第669話 22枚目:駆け込み開始
ざっくりと「第五候補」に推測を交えて説明をするととても納得してくれたので、早速準備に取り掛かる事になった。密閉度が高くて大きな箱となると、流石に素材そのままって訳にはいかないし。
とは言え使い捨てなので、強度はそんなにいらない筈だ。流石に“影の獣”も、自分達が落ち着けそうな入れ物を壊す事はしないだろうし。大火力で吹き飛ばすとは言え、後で壊すものだしね。
ちなみに肝心の種はものすごく丈夫なので、ほぼ何があっても傷つかないのは確認済みだ。何せ、私の攻撃力に耐えたんだから。
「不定形生物の核として考えるなら、ちょっと丈夫過ぎやしないかと若干思わなくもありませんが、これで火力の加減をしなければならないとかだと更に面倒な事になっていましたからね」
「植物の中で、種が一番丈夫って言うのはよくある事だしな」
と言う訳で、せっせと島中に箱を設置していく。島中、朝になっても引かない量の“影の獣”で埋め尽くされるのは分かってるんだ。なら、仕掛ければ仕掛けるだけ捕獲できるのはほぼ間違いないだろう。
“影の獣”は出来るだけ早く減らせるだけ減らしておきたいし、種ガチャは1つでも多く引いておきたい。このイベントは始まるたびに状況がリセットされる。だから、後半の人手が多い時に動ける限り動いて加速を掛けるのはとても重要だ。
あと個人的に、種ガチャから出てくる便利グッズがとても気になる。火を使わずにお湯が沸くポットとか、インクを変えなくても色の変わるペンとか現実にありそうなものから、勝手についてくる風船とか、回すと魔力の回復速度が上がる歯車とかフリアドならではな物まで、本当に色々あるみたいなんだよね。
「中には割と本気で有用な便利道具もありますからね。お湯を入れたらランダムで飲み物になるカップとか」
『……当たった召喚者がお湯を入れてみて、やたら酸っぱい液体になって悶絶してたやつか?』
「あれはジェラールさん曰く「大外れ枠」だそうじゃないですか。滅多に当たりませんよ。必ず飲み切らなければならないという制限がある訳でもないですし。ちょっともったいないですけど」
なおジェラールさんとは、あの魔族の男性の事だ。私が直接会うと(暴走するから)話にならないので、「第五候補」やエルルから聞いた話だけど。
ちなみに傷の治りを促進する包帯とか、魔力を溜めておけるアクセサリとかもあって、争奪戦の激戦区になっていたりする。まぁあったら便利どころじゃ無いからなぁ。それぞれタンクや魔法使いに大人気だ。
なお種ガチャは基本的に宝箱を開けた人のものになるので、1つでも多くチャンスを手にしようと、箱を作るチームは今必死になっている筈だ。なお、私はこのステージが終わった時に、余った種があれば貰えることになっている。
「実際持ち帰れるかは別として、その為にもたくさん罠を仕掛けなければいけませんね!」
『まぁ持って帰ったら、あの双子あたりが開けられるだろうが……』
「もし万が一魔族の人が出てきても、エルルとサーニャが揃っているならどうとでも出来るでしょうし」
『……まぁ確かに、アレクサーニャは扱いに慣れてる筈だしな。あいつら、毎月何人かは誘拐未遂をやらかすから』
「……あの、エルル。流石にそこまでとは思ってなかったんですけど」
『だから最初に魔族だって分かった時点で警戒してたんだよ』
……それは割とシャレにならないのでは? と言う感じの事実も出てきたが、それは実際なってみてから考えるとしよう。むしろサーニャがオーバーキルやらかさないか不安になって来たが、うん。カバーさんもいるし、フォローは出来るだろう。たぶん。
流石にこのステージではこれ以上出てくる事は無いだろうし、日付変更線前にちょっとだけログイン出来る予定だから、その辺可能ならカバーさん達と打ち合わせだな。出来ればルールも含めて。
しかし、密閉度の高い箱か。また事前に用意したり持ち込み辛いものを設定してきたな。まぁ現地調達が大事って意味だと、サバイバルイベントっていうテーマにも沿ってるんだろうけどさ。
「……あと、可能性がありそうで心配なのは、あの谷、というか、この島自体なんですけどね……」
『どういう意味だ?』
「あの“影の獣”が飲み込んだ物の中には、生き物が入っていました。だからもしかしなくても、ここまでに召喚者が挑んだ空間で飲み込まれた動物とかもいそうじゃないですか」
『あぁ。まぁ、いるだろうな』
「で、その中には、そもそも存在を確認されなかった方々も含まれているでしょうし」
『なるほど。ヴォルケにしろネーベルにしろ、そうか。改めて救出する必要があるのか』
まず救出対象の増加。特に前回、1回目のステージは散々だったみたいだからな。それで行くと多分、ヘルマン君の家族は“影の獣”から出てくる可能性が高いんだろう。
魔族の人も救出対象だし、他に巻き込まれている種族が居ないとも限らない。この状況の解決が出来るかどうかは分からないが、色んな意味で可能な限り“影の獣”の絶対数は削っておくべきだろう。
「そして、これだけ大規模に、ある意味大質量になってるんです。呑み込む物の限度や設定がどうなっているのかは分かりませんが……少なくとも、ジェラールさんが居た研究所は、施設そのものが呑み込まれています」
『……そうか。地形そのものがあれの中に呑まれてる可能性が高いんだな』
「話に聞く限り、空間を分割するという特殊な状態にあるにしても、この島の形が大きく変わっているようですからね。それに……この現在において、一体「何」が“影の獣”の器になっているのか、というのも、確認しなければなりませんし」
『どっちかと言うと、そっちの方が問題なんじゃないか?』
「やっぱりエルルもそう思います?」
いやー、相変わらずの難易度の高さだよね。全く、これだからフリアドの運営は! 詰め込み過ぎだよ!
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