第904話 28枚目:リザルトとお知らせ

 後になって分かった事だが、最初の大陸で隠密行動をしていたヘルトルートさんには、どうやら分身系のスキルを使いこなせるようになったルール(本体ではない)が同行していたらしい。

 ……なるほど。ルールなら相手の許可がない空間でも、至近距離まで近づいたら資料の類の内容は丸ごとコピーできるし、煩雑な資料の山から必要な物を検索するとか得意中の得意だからな。

 つまりクランハウスの私の島に、主に人間種族の機密書類が山ほど保管されてるって事にもなる訳だが、まぁ、うん。今更だな。頭は痛いけど、もうどうしようもない。一番最初にゴリ押しを提案したのは私だし。


「まぁ、順調に行くのは良い事ですよね……」


 もしかしなくても、ヘルトルートさんって割とお茶目でノリの良い性格してるな……? と何となく察しながら、私はせっせと訓練場で武器スキルのレベルを上げ、プレイヤースキルとしての武器の扱いにも慣れる為の訓練を続けている間に、イベントは終了した。

 イベントの報酬? 建材だよ。いや、確かに、何が一番必要? って言ったら、空間の歪みや前後のフォローをしてもらう為の神殿とか、封印を解いた後の防衛戦に使う砦とかの建設に使う為の、大量の建材になるけどもね?

 けども、だからってさぁ……? と、思う程の建材と、文字通り気持ち程度のイベント限定装備が手に入った訳だが、それはともかく。


「さて……いよいよ本番ですね」


 システムアシストにかなり頼る形にはなるが、武器の扱いも不格好の域はどうにか脱した頃にイベントが終わり、その終わった直後に次のイベントのお知らせが来た。大体分かっていたが、12月のイベントは丸1ヶ月を使う長期イベントになるようだ。

 まぁ年末年始の都合もあるだろうし……と思って見たのだが、どうやら微妙に毛色が違う。どういうことだ? と思いながら、やはり合流してくれたフライリーさんと一緒に読み進めることしばらく。


「……運営大神はまた……」

「なんつーか、いつも通りっすねー……」


 そうくる……? と、ちょっと頭を抱えたくなった。いや、うん。予想通りだ。予想通り、不思議な土地にある封印の解除と、そこからの防衛戦なんだ。予想通りなんだ、けど。

 どうやら、な。あの、封じられた竜都に出没していた、ドラゴニアン(仮称)のように、封印に関係しているのがほぼ確定の、不思議な種族が、各不思議な土地にいるそうで……彼らでないと、封印の解除は出来ないそうなんだ。

 だから、イベントとしては、2段階に分かれている。12月いっぱい、その不思議な種族の説得と協力体制の構築にかかり、年末の特殊ログイン時間で封印を解除、1月いっぱいで防衛戦、なんだが……とりあえず、バックストーリーを確認してみよう。



 異世界からの侵略者に対抗する為の戦力、その増援として目星をつけた、封じられた土地。本来ならば最初の侵略を食い止める為に幾柱かの神が封じられていたそこには、神と共に町や村、そして英雄が封じられている事を、神々は知っていた。

 召喚者に託宣を下し、混乱の中で曖昧になっていたその場所と、詳細を確かめ直した神々。だが、と神々が疑問に思ったのは、その封印を維持してきた存在に、全く覚えがなかった事だ。

 封印が今日この日まで維持されてきたのは、彼らの存在があってこそである。その功績は認めつつ、しかしどこから現れた存在だろうと首を傾げる神々。だが、既に事態は急を要する。なので神々はその疑問を一旦横に置き、召喚者へ次なる託宣を下すのだった――。



「横に置いてんじゃないですよ、そこで」

「ほんとにそれっすよ」


 おいこら。と、ちょっと思うくらいは許してほしい。正体不明のまま説得にかかって協力体制築かなきゃいけないのか。いやまぁ、どうせ説得の際に分かるだろうとかそういう事なんだろうけど、流石に丸投げが過ぎないか。

 一応ガイドラインというか、指針の提示という形か、封じられている英雄や町や村と同じ種族、もしくは同じ神を信仰していれば意思の疎通は可能という公式発表が出ている。……気休めでしかないがな。つまりこれって、言葉は通じますよ、ってだけの話だろ。


「意思の疎通が出来る、イコール、話が通じる。……と言う訳ではありませんからね」

「そういう事っすよね……。一応、封印に対応した神様の力があれば、入るだけは入れるみたいっすけど」

「入った所で言葉も通じなければどうしようもないでしょう」

「もしくは護衛系の戦力って事っすかねぇ」


 その可能性はあるな。主に竜族の人達が抑止力として動く的な意味で。……封印の中身はともかく、封印を維持していた方は1万年経っているだろうから、実際どれくらいの話がどんな感じで伝わっているかは分からないけど。

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