第917話 29枚目:方法実行

 さてそうやって魔力を供給する事、


「……何かやたら持って行かれるんですが?」

「姫さん、それ大丈夫なの?」

「自然回復の内に留まっているので、私の方に問題は無いんですけど」


 ううん? と私が首を傾げている事から分かるように、たっぷり10分以上は経過していた。サーニャに返したように問題は無いのだが、解せないな。流石にちょっと持って行かれ過ぎでは?

 いやまぁ、私のステータスは現代竜族の人達ぐらいにまで落ちている。それは確かだ。だけど、だったとしてもおかしいんだよなぁ。……ステータスが落ちているだけであって、スキルに依存する回復力はほとんど落ちてない筈だぞ?

 うん。確かに私の強みはステータスの暴力だ。進化によってそこは弱体化して、鍛え直している途中だからそこはまぁ脅威度が落ちたと言えなくもないが、私の本来の強みは、リソースの回復力と、状態異常への耐性だからな?


「死ななきゃどうとでもなります。というか、どうとでも出来ます。だから、まず、最優先で鍛え続けてきたのは回復力と耐性なんですよね。その私で、ここまで魔力を注ぎ続けてまだ足りないってどうなってるんです?」

「何でそこで自分が戦う前提で努力をしてるのかな姫さんは」

「召喚者だからですが」


 で、現状その私の回復力を相殺するだけは注ぎ続けて15分が経過した。いや、おかしいだろう。

 ……これは、魔力だけではダメだったか? と思って体力(HP)とスタミナも供給対象にして注ぎ込めるか確認してみたが、供給対象には出来ないようだ。まぁどうやって使うんだって話だしな。

 現在のステータスはともかく、回復力は結構自信があったのになぁ……。と内心首を傾げつつ、魔力の最大値から1割削れた状態が維持されるように設定をいじる。これで「月燐石のネックレス・幸」からも蓄積した魔力が供給される筈だ。


「あの、ところで末姫様」

「なんでしょう、ニーアさん」

「何だか気のせいか、末姫様の周りの魔力も一緒に流れ込んでいるように思えるのですが」

「あ、それボクも思った。良かった。気のせいじゃ無かったんだ」

「えーと……まぁ、この魔力の供給に使っているスキルが、そもそも周囲に影響するものですからね。それに私の種族特性が合わさって、影響がより大きくなっている可能性はあります」


 って事は、私の回復力以上に魔力が投入されてるって事だよな。……いや、多いよな? 絶対に多いな? この目の前の骨になった竜の人だけの問題じゃなくなってるのは気のせいか……?


『すみません、ちぃ姫さん。着信に気付くのが遅れました。現在そちらはどういう状況でしょうか?』


 と、やらかしの気配を感じた所でカバーさんからウィスパーが届いた。良かった。助けて検証班!

 ざっくりと大きな骨を発見してから【調律領域】で魔力を注ぎこんでいる事と、その量がちょっと尋常では無い事をすぐに伝える。なんならいったん中断した方が良いのだろうか、これ。


『――という状況でして。そちらに影響は出ていませんか?』

『なるほど……。結論から言いますと、こちらから確認できる範囲に変化が表れています』


 おぉっと。……え、既にやらかし案件が発生してたか!?


『と言っても、悪性のものではありませんのでご安心を。儀式で使われていたという場所や道具に残っていた消えかけの魔力が励起されているぐらいです。どうやら一部が完全に消えていたようで、今急ぎ確認しています。なので、その変化を誘発したのであれば是非そのまま続けて頂ければと』

『あ、はい。分かりました』


 どうやらそういう感じだったようだ。あー良かった。

 ……いや待て、良かったのか? 消えかけの魔力が励起っていうか、むしろ注がれ直しているだけでは? え、それ大丈夫? 儀式が発動しない? いやそりゃまぁ、封印全体に魔力が回ってるんならこの持っていかれ方も納得なんだけども!


『それと、1つご報告があります。どうやら大神官さんが確認して頂いた限り、その谷の中にあるものは全て封印の一環であり、封印内部に影響したとしても、起きれば忘れる夢程度のものだろう、との事でした』

『……え。いえ、確かに、この骨どこから来たんだろうとは思っていましたが、これも全部ですか?』

『はい。例外は恐らく、精霊結晶ぐらいではないでしょうか。そのほかの詳細も現在確認中ですが、現在起こっている魔力の励起によって大変調査が捗っております』

『調査が捗っているならいいんですが、これ、儀式が起動したりはしませんよね?』

『その確率は相当に低いかと。封印を維持、あるいは更新する為には、そのタイミングと、祝詞を含めた特定の行動が必要なようですので。魔力だけでは起動しないと思われます』


 なら大丈夫かな。たぶん。恐らく。

 ……そうか。夢扱いか。って事はたぶん、話を聞く事自体は出来そうな感じだな?

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