第987話 35枚目:警戒開始
「…………あいつらか」
「うげっ。動き出したの? このタイミングで……いやそうか、このタイミングだからか……!」
エルルとサーニャに伝えたところ、そんな反応が返ってきた。まぁそうもなるか。過去の色々を知ってるもんな。主に被害を受けるって意味で。
なお元第7番隊の人達やニーアさんには、カバーさんによる実例を交えた『バッドエンド』の危険性と厄介度に関する説明会を聞いてもらっている。一応部隊としてこっちに来てもらった時にざっくりと説明はしてるんだが、念の為もう一回だ。
「マリーは大丈夫ですか?」
「どこぞの黒い悪魔より面倒でしつこく厄介だというのは理解しておりますわ」
「悪意を持ってわざとやっている分だけ生存本能任せの虫より格段に厄介なんですよね……」
「結局のところ、一番恐ろしいのは人間でしてよ?」
マリーが言うと説得力が違うんだよな。私の3つ下だった筈だから、小学生で荒らしを完全撃退したガチのお嬢様だけあるわ。流石にそこまで人間全般がダメだとは思いたくないけど。
なおまだ竜都の大陸に継続して稼働している司令部は、例の自爆テロが再び行われるかもしれない、と、各地の警備を強化するように話を持って行ったらしい。そうだな、それもあった。火種は消えてないから。
まぁこうやって手を取られてリソースを割かざるを得ないのも向こうの計算の内で、戦果なんだろうけどな? ほんっと無駄がないというか、面倒な。
「まぁ、警戒しておく。つっても、あの説明はもう上に通してあるんだろうから、狙うとすれば今は手薄になった後方の砦か、それとも集落の外れか……」
「防ごうとしても手が回らない場所は間違いないだろうね。で、こっちが読むのも見越して仕掛けてくるんだろう? 本当、考えれば考えるほど厄介な相手だね」
本当にな。
それでも仕掛けてくる可能性がある以上は、警戒して潰すしかないんだけど。
もちろん『アウセラー・クローネ』のクランハウスである島の警戒レベルも上げている。ネレイちゃんとカトリナちゃんはリアルの月替わりで帰っていったが、あっちもあっちで警戒してもらわないといけないし。
「とりあえず、当面は難易度を意図して上げられたり、元々難易度が高い野良試練を攻略して回るのが私の仕事です。啓示で示された厄介な野良試練は空間の歪みの暴走であり、事故に属する何者の意思も介在していない状態ですから、流石にそれを含めて儀式を構築することはできない。……だろう、というのが「第一候補」の見立てですし」
「そこは断言できないのか」
「そもそも、「モンスターの『王』」と繋がる方法とかいまだに完全な謎に包まれてますからね」
「そういえばそうだった。本当にどうやって接触したんだろう?」
正直、何が起きてもおかしくないんだよな。もちろん全力で悪い意味で、だが。
「……あれ? そういえば姫さん。確か、『勇者』が召喚者に手を貸してくれたんじゃなかったっけ? 邪神とその信徒の相手って、本来『勇者』の仕事じゃないの?」
「そんな目立つ存在に動きを悟られるようなヘマ、あれがすると思います?」
「思わない! ……うん! 本っ当に心底厄介だね!」
そういう事だ。本当に、ある意味の信用は高いんだよな。全力で迷惑かつ厄介だけど。
「……そうだな。下手に国を巻き込んだら、規模が大きくなった分だけ出来る隙に付け込んでくるだろうし。むしろこっちの動きが制限されるだけ、なんて事になりかねないな……」
「物事を引っ搔き回し、こっちが一番やってほしくない事をやってほしくないタイミングでやる、その機を見る目は確かですからねぇ。大きな組織が動いたら、それだけであちらに有利になるでしょう」
まぁともかく。やるべき事は何も変わらないんだ。相手が何かする為の隙を可能な限り減らすために警戒をして、何かしても対応できるように、問題は早め早めに片付けておく。それしかない。
その為と、後はステータスを上げる為と、装備を強化する為に。余力は残しつつ可能な限り素早く、高難易度になったもしくは元々高難易度のダンジョンをクリアしていくとしよう。
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