第821話 24枚目:一部合流

 とにかく情報が足りない。と言う事で、部屋の隅に移動してお休みモードに入ろうとした動物神に、ワイバーンステーキを追加でお供えして、遠吠えを放ってもらった。これでこの周囲に居る召喚者プレイヤーは、少なくとも部屋の様子ぐらいは見てくれる筈だ。

 掲示板もウィスパーもメールも沈黙しているので、インベントリに入れておいたおやつを食べながら待つことしばらく。


「さてこの部屋は……おや、ちぃ姫さん」

「お嬢!」


 やって来たのはカバーさんとエルル、及び5人の召喚者プレイヤーと熊の動物神だった。全員見覚えがあるな。やっぱり全部中で繋がってるパターンだったか。

 そこからカバーさん達の話を聞いてみると、どうやらカバーさん達も合流までに何度か条件が付いた部屋を通ったそうだ。部屋の名前は全て「勾留室」だったようだが、その内容は場所によって違ったらしい。

 ちなみにエルルは部屋のギミックが起動しても特に条件が課される訳ではなく、最後まで部屋に残っていても普通に出れたという。うーんこれは、住民の仲間にお任せした方が早いパターンだろうか。


「……で、実際お任せしたら今度は住民限定の条件に引っ掛かりそうな気がするんですよね」

「今までの事を考えると、有り得るでしょう」


 そして、その部屋の1つに居たのが今一緒に居る熊の動物神だったようだ。……入ってきた時は気付かなかったが、熊の動物神の背中に召喚者プレイヤーが1人しがみついていた。

 どうやら最後の1人になってから動物神にお供え(主に食べ物)をすると、部屋から出してくれるというのは共通らしい。ただし効果は動物神に触れている間だけであり、離れると5秒ほどで元の部屋に戻されるそうだ。

 5秒……と思いながらこの部屋へ一緒に来た召喚者プレイヤーを振り返る。どうやらあちらも同じことを思ったらしく、私が狼の動物神をブラッシング及びお供え(ワイバーンステーキ)してからの流れを話し始めた。


「なるほど。この部屋の中央に立った状態で遠吠え……というより、咆哮を浴びたと」

「その時私は入り口側の部屋の角に居ましたが、遠吠えと共に魔法陣が光って、何か白くぼんやりしたものが通路へ吹き飛ばされていくのが見えました」

「ほう」


 話が現在に追いついたところで、私からの追加情報だ。そしてカバーさんは早速この部屋の魔法陣を調べ始めた。まぁ明らかに何か特殊な部屋だもんな。

 たぶんだが、私が見たあの白くてぼんやりしたもののせいで部屋から出られなかったんだろう。で、その効果を動物神はある程度打ち消す事が出来る、というのも確定だ。

 後は、あの白くてぼんやりしたものを引き剥がす、という効果が、動物神の咆哮とこの部屋の魔法陣、どちらの効果かって事だな。たぶん、両方必要なんだろうけど。


「ところでエルル。狼の姿をした動物神は、遠吠えで周囲に地形を伝える能力を持っていましたが、熊の姿をした動物神には何かありましたか?」

「今の所そういうのは無いな。ここまで一度もモンスターと遭遇してないし、あの様子を見る限り、背中に乗せられる人数には余裕がありそうだが」


 なるほど。戦力としてのカウントか、或いは一度に部屋から連れ出せる人数が多いか、か。どちらも結構重要だな。違う能力で、必要な場面が来てないから判明してないだけかも知れないけど。

 そうこうしている間に、カバーさんはざっくり魔法陣を調べ終えたらしい。仕事が早い。そして効果についてだが、やはりあの白くてぼんやりしたもの……仮称、勾留フラグを剥がす事だったようだ。

 だがこの魔法陣だけだと勾留フラグを剥がすにとどまり、吹き飛ばすまではいかない、つまり、魔法陣の効果が終わればまた部屋に戻される状態になる、という事らしい。


「なので、勾留フラグを剥がした上で動物神様の声を浴びせる事で、完全に部屋から脱出した状態になる、という事ですね。さっそく検証しましょう」


 まぁ、ある意味丁度良く、まだ1人勾留フラグが憑いてる人が居るからね。……誤字じゃないぞ。幽霊っぽかったし。

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