第718話 22枚目:原因の居場所
で、夜。
流石に慣れたもの、と言うべきか、大多数の
私達(「第一候補」達も含む)はエルルとサーニャの背中に分かれて南の空の上である。他の
「単純にスキルかステータスが足りないんでしょうけどね。ここまで高く飛ぶには」
「【飛行】も【環境耐性】も、かなり地味で根気のいる修業が必要ですからね」
主に検証班の頑張りのお陰で大分スキルを育てる効率の良い方法っていうのも完成してきたみたいだけど、それでもやっぱり時間がかかる部分はどうしても時間がかかる。その辺はもう、仕方ない。そういうゲームだから。
だから通常スキルがマイナススキルとして最初から入っている魔物種族のステータスの伸びはいいんだし、最初が楽な分だけ後で苦労するのは予定調和ってやつだ。つまり、いずれにせよ苦労はしなきゃいけない。
まぁそんなステータス及びスキル事情はともかく、夜の地上の様子だ。今までの1日目の夜は“影の獣”によって、宿光石の大岩の周りを残してびっしり覆われていたが、今回はその源となった不自然な谷が無くなっている。じゃあどこから出てくるのか、と、島の南に当たりを付けて観察していた訳だ。
「で……まぁ、そうなりますよね」
複数人数で魔法的照明弾が空高くへ打ち上げられ、人間種族でも割とはっきり見える状態になった南側の森。本来は内海と外海を繋ぐ水路がある筈の場所から、黒いものが吹き上がるように飛び出してきた。
吹き上がった線のような部分は森の木より高く吹き上がったが、それ以降は木の根元を這うようにして他の場所へと広がっていく。同じ調子で山も登って行って、内海へと流れ込んでいった。
……しばらくすると光の柱を設置していた穴からも吹き出し始めたので、どうやら南側に開けた穴を通っていったようだ。
「この光景を見る限り、やはり現在器として機能しているのは水路の方のようですね。密閉された空間とは言えない筈ですが、もし水路の上を塞ぐような形で大きな橋が設置されていれば、そういう状態には近かったのかもしれません」
「なるほど。水路の幅や深さにもよりますが、船を使うよりいっそ落とし穴の蓋のような形で通れる場所を作ってしまった方が早い、というのも有り得ますか」
「そうですね。埋め立てたりするよりは早く、船や飛行手段を使うよりは安全になるでしょう」
詳しくは魔族の人達に聞いてみなければわからないが、まぁ大体合っているだろう。水路の話が出て来てからどうやって器になったんだろうと思っていたが、そういう可能性もあったか。
そんな確認と会話をしている間も、地上へ“影の獣”は広がっていっている。内海に一度沈み、超巨大な積乱雲、もとい精霊獣を取り込もうとする動きも活発だ。ここは変わらないか。変わったら困るが。
「とりあえず、確認したい事は確認できましたし、捕獲にかかりましょうか。それなりに重量があると言っても、エルルやサーニャなら持ち上げられるでしょうし。何なら私やルウも手伝いますし」
『お嬢は大人しくしておいて欲しいんだが?』
「単純なステータスの話ですよ。変に知恵が回って、向こうから引っ張ってこようとする可能性だってゼロじゃないんですし」
だから「第一候補」達はサーニャに乗っているし、あちらにルウがいるのだ。「第一候補」も、通常の魔法ぐらいなら結構威力があるものを使えたはずだし、パストダウンさんもいる。
気球に乗らなかった
……
『……まぁ、それならとりあえず、他の奴が多い場所は避けるぞ』
「そうですね。人数が多いとやはり問題も起こりやすくなりますから。光が射す関係か、やはり西が不人気のようです」
「私達はどちらにせよ光魔法で吹っ飛ばすので、太陽の光はある程度無視できますからね。使えるなら使いますけど。ついでにあの雲に近寄って、ある程度精霊獣の救出も進めましょうか」
「罠や密閉度の高い箱の設置は、やはり森の中の方が多いですからね。内海に面した斜面なら、少なくとも1日目の時点ではほぼ何も仕掛けられていないかと思われます」
どのタイミングでレイド戦が始まるのかは分からないが、とりあえずそれは今じゃないらしい。なら、これまで通り種の回収と、精霊獣の救出を進めるとしよう。
……種をもう少し回収して、水路が出て来てからが本番かな。
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