第738話 22枚目:対策の結果
それなりに日が傾いてきたところで、ようやく黒い線が水門と同じ幅まで広がった。……の割に橋っぽいものが見えないんだが、どうなってるんだろうな? とりあえず、これ以上光の柱を追加するのは無しだけど。
どうやら黒いのに捕縛魔法を放っても、“影の獣”を捕獲する事は出来ないらしい。なのでサーチライトを使って、追加された箱の中に入り込む“影の獣”を消し飛ばす係だ。
時間経過で光の柱が消えていくので、そこにエルルとサーニャが巨大な氷の入れ物を置いていき、それを私が順番にサーチライトで照らしていく格好となる。ちなみにどうやって回収するかと言えば、円柱型をしている入れ物の両端にロープを結んで、水門の脇にずらしながら引っ張る形だ。
『……重さが凄まじい事になると思うんだが、本当に動かせるのか?』
『ボクらでも無理なもんは無理だよ?』
「まぁそこは、光が届きさえすれば軽くなる筈ですし。最悪繋げた入れ物全部を捕縛魔法で固め直せばなんとか行けるでしょう」
『またそうやって魔法を使いまくる……!』
『そもそもの強い光だって姫さんがやる事だよねそれ!?』
なお、“影の獣”ことレイドボス「伸び拡がる模造の空間」は透明なものに干渉できないという事で、5日目の夜を凌ぐためのシェルターとして、巨大な氷をくりぬく作業が外海の上で進行中だ。この氷ももちろん私が作ったので、そこでも既に怒られている。
隙間があったらそこから入り込んでくる可能性が高いので、入り口となる場所を一か所に絞り、そこを徹底的に防御する事であの全面不可避攻撃を耐える、というのが司令部の作戦だ。まぁ、仕方ないな?
それに直近の問題は、この大分傾いている太陽が完全に落ちてからの話だ。一応出現時点では島から十分に離れれば問題無い筈だが、それでも入れ食いポイントである水路に近寄れなくなるというのはかなり痛い。ダメージ効率的な意味で。
「まぁだから、夕方にこの入れ物を回収した後、もう一度放り込んでみる事が計画されているんですけど」
『まさかそれもあって繋いだのか!?』
「あると思いますよ? 少なくとも1個ずつ放り込むより、投入も回収も楽でしょうし」
『で、それはボクとエルルリージェの仕事なんだね。護衛をしてる自信が無くなって来るよ』
その辺は、召喚者なんて外部の存在に命運を託さなきゃいけない程切羽詰まった状況にした元凶に文句を言って欲しい。具体的には異界の『王』に。後はそもそも大神から「大きな傷」と認定されるほどのやらかしをした古代人に。
まぁ準備の状況としては順調だ。何せ勝負は今夜からだから。レイドボスになっても入れ物に入り込む性質が残れば良し、残らなくてもシェルターとして使えるから、どっちでも問題は無い。
あのでっかい胴体(?)部分に向かって、ステータスの暴力らしく、特大の空間属性の封印魔法を叩き込むことになってるんだ。文字通りの全力で削ってやる。
で、3日目の夜。
[件名:イベントメール
本分:イベント条件が満たされたため、レイドボスが出現しました!
このレイドボスは莫大な体力と特殊能力を持っています。
プレイヤー全員で力を合わせて退治しましょう!
※レイドボスがイベント期間内に倒されなかった場合、通常空間に出現します
※出現する際、本体及び特殊能力の状態は引き継がれます]
前回と同じタイミングで、全く同じ内容のイベントメールが届いた。やはりレイドボスという判定になるには、あの超巨大な積乱雲を全て呑み込む必要があるのかも知れない。積乱雲を呑み込むことで、どこかへ隠れられなくなるのかも知れないけど。
今回は最初から全員揃って島からがっつり距離を置いていたので、レイドボスの出現に巻き込まれた人はいなかった。まぁ来るのが分かってる不意打ちは避けれて当然だよね。一部話を聞いていない論外さんは除く。
推定水路の幅が水門と同じになっていたからか、それとも単に攻略が進んだ状態で体力が減っていたからか、気持ち吹き上がる時の勢いが強かったような気もするが、まぁ、距離があれば当たらないし。
『……で、放り込んでみたが、これは成功って事で良いのか?』
『わざわざ海岸に並ぶようにって注文だったよね。これもあって紐で繋いでたの?』
『押すだけでいいなら、確かに持ち上げるよりは楽だったが』
そして流石にエルルとサーニャも近寄るのは危険って事で、吊り橋みたいな形になった巨大な氷の入れ物の列を、島に対して横向きに海に浮かべ、そこから海岸まで押していくという形で「伸び拡がる模造の空間」に触れさせる事になった。
結果はと言うと……ぞぞぞぞぞ、と言う感じで、入れ食い再びになっている。うん。ひとまず良かったというべきだろう。これがダメなら、数を減らすのがどう頑張っても間に合わなかっただろうし。
なお氷の入れ物だが、私が作ったものだけじゃ無く、他の人が作ったものも海岸線に紐を結んで転がされている。そちらも問題無く入れ食いのようだ。入れ物自体が透明な壁になるので、しっかり灯りを付けた状態なら取り込まれる危険もまだ低い。
「種でいっぱいになったら流石にもう入り込もうとしないようですから、その時は結んだ紐を引っ張れば回収も容易ですからね。種はそこまで重量が無いので、氷の箱なら海に浮きますし。体力と言う名の数を削るのが順調で何よりです」
まぁそれはそれとして、特級戦力のお仕事……最大火力による封印魔法を叩き込んで、見た目の体積をごっそり削ったらどうなるのか、っていうのもやるんだけど。
もちろん空中に光る床と光るドームを設置した状態で、いつでも逃げれるように高高度から、って感じで、がっつり対策はするけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます