第625話 22枚目:探索進捗

 さてもふもふこと雲竜族(の子供)については嬉々として面倒を見ている召喚者プレイヤー達だが、もちろんもふもふを愛でる為だけに集合した訳ではない。いや、本人達の認識的にはこれがメインだったかも知れないけど。

 私が光の柱を叩き込み続けている場所から少し離れ、何人かでチームを組んで、この谷自体を調べに掛かってくれたのだ。流石に広いからね。私も1人じゃ手が回らないと思ってた。

 まぁそれに、山を割ったようなこの谷はとても深い。だから、底の方は日中であるにもかかわらず、深い闇に沈んでいるのだ。となれば……あの、“影の獣”とやらが潜んでいる可能性も、それなりに高い訳でね?


「もう折り返しだからこそ何とかしたいですし、何ともならなくても調査対象としてはかなり重要度が高いですからね! それに正直なところ、ちぃ姫さんがいるステージでないと詳しい調査は無理じゃないかと!」

「……まぁ、少なくとも出力という意味では、ステータスを完全に戻した私以上はいないでしょうね」


 元『本の虫』組、というか、検証班的にはそういう判断もあったようだ。まぁ、うん。そうだね。少なくとも、身一つでの純粋な出力って意味では、ステータスの暴力である私を越える相手はいないだろう。少なくとも、今のところは。

 もちろん、例えば某爆弾魔が、その生産力を全て閃光弾や照明弾に突っ込んで、それを大量放出したりすれば別かも知れないが……まぁ、そういうまっとうな協力は、まずしないと思っておいた方が良いだろうし。

 そんな訳で、そこから夕方までは雲竜族と触れ合いながら調査タイムだ。私は変わらず光の柱を維持し、谷底に光を叩き込むのがお仕事だったけど。もちろん当たり判定があるので、避ける事前提だが。


「最初の状態はスクリーンショットで見るしかありませんが、何と言うか、大当たりかつ流石ちぃ姫さんですね!」

「どうなってました?」

「推定ですが“影の獣”と思われる夜の襲撃者と、ほぼ同じ動きをするものが谷底に溜まっています。そしてその体積は、こちらも推定ですけどかなり下がっているようです!」

「やはりここに元凶がありましたか。まぁあの洞窟も最初は真っ暗でしたし、十分考えられる事でしたけど」

「そうですね! 運営の想定だと、少なくとも大半の召喚者プレイヤーは2日目の朝を迎えられなかったでしょうから。丸1日をロスした上にこの食糧難、この谷に辿り着くのはかなり後のステージであるという想定だった可能性がありますね!」


 むしろ特級戦力わたしがいなければ宿光石にも辿り着かない可能性も高い訳だが……。それはまぁ、あの人工物や開けた場所に「設置された」宿光石の大岩からもいけるか。1日目の夜を生き延びれば、光属性で攻撃してみようという発想は出るだろうし。

 空を飛ぶという移動手段は、召喚者プレイヤーにとっては割と普通の事になりつつある。だから、この谷や、山の南側を調査する事も、一応想定の中には入っているだろう。

 ……問題は、その想定が「調査が進めばいいな」ではなく「調査が絶対必要だよ」だった場合だ。生き残るのに必死で、そこまで調べられないとかも普通にあり得るだろうし。


「サバイバルで食糧危機に陥っている以上、召喚者プレイヤー同士での争いに終始する、という可能性もあった訳なんですが、その辺はどう想定してたんでしょうねぇ……」

「有り得なくはありませんね! でも、少なくとも雲竜族の皆さんとは遭遇できる想定だったみたいですよ? こんな物が出来ましたし」


 と、スピンさんが見せてくれたのは、雲竜族の抜け毛をよって作ったと思われる組紐だった。何だろう? と思いつつ【鑑定☆☆】すると。


[アイテム:縁の組紐

説明:縁の力を強化する組紐

   これを身に着けた者は、仲間の元へ行きつきやすくなる

   また、離れた場所にいる仲間を呼び寄せる力も強くなるようだ]


 という表示が出た。ふむ。


「……すみませんスピンさん。ちょっとこれ、そこそこの量を頂いても? あとイベントアイテムで、アイテムを呼び出す方を1つでいいので頂きたいのですが」

「ですよね! 私も出来れば頼りになる保護者枠の方がおられればいいのになーと思っていたんです!」

「サバイバルスキルが高い上に雑学にも詳しいとなおいいですよね?」

「控えめに言って最高ですね!」


 よーし、周りの召喚者プレイヤーからも異論はないな。

 ……もちろんそれでも呼べない可能性はある訳だけど。いくら強化した所で、種族レベルの絶対値が違う訳だし。

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