントメール

本文:レイドボス「拉ぎ停める異界の塞王」が討伐されました

   イベント期間内にレイドボスが討伐された為、レイドボスの特殊能力が完全に解除されます

   イベント期間内にレイドボスが討伐された為、イベント空間内全域の状態が変化します]


 そのタイミングで、届いた。今度は先ほどのものとは違い、勝利を宣言するそっけない文章が。

 状態が変化ってなんだ、とは思ったが、まぁそれはともかく。


「……ようやく終わりましたか。しぶといというか面倒というか、ひたすら労力を食われた相手でしたね……」


 ふー、と、流石に今ばかりは皇女ロールをちょっとお休みしたい気持ちで息を吐き、小さく呟く。

 その周囲で。――今度こそはやりきったと、歓声が、爆発した。

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