第973話 34枚目:方針決定

 流石に動く人数が人数だし、警備関係もしっかりしなければいけないので、決行は土曜日の午前中となった。

 イベント開始は日曜日。そこから大型連休を生かしてのスタートダッシュを決めたはいいが、移動に難がある事が確定するまでに2日かかってるからな。その上で試行錯誤に1日かかり、そこからこの話が出て、最短で最大人数がタイミングを合わせられるのがそこだったのだ。

 もちろんこの情報は機密度が高いが、参加人数が多くなる以上はどうしたって漏れるだろう。だから2人は事前に避難してきたんだろうし。


「ところで、ちょっと聞いてもいいかしら」


 儀式、というか、突入に関する話し合いをあらたかた終えたところで、カトリナちゃんからそんな発言があった。時間にも余裕があるし、特にこれといって問題はなかった筈だ。まぁそれでも召喚者プレイヤーと住民、という感覚の違いもあるかもしれないし、質問はありがたい。


『問題ないであるぞ。どうした?』

「待遇については問題ないというか、必要な事であるのは確かだけど、迷惑をかける相手にそこまでしてもらうのは、とも思うわ。というのは置いておいて……その、この島の北に、何かない? 前に来た時から気になってしょうがなかったのだけど」


 ……そっちかー。と顔が引きつらないように全力で制御しつつ、クランメンバー専用広域チャットで素早く打ち合わせ。撮影班の人がいるからな。かといって、狙われても困るんだけど。

 そろそろ孵りそうな気がするんだよな。……例の、「???の卵」。


『うむ。あると言えばあるが、少々特殊な場所故、手短に説明する事が難しい。まぁ少なくとも今回の件には関係がない故、後ほどゆっくりと説明しよう』

「分かったわ。……何か特別な儀式場でもあるのかしら」


 後半は小声だが聞こえている。まぁ、間違ってはいない。「???の卵」を孵す為の儀式場状態にした泉があるからな。「第一候補」の島の北には。

 リアル1年の間、ステータスが間違いなく絶対的に高い魔王候補わたしたちの魔力を注ぎ続け、地形によってたっぷりのマナを集めておいたから、残り時間がだいぶ減っていた筈だ。

 元が内部時間で50年かかるところ……えーと、リアル1年は内部時間4年だから、約10分の1で孵りそうな計算になるか。促成育成ってレベルじゃないな。


『それでは、この場はこれで解散としよう。巫女達の案内もある故な』


 私がそんなことを考えている間に、「第一候補」の宣言で話し合いは終わった。撮影係の人が一礼して出て行ってから、私も席を立つ。同じく「第四候補」と「第五候補」も席を立った。


「言われて思い出したけど、あれもそろそろなんじゃね?」

「そうね~。ちょっと見に行こうかしら~」


 立ち上がりながらそんな会話をしていたので、考えることは一緒だったようだ。カトリナちゃんとネレイちゃんが「?」って顔をしているが、あれを見せていいかどうかは微妙なところだからな。マジで何が生まれるか分からないし。

 悪いものではないと思うんだけどな。霊獣達や属性精達が集まってるのも見るし。なんなら「???の卵」に寄って行く時には船に相乗りしてくるし。ただただ生まれてくる存在の予想がつかないだけで。


「え、一体何があるの……?」

「儀式場じゃないのかな」

「……「第一候補」。この2人なら大丈夫なのでは?」

『ふむ。……まぁ、そうであるな。場合によっては彼女らの方が頼りになるやもしれん』

「ちょっと待って、何なの? 何があるの?」

「悪いものではないと思うんですが、いかんせん色々ややこしいんですよね」

「本当に何なの!?」


 まさか正直に検証班のやらかし案件と言える訳もなく、カトリナちゃんには悪いが誤魔化させてもらう。まぁ、見れば分かるだろう。あぁいうものに関しては、カトリナちゃんの方が見慣れてるかもしれないし。

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