第683話 22枚目:先行合流
私が出てくるのを待っているのか、それとも何か準備をしているのか、声だけは盛んに届くものの、推定『フリアドジャーナル』の
私は地図を見ながら灯り係、もとい宿光石に光を蓄積させる係だ。「第四候補」によるマイナーチェンジでランタンにシャッターが付けられて、照らす方向を限定できるようになったから非常に便利である。
既に組紐を作って欲しいというお願いは伝えてあるので、多分その内出来るだろう。と言う事で、
『ふむ。誰か来るようであるな』
「森から来た方からなら大丈夫だとは思いますけどね」
カーリャさんが探知して、地図を使って見せてくれている周辺の
そしてさほどなく、私の良い耳にも通路を歩いてくる足音が聞こえて来た。相変わらずこちらを質問攻めにしてくる声は聞こえているし、正直うるさいが、方向が違うのであれば聞き分けるのは難しくない。
多分大丈夫だろうとは思うが、まぁ一応警戒はしておこうか、と気合を入れた所で、広場へと姿を見せたのは。
「おや、ちぃ姫さんだけではなく大神官さんもおられましたか」
『パストダウンであったか』
「えぇ。「第一候補」の初期地点がここだったようです」
自称と他称の両方で「第一候補」付きとなっているパストダウンさんだった。『
とりあえず事ここに至る経緯を説明する。岩礁地帯についてはオートマップに記載があったので、そちらも併せてだ。コミュケーター、さんについては簡単に、むしろ話を端折ったが、それでも十分に伝わったようだ。
「やはりですか。以前から勢い任せで配慮に欠けた取材交渉が目立っていましたので、既に要注意リストには入っていたのですか」
「既に入っていたんですか」
『既に入っていたのであるか……』
訂正。既にマークされていたのが、今回の事で黒に確定したらしい。まぁ自業自得なんだけど。
……これ多分、『アウセラー・クローネ』や、『可愛いは正義』に『巡礼者の集い』を始めとした同盟クランだけじゃなくて、「検証班の」ブラックリストに載ったんじゃないかな。まぁ妥当だろうなーとしか思えないんだけど。
実質この先やっていく事が出来なくなった事に関しては合掌しなくもない。どうか他の新人達がやらかしを控えて
「第三陣、下手したら第四陣ですもんね、彼ら。前回のレイドボスは環境が環境でしたから、司令部の実力を把握するのは難しかったでしょうし」
『戦場が実力によって分けられていたが故の弊害であるな。……まぁ、実際に指揮をとっている所を見ても、考えを改めるかと言われると、断言は出来ぬが』
「検証班でも時折「大看板は下ろしても大看板だ」という話が出る事がありますよ」
「でしょうね……」
『で、あろうな』
まぁつまり、フリアドにおける常識を知らないことに加え、『本の虫』という検証班クランの影響がないから、余計に好き勝手にしている……ように見える、という事だ。
……実際、『本の虫』が居なかったら、結構な割合でイベントが進行不可能になってたからな。あの理不尽さとそれをひっくり返した指揮能力は、確かに体感しないとなかなか分からないか。
ただしだからと言って自分の我をひたすら押し通すだけというのは駄々っ子と何も変わらない。
「あぁ、そうでした。直接あちらに向かう中にはカバーが居ますから、ちぃ姫さんは頃合いを見て合流して頂けないでしょうか。証言役として」
「証言役」
「はい。こんな事もあろうかと、私発案で、検証班は各自1つは“天秤にして断罪”の神より、審判の場を開く神器を携帯するようにしておりまして」
「……審判の神の神器ですかー……。いえ、非常に頼りにはなるのですが」
『本当に、いつの間に準備しておったのだ……。……しかも簡易審判ではなく、証言の真偽も判定出来る、上位の神器ではないか。“天秤にして断罪”の神官ではないものが手に出来る内ではほぼ最上位であるぞ?』
「新規参入者の流れを見て、必要ではないかと思いましたので」
まさしく、ドヤァ……。と得意げに楽しそうなパストダウンさんだが、「第一候補」が気づかなかったってどれだけ本気で準備をしていたのか。各自1つは、って事は、ボックス様の「異空の箱庭」のように、効果が一度きりの使い捨てタイプなのだろう。
ていうか、今さらっと「検証班は」って言ったな。って事はつまり、「検証班にとって」必要な提案だとみなされたって事か。すなわち、こういう問題児()が湧く事は、検証班にとっては想定の内だったって事だな?
…………どうしよう。あのやらかし新人達(「第四候補」が遭遇したグループも含む)が、仕掛けられていた罠に正面から飛び込んできたうっかりさんにしか見えなくなったんだけど。
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