第944話 30枚目:完了報告
どうやら卵(?)は、ダンジョンから脱出したら解除される仕様だったらしい。いやぁ、良かった。これ以上の面倒ごとにならなくて。
とはいえ大半はログアウト中でぐったりと動かない。死屍累々にも見えるので、周りの注目も大変と集めてしまった。まぁそりゃするか。私達が今日100階層に挑むのは知られていただろうし、それが彼らと一緒に出て来たって時点で大体察する人は察するだろう。
「さて。我々も若干の不明点がありますので、場所を変えて報告会といたしましょう」
「事情を知りたい人はついてきてもいいですが! 出来れば団体ごとに代表者を出す形でお願いします!」
なのでさくさくカバーさんとスピンさんが音頭をとり、「第四候補」が改めてゴーレムを作ってログアウト中の
なお私はその流れに紛れてこっそりと離脱し、ニーアさんにアポ取りをお願いして、クランハウスの島に戻った。既に危険物の領域に入っている素材を置いてこないといけないからね。
そこからは前回と同じく、木箱を持って馬車(?)でお城まで移動、アキュアマーリさんのプレイベートエリアにお招きしてもらう。第一声と初手抱き締め、からの説明は前回と同じなので省略。
「――……そう、ね。普段なら……普段なら、問題にもならなかったでしょう。その程度は可愛いものだもの。ただ。あの時は……普段では無かった。……それだけ、と、言ってしまえば、それだけなのだけれど」
ここまでの事になるなんて、思いもしなかったのでしょう?
動画を見せて、「古代徒人族の魂」を見せて。アキュアマーリさんはその表面を指先で撫でながら、雫を落とすように呟いた。
そこにどんな感情があったのかを読み取りきる事は出来なかったが、やはり、相手を責めるものだけは無かった。……なんだろう。確かに、この3者の内誰かがやっていれば阻止出来た事、というのは分かるんだが、たぶんこれお互いに謝罪合戦になってるな。
ともあれ、これで必須である神器は回収できた。これで結晶化した「古代徒人族の魂」となった人達も、現代まで封印を守り続けてきた竜人族の人達も、赦す事が出来るだろう。
「ありがとう、ルミルちゃん。本当に。まだ始祖への報告や、実際に赦しを与える段取りは残っているけれど、それは私の仕事だし。――そうだ、これだけ頑張ってくれたのだから、ちゃんと報酬を用意しないといけないわね」
「私も皇女ですし、自分のやるべき事をやっただけですよ?」
「それでも、よ。私がお願いしたのだから、私からの依頼と言う形になるわ。何がいいかしら」
……何がいいかしら、と言われても、皇女としての全権限だけで十分欲しいものは揃ってるしなぁ……。流石にあの危険物の域に入った素材を引き取ってほしいっていうのは違うだろうし。
宝物庫は中身の持ち出し含めて既に自由になってるし、皇族御用達の鍛冶師さんも既にお世話になりまくってるしな。装備、は言うまでもなく既に生産する予定が立っていて、現在素材を待っている状態だ。その素材も、私が動かないと揃わない。
しかし、何かしら言わないとダメな感じだよな、これ。どーしたもんか。下手な事言ったら想像の斜め上なものがきそうだから、難しいな。……土地、とは言ったら、なんかぽんと町ぐらいはくれそうなんだもの。皇族の感覚怖い。
「ほしいもの、ですか……」
「何でもいいわよ? そういえばルミルちゃん、お城とは別に暮らしてる所があるのよね。そこにお城を建てましょうか」
「面積的に他の事が出来なくなるのでそれはちょっと」
「あら、島なの? じゃあ周りの島がいいかしら」
「他の仲間との兼ね合いがあるんで……」
「でも、神器の回収に協力してくれたのよね? それなら組織宛てにすれば大丈夫じゃない?」
ほらなー。こうなるから困ってんじゃん。中身は異世界の一般人だって言ってるだろ! マリーならさらっと欲しいものを言えるんだろうけどさ!
しかしこのままだと島が貰えてしまいそうだ。ここで注意しなければいけないのは、島といっても1つ2つではないって事だな。たぶん、クランハウスにしてる島の、ぐるっと周り中は全部貰える。単位!! と中身が一般人な私は叫びそうになるが、これが通常だ。諦めるしかない。
となると、皇族からの報酬、皇族にしか出来ない事で、別の報酬を望むしかないのだが、周りに迷惑が掛からなくて私が欲しいと思うものってなんだ。やっぱ権利関係か? でも皇女権限の全許可で大分その辺は叶ってるし…………あっ。
「あまり管理範囲が広くなっても大変なので、島は遠慮させて頂きたいですね……」
「まぁ、まだルミルちゃんは【成体】だものね。いきなりそんな広い範囲を管理するのは大変かしら」
「あの、それでいくと、欲しいと言うか、確認をとってみたいというか、一応望むものはあるんですが……」
「何かしら? どこかの山が欲しいとか?」
「どちらかというと権利関係です。土地とかではなく。あと、私は望みますが、それに対して意思確認をしたいと言いますか」
うん? と首を傾げたアキュアマーリさんに、思い付きを話す。うんうん、と聞いてくれたアキュアマーリさんは、にっこり笑って頭を撫でてくれた。
「ルミルちゃんは優しいわね。えぇ、もちろんいいわよ。命令の形にならないように書類を送っておくわね」
「ありがとうございます、お姉様」
「あーもー可愛いんだから!」
にこー、と微笑み返すと、むぎゅっと抱き着かれた。まぁここまでがいつもの事だな。
ん? 何の事かって言ったら、まぁ、私の護衛関係の人事だな。……私が個人的に、命令だから側にいる、って相手が苦手なので、相手の意思確認は是非とも取ってほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます