第1066話 37枚目:縦穴突入

 まぁでもここで他の召喚者プレイヤーを待っていたら、先行している意味が無い訳で。とりあえず様子見というか、どんな動きをするか程度は確認しておかないといけないよね、と、主にニーアさんを説得して、ゆっくりだが突入開始だ。

 しばらく進むと、壁に繋がって行き止まりになっていた部分が剥がれてモンスターになって降って来たり、下に伸びていた部分が巻き上げられるようにして盛り上がりモンスターになったりしたが、大体エルルが一撃で倒していた。強い。


「しかし本当に見た目以上に深いというか、道のりが長いですね」

「というか、お嬢」

「何でしょうエルル」

「たぶんこれ、途中で道が変わってるぞ。何回か同じ場所を通ってる」

「……そういえば迷路型モンスターも、リアルタイムで内部構造が変わっていましたね」


 大人数必須か……。という事を確認したところで何やら不吉な揺れが伝わって来たので、一旦地上(?)に離脱して距離を取る。タイミングよくカバーさんを含む他の召喚者プレイヤー達が集まってきていたのでそちらに合流し、様子を見る事しばらく。

 ゴゴゴゴゴゴ、という重低音と共に、巨大な樹のシルエットをしたモンスターが生えてきた。文字通り。やっぱりお代わりが来たか。なお大きさが大きさの為流石に時間がかかっていて、その間に先に突入して分かった事は共有している。

 そしてその巨大樹型モンスターは、今度はノータイムで根を自ら引っこ抜くようにして動き始めた。いや。いや、うん。確かにそこに居座られてたら、その下の探索は出来ないけども。


「司令部からの連絡によれば、応援としてくる召喚者プレイヤーが扉のこちら側の空間の半ば程に罠を仕掛け、そこで根に相当する部分を吹き飛ばし、そのまま巨大なモンスターの群れとの戦闘に入るそうです」

「つまり、最初からここに居た人たちは突入組って事でいいんですね?」

「そうなります。人数が必要という事ですし、何よりこの状況だと、下手に手分けをするよりちぃ姫さんの近くにいた方が安定しますので」


 何が安定するかって言ったら、当然戦力としてだな。主に継続戦闘って意味での。全域デバフが再び強まってるから、領域スキルの有無は大きい。

 とりあえず2つの領域スキルは範囲を最大にして、立体迷宮なので形も球型に戻す。その分強度を落とすことで自然回復の内に収めておいた。……ちょっと自然回復力を割るぐらいの方がスキル上げにはいいんだけど、何かあった時に対応できないとマズいから。

 まぁ強度を落としたと言っても状態異常を通すほどではない。一応カバーさんに確認してもらったが、状態異常の積み込みもほぼ防げているそうだ。この調子なら、もし状態異常が積みあがっても、モンスター化のトリガーは抑え込めるだろう、との事。


「たぶんこれ、今回も本体なり核なりを召喚者プレイヤーが発見する事で最終段階に移行するんですよね?」

「その可能性が高いでしょう。前回と違うのは、かなりの可能性でその本体もしくは核から直接あのモンスター生産能力を持つモンスターが出現している為、その最大探索時間に制限がついている、という事ですが」

「……高さに余裕があるうちに、横穴を開けられるか確認しておきましょうか」

「地形に対する再生能力は相変わらず働いているようなので、開けて飛び込んだら取り込まれた、という可能性も高いかと。幸い撤退に関しては問題なくできるようなので、素直に撤退した方がいいと思われます」


 横穴への一時退避は非推奨、か。まぁそうだな。前回だってティフォン様の神器で焼いて、土を神の力がガッツリ込められた黒曜石天然ガラスに変えたから大丈夫だったが、そうでなければ埋まっていた可能性が高いし。

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