第638話 22枚目:ステージまとめ

 今回は私も眠ったので、昨日の夜よりは早く朝が来た。5日目の朝、つまり、このステージの最終日だ。

 幸い救出目標(推定)である、このステージに居た雲竜族と霧竜族の人達は全員救出済み。そしてどうやら彼らだけであるなら、召喚者プレイヤーが越えられない謎の壁を越えられるらしい。

 問題はそこまでの食料が持つかどうかってところだが、あの推定“影の獣”をどうにかしないと、いや、どうにかしても、この島とその周辺で食べ物を得るのは難しい。


召喚者プレイヤーも持ち込んだ食料には限りがありますし、というか、昨日の夜の時点で召喚者プレイヤーの中にかき氷を食べてた人が居ましたよね?」

「そうですね! “神秘にして福音”の神の神殿を建てる計画も失敗に終わりましたし。けど、何か方法があると思うんですよ。さっぱり思いつきませんけど!」

「まぁ確かに、何らかの方法はあるでしょうね。でないと、サバイバルイベントとは何だったのか、という話になりますし」


 なおこの会話は、私が光の柱を設置しながら、「空の魔女」さんに相乗りさせてもらっているスピンさんと、という形になる。いやほら、ちょっとでも減らしておいた方が良いじゃない? 推測だけど、後の事を考えるなら。

 何とか3日目の昼までに集めておいた木の実や食べられる草などを駆使してここまで持たせていたそうだが、当然それだけでは召喚者プレイヤーだけでも足りない。

 昨日の昼の間に、霧竜族と雲竜族の人達に話を聞く事で、少し集められる種類は増えたようだが、それでも気休めだろう。もちろん、私が持ち込んだ非常食は、自分で食べる分を最低限残して既に提供している。


「お借りしている「氷砕ハンマー」はイベントの景品としてそれなりの数が出て、かき氷機以外にも凍った物を可食物に変えるアイテムが出ている事も確認していますが、それはあくまで、詰みにならない為の保険でしょうし……」

「複数出ていたというのは初耳ですが、そうですね。……と言う事は、それなりの量の食料を調達する方法がある筈なのですが」

「流石にここまでアイテムを制限しておいて、イベントアイテムによる転移だけでまかなえとは言わない筈です! だとすればサバイバルではなくただの探索ですから!」

「……まぁ、経験から対策して、最低でも1日目夜の推定“影の獣”を抑え込め、って事なのかもしれませんが。あの谷から溢れてくるのはもう確定していますし、全てのステージで抑え込みが成功すれば、3日目夜以降も抑え込める可能性はありますし」

「そう言われると否定できませんね! その辺りは情報を持ち帰り、他のステージではどうだったのか、という事を知らないと分かりませんけど」


 恐らく、召喚者プレイヤー総出で、光属性の壁魔法を谷に設置しまくればなんとか行けるんじゃないだろうか。谷だけではなく、山の中にある宿光石の鉱脈をしっかり光で満たしておくことも並行した方がいいだろうけど。

 と言うかいっそ、宿光石は発見した時点で採掘しきっておいてもいいのかもしれない。もちろん雲竜族と霧竜族の人達に相談しなきゃいけないけど、どちらにせよ推定“影の獣”のせいでこの場所を離れなきゃいけないなら、蓄えはあった方が良いだろうし。


「そう言えば、スピンさん」

「はい、何でしょう!」

「あの宿光石の洞窟ですが、あそこって雲竜族の人達にとって、どういう場所だったんですか?」

「あぁ、あそこはですね。やっぱり避難所だったみたいです!」


 スピンさんが聞いてくれたところによると、あの洞窟は雲竜族の避難所だったようだ。「非実体化」していても普通に移動は出来るし、物をすり抜けるって事は無いから、ほとんどの雲竜族が集まっていたらしい。

 ただ彼らが言うには、あの洞窟はもっと大きかったようだ。それがなぜあの大きさだったかと言うと、宿光石は分類が宝石、つまり、経年変化で宿光石の鉱脈が成長し、空間が狭くなっていったらしい。

 だから、あの左端の下向きな折れ曲がっていた通路と、左から2番目の上向きのらせん状になっていた通路は、元々外に繋がっていたらしい。


「それが塞がって行き止まりになっていた、と」

「物をすり抜ける事は出来なくても、「非実体化」した状態だと狭い所に集まっていても大丈夫で良かったです! あ、そうでした。宿光石は、その蓄えた光の量によって硬度が変わるという性質があるみたいです!」

「おや、そうだったんですか?」

「はい! 蓄光度が50%の時が一番柔らかく、そこから離れる程固くなるみたいですよ!」

「あぁなるほど。スピンさんが来た時は、ほぼ100%になってましたからね」


 そういう仕様があったようだ。なるほど、あの設置されている大岩はどうやって運んだんだろうと思っていたが、柔らかい状態なら切り出すのも簡単だろう。洞窟の中なら、光の量も調節が効くだろうし。


「後はあのイベントアイテムですね。どうやら聞いたところ、宿光石の光に長時間晒された有機物があのような形になるようです! が、雲竜族の方も霧竜族の方も、変化には年単位で時間が必要だった筈、とおっしゃられていて……」

「何らかの変質があったか…………この特殊な空間になっている影響が出たか、そのどちらかですね。ちなみに有機物と言う事ですが、そこに生きている物や作られたものは含まれるんでしょうか?」

「生きている物は含まれていませんが、宿光石の周りに作った柵は消えていましたから、作ったものは含まれるみたいです! その時間と、イベントアイテムのどちらになるかが決まる条件の検証もしたかったんですが、ちょっと時間が足りません」

「……平地でアイテムを呼び出すものになり、洞窟だとスキルを開放するものになる、となると、宿光石以外の光の量、とかでしょうか」

「なるほど! 検証項目に加えておきます!」


 けどまぁ、このステージで詰められるのはこれぐらいだろうか。残念だが、これ以上は次のステージだな。

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