第1065話 37枚目:出現跡地

 領域スキルは展開したまま、戦闘跡もすっかり修復された場所を最奥へと移動していく。ルイシャンは並足でも相当速いので、結構な時間とはいえ戦闘しながら移動した距離ぐらいなら、すぐに詰める事が出来た。

 辿り着いた跡地には、大きな穴が開いていた。あの巨大な樹の形をしたモンスターがそれにふさわしい根を引き抜いたとはいえ、他の場所ならとっくに修復されている筈だ。

 急に動き出したのに慌てて、更にそれが外に出ようとしてたんだから、完全に気を取られたってところだろうか。冷静に観察してみればすぐ不自然さに気付けただろうし。


「で、穴の中は……実に不自然な具合で中が見通せませんね」

「というかなんか、入り組んだ通路みたいになってないか……?」

「また迷路ですかっ!?」


 また迷路だな。それも立体の方。斜めとか螺旋とかもばっちり入った、何かの巣みたいな難易度激高のやつだ。たぶんサーニャが1人で入ったら、普通に歩くだけだと永遠に出てこれない。

 相変わらず構造物は色々な物を混ぜっぱなしにしたような、雑に有機物っぽいものだ。何でこういちいち神経を逆なでしないといけないんだろう。敵だからか。そうか。


「今までのパターンだと、上から吹き飛ばしてもきっとお代わりがくるだけでしょうしね。地道に降りるしかないでしょう。降りたとしても、通路自体が攻撃してくる可能性は高そうですが」

「……それって、前に倒したあれと同じって事か?」

「同格ではありますし、方向性が違うとはいえ狂いっぷりと最低具合は一緒ですし」

「え。前に倒したあれって何のことですか?」

「6体いる事が確定しているうち、1体は撃破済みなんです。大神の試練という形で姿を見る事は可能ですので、後で見に行きましょうか」


 そして久しぶりに全力火力で殴ろう。あれの時も散々苦労させられたからな。何割かはゲテモノピエロのせいだけど、あっちは殴れないからその分も込みで。

 ダイジェストストーリーもといざっくりした当時の動きはカバーさんに聞いてもらうとして、とりあえず今はこの迷路だな。幸いここも馬相当の生き物に乗る事を前提にしているのか、道(?)幅も広ければ高さもある。


「下手に道っぽい場所を無視しても何か面倒な事になりかねませんし、地道に降りていきましょうか」

「末姫様。さらっと危険地帯に踏み込もうとするのはどうかと思うのですが!」

「というか、ここに来た時点で既にそういうつもりだったろお嬢」

「適材適所です」


 まぁね。【王権領域】を維持するリソースが増えてることからしても、ちょっと一般召喚者プレイヤーじゃキツそうだし。そもそもここまでの戦いに加えて、あの大物集団の相手で結構消耗している筈だ。

 それでもここに本体がいるか核があって、それを引きずり出すか行動を阻害しないとお代わりが止まらない、となれば、まぁ来るだろう。だからそれまでに、多少は弱体化させておかないとね?


「特級戦力のお仕事ですよ。もう言い分は聞いたので、ここから全力火力を叩き込み続けても構いませんが、それで防御に回られても面倒ですし」

「くっ、当時の第一皇妹様付きの方々の苦労が身に染みてよく分かりますっ!」

「ハイデお姉様ほど傍若無人ではないですよ私」

「暴走具合と人の話の聞かなさは似たようなもんだ」

「ちゃんと理由がある私でなければならない必要な行動じゃないですか」

「理由を用意するだけ性質が悪いかもな……」

「後は状況が味方しすぎているかと……!」

「異議を申し立てたいのですが」

「却下だ」


 あそこまで他人に迷惑をかける方向で自由じゃないぞ、私は。確かにアキュアマーリさんほど大人しくはしてないけど。冒険してみたい気持ちは確かにあるが、護衛を撒いて姿をくらますとかいう事は一度もないんだけどな? ちゃんと目の届くところにいるぞ?

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