第852話 25枚目:報酬調査

 結構な間困惑していた女神様方だったが、どうやら「自分達では分からない」という結論を出したようだ。となると次に取るべき行動は、分かるかも知れない誰かの所に、この氷で出来たメイドさん(コスプレ風)を連れて行く、という事になる。

 検証班の人達に頼んで司令部に問い合わせて貰ったところ、次の「謎の設備」がありそうな場所の発見まではもう少しかかりそう、との事だった。これなら私が動いても問題なさそうだな。

 で、実際何処へ連れて行けばいいかという行き先の当てだが、女神様方曰く、自分達で全く分からないという事は、陸ではなく海の存在である事が多いのだそうだ。


「と言う事は、渡鯨族の街、というよりは……人魚族の街ですかね。あそこは例の時からの資料が残っていますし、信仰も引き継がれる形で残っていますし、何よりネレイちゃんがいますし」

「そうだな。で、問題はこの……人形? を運ぶ方法だが」

「……毛布を分厚く重ねた担架に乗せて固定して、エルルの背中に乗せるとかどうでしょう?」

「まぁそれぐらいしかないか」


 担架と毛布に関してはその場にいた検証班の人達に協力してもらい、全力でレイド戦をしている大陸東側及び東側海上を横目に見ながら人魚族の街へと移動する。いやー、雪と氷が無くなったら見つけやすいな。

 どうやら元々あった防壁は雪の中に埋まっていたらしく、そちらの再建も完了している。だからその外側にゆっくりと降りて、エルルは【人化】を解除したまま、私が待機してくれている召喚者プレイヤーの人達に事情を説明する。

 どうやら検証班の人達から司令部経由で連絡が行っていたらしく、さくっとスムーズに話が通った。そのまま何人か召喚者プレイヤーの人達に手伝って貰い、氷で出来たメイドさんの乗った担架と一緒に神殿へ移動だ。


「るみちゃー! おひさしぶり!」

「はい、お久しぶりです、ネレイちゃん」


 種族が違うからか、カトリナちゃんと違ってほぼ変わらないネレイちゃんとの再会を喜び、中へ案内してもらう。うん、ちょっと背が伸びたかな? それ以上に、白い肌は白い肌として、血色がよくなった感じがする。

 正気を取り戻した、というか、すっかり精神的に落ち着いて本来の穏やかで頼りがいのある先達に戻った神官さん達にももう一度事情を説明だ。そこで聞いた話によれば、どうやら神から直接という事こそ稀だったものの、陸でよく分からないとされたものが海神をまつる神殿へ持ち込まれる事はよくあったのだそうだ。

 逆に海でよく分からないとされたものをポリアフ様達の神殿に持ち込むこともあったそうなので、テキパキと祈りによる問いかけの準備をしてくれる神官の人達。


「これがどうしてあぁなっていたのやら……」

「神の不在って言うのはそれだけデカいって事だよ」


 ……若干現代竜族の抱える問題についての難易度が上がった様な気もするが、まぁそれはともかく。

 海神の方も元々の信仰基盤があった事と、渡鯨族の復活があった事、火山の女神を抑え込む為の抑止力(サブ)として捧げものが集まっていた事で、それなりに力は取り戻している。さくさくと儀式は進んでいき、ネレイちゃんが巫女として問いを投げると、あっさりと答えが返って来た。


「……。エルル、聞いた事あります?」

「…………噂話ぐらいには……?」


 どうやら人魚族の人達にはなじみのある回答だったらしく、そのまま氷で出来たメイドさんを元の形に戻す方向へと動いていった。ここまでくればお任せしていいだろうって事でちょっと蚊帳の外になっていたんだが、その答え(?)に対する私とエルルの反応はこんな感じだ。

 と、言うのもだ。どうやら海神曰く、この氷で出来たメイドさんは、本来「船精」と言う存在らしいのを、こう、よく分からん力で捻じ曲げられてこうなっているらしい。

 まぁそもそも「船精」っていうものの存在がよく分からない訳だが、神官の人達を始めとした人魚族の人達の動き方を見ると、かなり重要もしくは貴重っぽいんだよな。


『すみません、ちぃ姫さん。今宜しいでしょうか?』

『はい、大丈夫ですよカバーさん。例のメイドさんも、正体が分かってその対処に人魚族の皆さんが動いてくれていますし』

『それは幸いです。そしてこちらからの連絡ですが、右前足の根元と思われる場所で同じような冷気を放つ扉が確認されました』

『分かりました。攻略に向かいます』


 これは誰かに聞いた方がいい、よなぁ……と思っている間にウィスパーの着信。お仕事の時間だ。

 ……まぁその内、司令部経由で『アナンシの壺』に情報が載るだろう。たぶん。恐らく。

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