第732話 22枚目:空間対処
柱の中にあった、壁中にレバーどころか天井や床からも無数のレバーが張り出している部屋でわいわいやっていたカバーさんにスクリーンショットを見せて、水路の反対側の状況を報告、そこからは他の
ほら。私のインベントリはステータスと
入れ食いポイントだけあってものすごい勢いでインベントリの中にある「人工空間獣の種」が増えていく。……うん。大丈夫だよな? 種がインベントリを器として認識はしないよな?
「とは言え、流石に総出でかかっているだけあって、多少水面というか、全体の体積が減ってきた気がしますね」
「えーまさかそんな……あれ!? ほんとだ!? 最初は溢れそうな程ギリギリだったのに!?」
「召喚者の集中力すごいな……」
水路に、文字通りなみなみと満ちていた“影の獣”だったが、現在は水路の縁がほんの少しだが見えている。つまり、それだけ水面(?)が下がったって事だ。この体積がそのままレイドボスの体力だと考えると、入れ食い万歳だな。
ただし、このペースで削り切れるかと言うとちょっと難しいというのも本音だろう。もちろん地上では今も箱の作成と、その箱で組み立てられる砦と言うか塔の建築は進んでいるだろうが、ここからまだ水路本体と、もしかしなくても外海側にもここと同じような空間がある訳だし。
光属性が有効なのは分かり切っているが、エルルからの話で、単に攻撃するだけでは倒しきれないというのが分かっている。つまり、いくら枝葉を削った所で、その核となる種が減らなければ、根本的な解決にはならないのだ。
「で、その種の回収ペースが、このままだとちょっと間に合わない気がするんですよね。いつもの事ですけど」
「ヴォルケもネーベルも、既に協力は取りつけてるしな」
「でも、他の場所の召喚者も動いてるんだよね?」
「このステージが間違いなく一番進んでるという確信があるからですよ。他の場所には、こんな決戦兵器はありませんから」
もちろんサーチライトの事だ。今回のステージは、これがあるからさくさくと水門(推定)の根元まで行けたというのは間違いない。つまり、無ければここまでは進められてないって事だ。
今は8回目ステージの2日目の昼、の、半分を過ぎたあたりとなる。それで水路の、内海側の一部の、縁がようやく見えてきた所、というのは……うん。やっぱりちょっと、ペース的に間に合わないのでは?
「もちろん、今回の頑張りによって、次により多くの
「ただ?」
「これまでと違って、災害と称された元凶が出現する事が分かっています。あれが姿を見せた状態で、その根元で、こうも悠長に回収をしていられるか? というのは、疑問なんですよね……」
「……そう言えばそうだな。流石にあれだけの精霊獣を生み出す雲を呑み込んで、形になるんだから……その足元に潜り込むのは、難しいか」
「外に出て来たら、その分だけ叩きやすくなると思うよ? 太陽の光も使えるようになるし」
「単に叩くだけだと倒せないんだよ。スライムの表面をいくら削っても死なないだろ」
「……。あ、そういう事か! 核を狙わないと死なないな!」
「で、その核がこの種で、だから今一生懸命回収してる訳なんですよね。その上で回収しきれなさそうな気配がするので、どうしたものかと考えているんです」
そういう事なんだよな。サーニャがちょっとうっかりしているのはいつもの事だ。なお、フリアドにおいてスライムは「基本的に弱いがレベルが上がると大化けする」という扱いになっている。ついでに言えば普通に居るのはモンスターで、動物と同じカテゴリのスライムは超珍しい。閑話休題。
そこまで説明して、うーん、としばらく考える姿勢のサーニャ。何か提案があるならカモン。手詰まり一歩手前だから。求む、打開策。
「……あんまり強い魔法を連発するのは良くないから言いたくないんだけど、姫さんがこの水路の中身をガバッと一気に封印して、外に持ち出して太陽に当てればいいんじゃないかな」
「封印は出来ますけど、問題はそれだけの重さをどうやって持ち上げるかと、この大きさを通せるだけの通路が開いてないって事なんですよね」
「そっかー。それじゃあしょうがないね! 普通にやるしかな」
「しかし広範囲を直接封印は良いアイディアです。もしかしたら“影の獣”の影響がざっくりカットされて、水門のこっち側の空間異常が解消するかもしれません。カバーさんに相談して来ます!」
「姫さん!? あっちょっこんな時だけいつも以上に早い!!」
なるほど。封印魔法を封印魔法として使うって事か。確かにあのエルルが教えてくれた黒い箱の魔法でも、空間属性の封印魔法で根切り()をしないと持ち上げられなかったもんな。それを考えると、この水路でも同じことが起こる可能性はそれなりにある。
それでなくても何処かへ逃げたりすることが無くなれば、そのままサーチライトで照らしてしまえば種だけになるんだし。一応周りに影響が出そうだからカバーさんに相談はするけど、ナイスアイディアだサーニャ!
「…………思いついたが、お嬢に言うと絶対やるから黙ってたんだよな」
そんなエルルの呟きなんて聞こえてない。聞こえてないったら聞こえてないんだ。
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