第589話 21枚目:生産事情
騒ぎはあったがまぁそれはそれとして……若干の怪我人で済んだらしい。怪我人は出たようだ……そこからは私を隔離するというのもあって、ひたすら生産作業に没頭する事になった。
相変わらず『アウセラー・クローネ』の売り出す消耗品は大人気みたいだからね。作れば作るだけ売れるという嬉しい悲鳴が上がる状態だ。ものがものだけに外に委託するって訳にも行かない、っていうか委託した所で意味が無いし。
もういっそ筆で描くんじゃなくて、版画みたいに刷っても効果が出ないかな……とか思い出したところで、朗報が届いた。
「どうやらあの火薬なのですが、その品質や効果を落として大量生産する、という方法で作られていたようです。ある一定以上の【錬金】と該当生産スキルのレベルがある状態で、完成品のみを【錬金】するとそうなるようですね」
「えっ、威力落してあれだけの爆発力があったんですか?」
「恐らく、ごく少量の超高級火薬を作ったか貰ったかして、それを元にしたのでしょう」
と言う事なので、さっそくお札を錬金釜にぽい。【錬金】も【符術】、があれだけ使ってようやく進化した【札術】も、平均からすれば大分レベルが高い。ステータスも十分すぎるし、私なら成功するだろう。
と思ったのだが……何故か錬金釜は、ぼふん、と煙を出してしまった。うん?
「……完全失敗した時に出る煙ですね」
「完全失敗」
「スキルレベルが足りないアイテムを作ろうとすると、素材ごと消滅する結果が出るんです。その時に出る煙です」
……逆に言えば、私で成功しなければその「一定以上」が滅茶苦茶高いって事なんだけど。なるほど、明らかに便利なのに知られてないのは、その要求レベルの高さのせいだな?
しかしこれを成功するとか、どれだけスキルレベルが高いんだ。やはり『バッドエンド』火薬作成部門の労働環境は真っ黒だな。もしくはなにかと紙一重の趣味人。
と、ここで、そろそろ見慣れてきた感もある、カバーさんについてくれている“ナヴィ”さんが、何だか落ち着きなく、言い換えればそわそわしているっぽい事に気付いた。……あっ、そっか。
「すみません、“ナヴィ”さん。ちょっと宜しいでしょうか?」
『はい、いいですよ。何でしょう?』
「今の作業なんですけど、何で失敗したのかなーっていうこう、説明か、せめてヒントって頂けますか……?」
『もちろんです』
そうだよ、ナヴィティリアさんはエルルと一緒にいる筈だからちょっと物理距離的に遠いけど、“ナヴィ”さんが居るなら聞けばいいんじゃん。
で、聞いたところによると。
『【錬金】スキルによる合成法「希釈合成」ですが、これは【錬金】と【錬金】以外の生産スキルのレベルが共に200以上の場合に実行可能です。レベルの合計値に応じて合成可能なアイテムの種類が増加し、合成結果のランクが上昇します。ただし利用する2つのスキルは、同じ進化段階でなければなりません』
「あー……スキルレベルはともかく、スキルの進化段階がずれてるとダメなんですね……。そう言えば片方進化してました」
『なお、完全失敗の場合は経験値が入りませんので、お勧めしません』
「ありがとうございます。……ちなみに【錬金】って進化するんですか?」
『【錬金】はレベル300で【錬金術】に進化しますよ』
「なるほど。ありがとうございます」
と言う事は、まずはポーションを作って200後半に突入してる【錬金】のレベル上げだな。
「……ていうか、生産スキルのレベル上限高くありません?」
『汎用生産スキルツリーにおける進化後のスキルは、レベル500で更に進化します』
「しかもまだ上があるんですか」
『その次の進化はレベル700となりますね』
「ものすごく先が長い」
なおカバーさんはこの情報を何かメモってどこかに連絡している。どうやらこれも知られていない情報だったらしいね。しかしすごいな生産スキル。どれだけレベル上げられるんだろう。
「……ちなみにですけど、生産スキルってどこまで進化するんですか?」
『5次スキルを極める事で最終段階となりますね。4次スキル、5次スキルは共にレベル1000まで上げる事が出来ます』
「経験値効率すごい事になりそうですね?」
『生産スキルの獲得経験値は、使用する素材と設備に大きく依存します。なので新素材をどんどん取り入れ、設備を強化する事をお勧めします』
「あ、そこ作成結果じゃ無いんですか」
『良質な銅の剣を100本作るより、平凡な鋼鉄の剣を1本打つ方が経験値としては上になりますね』
「あー、なるほど……」
金策としては銅の剣100本の方が良いけど、それだとスキルが育たないのか。この分だと試行錯誤もした方が良い感じだな? いやまぁ、生産をする腕前を鍛える、って意味だとそれで合ってるんだろうけどさ。
……モノづくりって大変だなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます