第990話 35枚目:被害状況

 流石にここまで大規模な襲撃……テロ? となると、完封という訳にはいかない。まさか、ここまで斜め上方向に想定外な方法で来るとは思わなかった。まぁだからここまで効果が出たんだろうけど。

 しかしこうなると、何らかの補強、あるいは増幅の方向で、領域スキルを拡大する装備が必要か。私が持っているのはどっちもだいぶ特殊だから、そもそもそれに適した素材が有るかどうかが問題だろうが。

 どちらにせよ、「第一候補」に相談が必要だ。でも、その「第一候補」は現在、あの超巨大モンスターが出現した場所の、力場的除染で忙しい。まぁ、私も流石に今回は疲れた。いくら回復速度が速いとはいえ、まだ影響が無くなった訳ではないから2重の領域スキルは展開しっぱなしだし。


「大丈夫か、お嬢」

「えぇ、多少疲れたぐらいです。エルルは大丈夫ですか?」

「問題ない。あいつらも無事だ。……しかし、やられたな」

「全くですね」


 本当にな。一番目立つ『スターティア』でこれだ。周辺にある、小さな町や名前もない村、そういう場所を旅してまわっていた人たちがどれだけ巻き込まれたかは、今も調査中となっている。

 箒に乗った魔女装束の人達が忙しく空を行き来しているから、『魔女の箒』の人達もフル稼働状態なのだろう。竜族は上空からの確認は出来ても、丁寧に運ぶっていう事が苦手だからね。

 しかし、こうくるか……だ。どうすんだこれ。のんびり世界を見て回るついでにダンジョンを攻略してね、どころじゃないだろ。この騒ぎだけで、下手しなくても竜都の大陸で前線が押し込まれるんじゃないのか。


「あちらはあちらで詰めている召喚者プレイヤーや『勇者』がいますし、竜族の人達もきっちり防衛戦を無理なくしている筈ですが、混乱とは畳みかけるものですからねぇ……」


 一応クランメンバー専用掲示板と、通常の掲示板を確認する。……ちょっと。邪神関係の封印が危うく解かれるところだったってマジか。防衛にぎりぎり成功したのはこれ、何かある想定でいつもより戦力を多く置いてたらしい。司令部の作戦勝ちだな。

 なおやはり時を同じくして、北国の大陸を含んだ各大きな集落で自爆テロが発生したようだが、こちらは素早い信仰による発見と隔離・避難によって、被害は物損だけで済んだらしい。

 つまり全容は確認できていないが、一番被害が出ているのがこの『スターティア』とその周辺って事のようだ。まぁそりゃそうか。ここが一番予想外の不意打ちだったもんな。


「……理想的、とは言いませんが、出来る範囲の可能な限り、は出来たと思いたいところですが」

「お嬢がいなければ、少なくともこの街は死んでたと思うが?」

「本当に間に合って良かったですよね」

「姿が見えなくなったと思ったらお嬢のスキルが街のど真ん中で発動した気配がしたから、またやらかしやがってと思ったけどな」

「やらかしたのは邪神の信徒の方です」


 相手がこんな無茶苦茶をしてこなければ問題なかった、というのは主張させてもらう。私は守れる範囲を守っただけだ。相手の攻撃が大規模極まりなかったから、抵抗するだけでも相応の出力が必要だっただけで。

 まぁエルルもそれは分かってるだろうし、私がスキルを発動したのが分かった時点で、即行大神殿の神域ポータル経由で待機してた部隊の人達を連れてきてくれたんだから、必要な事だとは思ってくれているだろう。まぁいつものお説教である。


「もうちょっと訓練密度上げるべきですかね」

「お嬢はもう少し基礎を大事にした方がいいぞ」

「素振りに使うならもっと重い武器が欲しいところです」

「やりすぎだ。今の重さに慣れてからにしろ」


 ちょっとでもスタミナを消費したいんだよ……。神の祝福ギフトの効果で、スタミナを消費して回復すればステータスが上がるから……。

 基礎が大事っていうのも分かるんだけどね。型稽古をしてると、他の行動より明らかに種族スキルの上がり方がいいんだ。

 …………まぁ、効率だけで言えば、ボックス様やティフォン様達の試練で強敵と戦うのが一番なんだけど。

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