第686話 22枚目:審議終了
え、その後?
……逆に聞くけど、怒ったカバーさんと敵対して、無事で済むと思うの?
そういう事だよ。
〈――判決。召喚者ジェイミー以下6名に、スキル【禁則:黙秘】及びスキル【禁則:弄言】を付与。また、召喚者ジェイミー以下6名が所属するクランに対する、クラン員に下された同様の判決による警告が3度を超えた為、クラン『フリアドジャーナル』の権限を一部剥奪。以上をもって審議を終了します〉
クランにまで言及されるって事は相当やらかしてたんだな……としか思えない訳だが、そもそも大抵の場合はマイナススキルを付与されると言っても1つまでで、2つ付けられる時点で相当に性質が悪いらしい。
詳しい効果としては、【禁則:黙秘】が「次回以降“天秤にして断罪”の神が行う審議では必ず明確な応答をする」という効果で、【禁則:弄言】が「事実の一部を隠したり特定の視点から見た一部だけを発信する事を禁止する」という効果らしい。
……うん。発言じゃなくて、発信なんだ。つまり、言葉だけじゃなくて文字でも口パクでもボディランゲージでも、ぜーんぶ正直に知っている事を話す(強制)事になる訳だな。どうやってかは知らないけど。
「両方マイナススキルですから、当然メインスキルからは外せません。もちろん今回のイベントでも、必ずスキル枠を使用する事になります。実働の無い罰と言う扱いな上、主に詐欺師に下されることが多いので、その後の信用にも大きく響くでしょう」
との事。……うん。かなり致命的では? 少なくとも記者としてはもう働けないだろう。もちろんクランの中で事務仕事だけをするなら問題ないかも知れないが、そもそもクラン自体にも影響が出ちゃってるしな?
「“天秤にして断罪”の神からの警告で剥奪される権限は様々ですが、3度を超えるとかなり重いペナルティだった筈です。特別な場所への立ち入り許可どころか、クランランクを一定以上に上げる事が出来なくなる場合もあります」
うん。これ、社会的には死んだのと変わりないのでは? もちろん『フリアドジャーナル』という看板を掲げている間は、という話ではあるんだけど。
……トカゲの尻尾切りになりそうな気がするなぁ。初心者に近い程やり直しのリスクは低いし、やり直すのにキャラだけか本体ごとかは関係ない。流石にどこぞの詐欺の手口みたいに、最初から切る為の実行犯を調達している、とかではないと思いたいけど。
脳波だけでBANする事も技術的には出来ると思うんだけど、それをしないのは何かしら理由があるんだろう。個人情報とか法律とかの辺りで。えらいひとに聞かないと分からないけど。
「ともかく。これで少なくとも、このステージの間は干渉してこないでしょう。人数もどうやら全体で10人少々のようですから、無視しても動きに支障はありません」
「なるほど。とりあえず
「そうですね。こちらも集まって状況を確認するのに少々時間がかかりましたし」
どうやら100mの組紐が出来上がったみたいだから、まずエルルが呼べるか確認してからかな。
タイミングが良かったのか、それとも前回の事で本当に呼び出しがかかると分かってくれたからか、前回に比べればあっさりとエルルを呼び出す事が出来た。やったぜ。……私の行方不明騒ぎで疲れていたから、とかではないと思いたい。
ともかく、1日目のやる事はほぼ決まってると言っていい。ただ私が(主に岩礁があったってとこで)覚えた違和感は、カバーさんもパストダウンさんも、何なら『ヒーローフラッグ』の人達も感じていたようだ。
私が島の上を通っていった間はそんなに違和感を覚えなかったのだが、どうやらその違和感を、地道な測量と言う形で調査したカバーさん達は、それっぽい違和感を発見する事が出来たらしい。
「恐らくですが、島全体の大きさが数%ほど拡大しています。また、島から離れる事が出来る距離も伸びているようです」
「午後には海洋調査に出ましたが、確かに前回までは確認されなかった岩礁を始めとして、いくつかの地形が増えていることが確認できました」
『なるほど。そして、最初に落ちている特殊な道具、というより装備も、数が増していたのであるな?』
「やっぱり気のせいじゃ無かったんですね、増えてるような感じがしたのは」
と言う事らしい。さて心当たりは、と言えば、まぁもちろん。
「“影の獣”の核こと、人工空間獣の種を回収した影響、と見るのが正しいんでしょうね……」
「そうですね。それに加えて、ちぃ姫さんがあの事故で、相当量を回収してきていますので」
だろうなぁ。という感じだ。しかしステージの大きさが変わるとは、全ステージで条件は同じというお知らせに反するのでは? と思った訳だが、カバーさんとパストダウンさんの推測によれば、始めから島が縮小された状態でスタートしている可能性が高いとの事だ。
つまり、1回目の1日目でも、条件が満たせれば同じ状態になるって事らしい。なるほど、
というのも、この島の住民である竜族の人達から聞いたところ、この島は本来、北を上とすると、視力検査に使う一部が空いた輪の「下」のような形をしているらしい。
「……結局バウムクーヘンですね?」
『まぁ、そうとも言うであるな。しかしそれでいくと、東や西にあの切れ目の入った山がある場合もありそうであるが』
「その辺りは空間的な調整が入っているのでしょう」
そして聞いた話によれば、島の中心には元々大きな山があり、ある時一際激しい噴火を起こして、島の南側を破壊すると同時に山自体も壊れ、今のような形になったらしい。
つまりは、カルデラ湖に近いって事だな。そのまま海に繋がっているから、カルデラ湾と言うべきなのかもしれないが。
まぁ話をしてくれた人たちにとっても完全に伝承で、口伝という形で様々な歴史を紡いでいる
「それでも、その湾の中心部分は外洋に比べて一段暖かいようですから、完全にマグマが無くなったという訳ではなさそうです」
「特殊な環境ではある為、内海にのみ生息する種もそれなりに居たようですね。現在はまだ確認できていませんが」
……何かありそうな気はするが、まだ追加のと言うか、続きのバックストーリーが分かって無いんだよな。魔族の人達の研究所の位置とかも同じく。
今回のステージでは、ほぼ全てのステージでそれなりの数の「人工空間獣の種」が回収されるだろうし、勝負はここからだなぁ。……まぁ、イベントとしては10分の3に入った所なんだから、こんなもんなのかも知れないけど。
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