第653話 22枚目:情報交換

 お願いの結果として、「第五候補」に付き従っていた召喚者プレイヤー達によってあの何故かやたらと私を敵視する召喚者プレイヤーは無事隔離された。繰り返すが、本人の為だ。

 そして雲竜族の人達が変わらず集まっている洞窟へと移動して、広場の隅でテーブルと椅子を出しての話し合い姿勢だ。……どっから出した? と思ったけど、たぶんこれ、このステージに入ってから作ったな。作らせたと言うのかもしれないけど。

 とりあえずその辺はスルーして、とりあえずこちらで分かっていることを説明する。雲竜族の人達の前なので、撃墜された事と襲撃された事はごにょっと言葉を濁したが、「第五候補」は上手く読み取ってくれたようだ。


「なるほどね~。それで、ちょっと色々不安になっていたところに、彼女の行動……となれば、確かに頭も痛いかしら~」

「と、言う事です。後は本人の今後の為ですね」

「それはまぁねぇ~。それじゃ、今度は私の方なのだけど~」


 で、「第五候補」の方だが、あちらは東側に広がる林のほぼ真ん中が初期地点であり、すぐに他の召喚者プレイヤーと合流できたのだそうだ。もちろん「第五候補」も有名人だし、その中に「第五候補」の支援クランである『妖花の僕』のメンバーが居たこともあって、初動はかなりスムーズだったらしい。

 前回のステージで判明した情報通り、まずは集落跡や開けた場所にある宿光石の大岩を機能させに回ったらしい。この途中で谷の方に光の柱を設置する動きを確認して、ちぃ姫が居る事が分かったのだそうだ。

 谷に光を叩き込む担当が居るのであれば、まずはしっかりと足元を固めよう、という事で、午前中いっぱいを使って大岩を探索、機能させていたとの事。そして光の柱を再設置する為に私が出て来たことを確認して、合流に来たらしい。


「そうしたら~。何だか随分歓迎されているようだったから~、顔を出してみたのよね~」


 と、ころころ笑う「第五候補」。あぁうん、助かったよ。今いる場所に合わせたその言葉選びも含めて。


「まぁ、ともかく。全体で言えば初動はほぼ理想的と言っていい状態ですね。問題は此処からですが……とりあえず、可能なら霧竜族ネーベルの一族の皆さんの所へ向かいたいのですが、治安的にはどんな感じですか、「第五候補」」

「それがね~。全体の比率的に、新しく来た人達が多いみたいなのよ~。大体の場合は先輩である私達の話を聞いてくれるんだけど~、一部困ったちゃんがいるのよね~」


 一応聞いてみた所、やはり独自に動く召喚者プレイヤーは居るようだ。多分一番最初に私にかかってきた数人や、あの爆弾使いさんもそこに含まれるのだろう。

 面倒だが仕方がないな。人数が多くなるっていうのはそういう事だ。だから通報システムがあるんだし。……ちなみに、私はもう例の数人を既に通報済みだ。何、一度で懲りて反省すれば問題は無い。

 なお判定は運営なので、例えば私に対して「チートをしている!」という内容の通報を送っても無視される。何せ公式マスコットだからね。そして実際チートはしていない。全部システムの範囲内でやった行動の結果だ。


「なるほど。まぁ大体予想はしてましたが……それなら、やはりエルルを呼んでから動いた方がよさそうな感じですね」

「そうね~。ちゃんとした護衛の人と~、一緒に行動した方が良いと思うわ~。ところで、準備自体は出来ているのかしら~?」

「組紐は作って頂きました。だから後は、宿光石の光で変質した物の内、枠が一番多いものがあれば呼べます」

「なるほど~。そのお使いに彼が動いていたのね~」

「最初から洞窟に居たようで、洞窟の初動は彼ですね。お借りしています」

「いいわよ~。戻ってきたら私からも褒めておくわ~」


 とりあえず、情報交換としてはこんなもんかな。後は、私は光の柱を設置し直しつつ必要なら霧竜族の人達の所に顔を出して、エルルを呼べたらエルルの指示に従って推定“影の獣”対策ってところだろうか。

 ……爆弾使いさん? こっちに話す気があっても、向こうに話す気が微塵も無いから、どうしようもないんだよなぁ。敵対意識を持っているのは私だけのようだから、もしかしたら「第五候補」なら上手く話を聞きだせるかもしれないけど。

 正直、火薬の調達先に興味はあっても、それ以外に興味をほとんど持てないからなぁ。それも興味っていうか、危機管理の範疇だし。主に『バッドエンド』との繋がりがあるかも知れないって意味で。


「…………人心掌握の手腕だけは、業腹ですが、実に見事と言わざるをえませんからね…………」

「あぁ~、そうね~。今の所、まともな火薬と言ったらあそこぐらいしか持ってないものね~。……話を聞くにも、お茶菓子の1つぐらいはあった方が良いでしょうけど~」

「そうですね。お願いしてもいいですか、「第五候補」」

「あら、ありがとう~」


 言いながら数あるポケットを探り、ソフィーナさん手作りの保存食クッキーを何袋か取り出してテーブルに置く。にこーっと満面の笑みで「第五候補」はそれらを手に取り、自分の服のポケットに入れて席を立った。対価がこれぐらいなら安いもんだ。

 これで後は山賊リーダーさんが戻ってくるまでしばらく待機だな。雲竜族の子供達と遊んで待ってるか。

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