第822話 24枚目:探索進捗

 咆哮を浴びせる時に耳を塞がなかった召喚者プレイヤーの聴覚障害は除き、特に問題なく仮称勾留フラグを剥がす事に成功した。ここまで召喚者プレイヤーを運んでくれた白熊さんには私がブラッシングをしてお礼する。

 そしてここからの動きだが、合計7人になった召喚者プレイヤーは2手に分かれて既に分かっている地図にある小部屋を回り、部屋から出られなくなっている召喚者プレイヤーを救出して回るらしい。熊と狼で、動物神が2柱いるから2手に分かれる、との事だそうだ。

 で、私とカバーさんとエルルは3人で未踏破領域の探索となる。そうだね。少なくとも今まで確認できているパターンの勾留室なら、エルルが居れば攻略は容易だからね。こちらも召喚者プレイヤーに仮称勾留フラグを伝えつつ、他にいる筈の動物神を探すのがメインとなる。


「地図だけは使えて良かったですね。【測量】も持ってはいますし地道にレベルを上げてはいますが、利便性では絶対に勝てませんし」

「そうですね。他の方との共有等も考えると、やはり加護特典と言うのは大きいです」

「手書きの地図よりは絶対に見やすいもんな」


 と言う訳で、3人で探索開始だ。途中で通路が合流した小部屋を何か所か通過したが、召喚者プレイヤーも動物神もいない。一応念の為、私とカバーさんは1人ずつ小部屋を通ってるけど。一度に複数人の召喚者プレイヤーが部屋の中に居る事、が、ギミックの発動条件でほぼ確定だからね。例外はあるかも知れないとは言え。

 一応あの仮称勾留フラグを剥がせる部屋で合流した時にオートマップを共有し、2手に分かれた召喚者プレイヤーの人達とは違う方向を選んで進んでいるんだけど、何にも見つからないな。


「……。外から見た時の見た目を参考にするなら、もしかして奥の方に来過ぎたりしてますかね」

「有り得なくはありませんが、それならそれで端を確定してしまうべきでしょう」


 なので途中、そんな事を言ってみたが、カバーさんからの返事はこうだった。なるほど確かに。見た目はドーナツ状だったけど、内部もそうとは限らないもんな。そうかも知れないけど。外から見た時の見た目が当てになるかどうかを確定するのは大事だな。

 しかし広いな、このダンジョン。脱出方法も分からないし、ログイン時間中に何とかなるか? ……エルルとは合流できたから、後の事を丸投げする事になりそうだな。




 そこからログイン時間を使い切るまで探索を続けたが、見つかったのは召喚者プレイヤーが1人と動物神が1柱だった。マップが死ぬほど広いというのが分かったのが一番の収穫だろうか。

 見つかった動物神は、いつか「第五候補」への伝言を頼んだ小型のダチョウみたいな鳥の姿をしていた。鳥、つまり飛べるって事で脱出の期待がかかったのだが、どうやらこちらは5分に1回(要お供え=ご飯)使える、一方通行でメールを送る能力だったようだ。

 だがそれはそれでありがたいので、文章作成に時間制限がある中でカバーさんが指が霞むほどのタイピングで現状分かっている事をメールの文章として書き切り、分かっているオートマップに注釈までつけてパストダウンさんへと送信していた。


「これで後続の召喚者プレイヤーが突入する際には、可能な限りの動物神の協力と、捧げものの用意をしっかりとしてくれる事でしょう。消耗品の類も、脱出できない前提で多めに持ち込んでくれる筈です」


 こういう非常時には本当に頼りになるよね。有難いことだ。

 ちなみに、私のログアウト場所は念の為仮称勾留フラグを剥がす事が出来る部屋の端で、ログアウト直前に【王権領域】を展開してみた。その時鳥の姿をした動物神は一緒だったが、嫌がりはしなかったのでセーフらしい。

 ……が、どうやら【王権領域】を発動している中で特殊能力を使って貰うと、鳥の姿をした動物神の場合、入力をする事の出来る制限時間がぐっと伸びていたらしい。つまり、動物神の特殊能力、このダンジョンの制限に抵抗する力が底上げされるって事だな。


「神自身にも効果が出るとは思いませんでした」

「と言うより、信仰値依存のスキルである為に、これそのものに異界の理へ抵抗する力があるのではないでしょうか。抵抗が少ない場所で更に抵抗する為の力を使えば、より効果が高くなるでしょうし」

「というか、始祖以外にも効果があるんだな、この領域」

「メインではないとはいえ、信仰自体はしていますからね、ポリアフ様達“雪衣の神々”の皆様も」


 それでいくと期待がかかるのは、狼の動物神の特殊能力だろうか。一定範囲の地図を、合流する前に共有できるのは強いし。

 ……あぁもう、何でこのタイミングでテストが来るかな! 言っても仕方ないのは分かってるんだけど!

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