第626話 22枚目:探索成果

 さてそこから、私は光を叩き込み続け、雲竜族の面倒を見ている召喚者プレイヤーはもふもふを愛でながら紐を編み、谷の調査チームは面倒を見ている組と適宜交代しながら調査を進めた。

 流石にあの洞窟に召喚者プレイヤー全員が入ることは出来ないし、そもそも「非実体化」の解けた雲竜族が入りきらなくなってしまう。そうなったら色々本末転倒だ。

 と言う事で、谷を調査していた時間が長い召喚者プレイヤーから順番に、洞窟にお泊りする召喚者プレイヤーを選ぶことに。……目先のもふもふに釣られていた召喚者プレイヤーがショックを受けていたが、まぁ仕方ないな?


「頑張りには報酬があるべきですよね」

「そういう事ですね! そもそも可愛いが嫌いな人はこっちへ来ていませんし!」


 結果として、調査に欠かせない移動手段として大活躍だった箒使いの召喚者プレイヤーが多く洞窟にお泊りする事になった。今? シャンプーしてブラッシングしてふわふかになった毛玉に埋もれて幸せそうだよ。

 ちなみにヘルマちゃんは、日が暮れて洞窟に引っ込んでから私が洗ってブラッシングした。いやーこれだけもふもふだと梳かしがいがあるな。基本の形が自分と一緒だから、梳かし方も迷わなくて良かったし。

 っで、灯りの設置も十分にして、後は皆でひたすら紐を作りまくった。どうやら長さが長い程効果が高くなるらしいので、せっせと作っては端を繋ぎ合わせ、どうやって身に着けたらいいんだ? とちょっと思う程長く伸ばした。


「ところで、試しに使った訳でもないのに一体どうやってそんな細かい情報が分かったんです?」

「ふっふっふ、それはですねー。“神秘にして福音”の神様から、特定のスキルを持っている召喚者へ、眷属のお力を借りる事が出来るスペシャルな特殊アビリティが授けられたからですね!」

「えっ、なにそれ知らないのですが」

「信仰値はともかくその条件がかなり厳しかったので、たぶんちぃ姫さんだと適性的に厳しいんじゃないでしょうか」

「あー……そういう……」


 まぁ、適性ならしょうがないな……と言う事で私がその、ながーい組紐の束を背負った状態で、アイテムを呼び出すイベントアイテムを使ってみる事に。スキルと違って入力式なのか。

 ここで【絆】か【契約】、あるいは「関係者」とか入れると、テイム対象を選ぶことができるらしい。とりあえず【絆】と入力してみると、お、一覧が出た。

 ……人数が足りないな。というか、エルルの名前が無いんだけど。いや、他にもサーニャはまぁ別として、ルディルとかルージュの名前が無い。おかしいな、エルルはともかく、種族レベルは問題なく私の方が上の筈なんだけど。


「そしてここで特殊アビリティの出番ですよね!」

「そうですね。これでまだ強度が足りないとなったら実質不可能ですし」

「それではちょっと失礼して……。

 [教え給え、導き給え

 正しき道を辿れるように

 我らに導を授け給え――アナライズ]!」


 ……コトニワを知ってる私からすれば、あーもー完全に“ナヴィ”さんへの祝詞だー。となる詠唱だがそれはともかく。どうやらそれで追加情報が出て来たらしいスピンさんは、ほうほうとしばらく自分の中で納得した後、スクリーンショットを撮って見せてくれた。

 そこに映っている画面は、私が見ているものと違って、出ていない皆の名前もグレーアウト状態で並んでいた。そして名前の下に、何やら細かい字が並んでいる。

 えーと……必要召喚強度が種族レベルの差で出てて、召喚に必要なアイテムを選ぶ枠の数と、召喚強度強化量が「縁の組紐」の長さで出てて、かつこれは、あ、召喚相手が寝てないとダメなんだな。本当に相変わらず最高なんだから!


「なるほど、枠が足りないって事ですか。……しかし5枠使わなければいけないとは、流石エルルとサーニャです」

「残念ながらエルルさんは起きていらっしゃるようですから、少なくとも今回は呼べませんが、これで次からはご同行出来る目が出ましたね!」

「必要な組紐の長さが100mって時点で普通は無理ゲーなんでしょうけどもね……」

「まぁそれは、保護者の方々ですし!」


 とりあえず、「縁の組紐」の長さを測って無駄が出ないようにしよう。そんなに生え変わるものでもないだろうし、無理にカットするのは鱗をはぎ取るのと同じだろうから。

 ……もし大人の雲竜族が、この洞窟に居る事は居て。場所や出入り口が狭いから「非実体化」が解除できない、とかなら、ワンチャンあるんだろうけど。とりあえず今の所は、ここにある分で全部だからなぁ。

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