第829話 24枚目:真の最奥

 ギミックを解いたのはルミだったが、どうやらその時点で部屋に居た全員にボス部屋(?)のクリア報酬が支払われる仕様だったらしい。一緒に居た元『本の虫』組の人達も含めて、インベントリに見慣れたパネルの欠片が入ってたからね。

 ちなみに部屋を出入りする事でボス部屋(?)の状態がリセットされる状態は継続していたが、一度欠片を手に入れた召喚者プレイヤーには再度のドロップは無いらしい。まぁそりゃそうだ。

 ボス部屋(?)クリアの一報を聞いて、【酷寒の凍檻・獄】に移動していた召喚者プレイヤーが急いで戻ってきているらしいが、その動きはさておき。


「ははは、何ですかねこの打って変わってのモンスターまみれの階層は」

「一番最初の群れより厳しいんだが……っ!?」

「絶対こんな数この空間に入り切る訳ないじゃないかっ!? どこから追加されてるんだいっ!?」

「たぶんそこらから湧いてるんじゃないですかね」


 もちろん私は既に見つかっていた隠し扉を抜けて、真の最下層へ突入していたのだが……いやぁ、これは酷い。そこそこ長い階段を下った先で、遠くに十字路が見えるかな? と思っていたら、モンスターの途切れない群れがお出迎えなんだもんな。

 通路の幅も高さも一気に倍近く広がっているから、【酷寒の凍檻・氷】の最初で遭遇した、自爆系モンスターの群れと同じように対処しているが、終わりがマジで見えないんだよな。結構強いらしく、しのぐエルルとサーニャも割と厳しそうだ。


「というか、たぶんここ、環境的にも一段厳しいのでは? 私が寒さを感じるって時点でおかしいと思うのですが」

「あっやっぱりおかしいんだ!? 寒いなとは思ったけど!」

「そうかも知れないが、どうにもならないだろ!」

「いえ、なりますよ。一度退ければ。寒さ対策の装備にはまだ予備がありますから」

「「それを先に言え(言って)!?」」


 という理由もあって、遠くに見えた十字路を塞ぐような形で、大規模捕縛魔法を叩き込む。残ったモンスターを片付けたら、私がルミを抱えて一旦撤退だ。しかし、これは厳しいな。

 今までの事を考えれば、モンスターの数に限界はあると思う。あると思うし、リポップの間隔も相当に長いだろう。それでも、今まで一切モンスターが出てこなかった分、どれだけ溜め込まれているのかは未知数だ。

 もちろんこの調子で大規模魔法を連発する訳にも行かない。クールタイムの問題もあるし、閉所だから魔法自体が邪魔になっちゃうんだよね。ぶっ放し系だと衝撃波とかの被害で自滅しかねないし。


「まぁだから、何とかあの見えた十字路までは進んでおきたいですよね。3手に分かれた上で補給と交代がスムーズに出来るようになれば、まだ何とか出来ると思うのですが」

「……。あぁ、そうか。他の召喚者がこっちに戻って来てるんだったな」

「確かに、少数での集団戦には慣れてたみたいだけど」


 と言う訳なので、一旦司令部に戻って報告と【王権領域】で相互連絡の補助だな。そのまま出来れば攻略に関する指示も出して貰おう。




 私がボス部屋(?)のギミックを解いたのは、日曜日の午後のログイン時間が半分ぐらい経った時だ。そしてダンジョン【酷寒の凍檻・封】を通り抜けるには、事前にちゃんと鍵を揃えてさえいれば1時間もかからない。

 なので「獄」に行っていた召喚者プレイヤー達が戻ってくるまで然程かからず、司令部が改めて大人数前提の作戦を考えてくれて、再突入だ。まぁ作戦と言うか、各召喚者プレイヤーの配置と相談・説得と言った方が正しいかも知れないけど。

 やる事は簡単だ。まず私がその火力で(ちょっともったいないが落ちている素材も含め)通路を雑に一掃。続けて魔法使い系の召喚者プレイヤーが息を合わせて、私が見たという十字路を封鎖。そこから全員で十字路まで行って、3方向に分かれて迎撃、だ。


「まぁ最適解はそうなりますよね。奥がどうなっているかを調べるにも、あのモンスターの群れをある程度減らさないといけませんし」

「しかし、何で急にあんな群れが出てきたんだ?」

「さぁ? 試練だって言うなら、むしろ今まで出てこなかった方がおかしい気もするけどね」


 ちなみに司令部というか元『本の虫』組こと検証班は、「ダンジョンという形をとるためのつじつま合わせ」じゃないかと推測していた。……確かに、元々が空間の歪みを消費する為の試練、だもんな。主に戦闘力が必要な形の。

 今回みたいなギミック型という一部例外はあるにしたって、ギミック解除に失敗したらモンスターが出てくる、みたいなペナルティ扱いでも出現してたって言うんだから、一応ダンジョンの形をしているならモンスターという要素が必要になるのか。

 ……単純に、アラート罠の再現、っていう可能性もある気がするけど。結局あれが一番最悪だし。

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