第576話 21枚目:探索終盤

 土曜日夜のログインだが、クランメンバー専用掲示板で、ログイン時間が指定してあった。どうやら『アウセラー・クローネ』のフルメンバーを揃えるつもりのようだ。って事は、何か勝負をかけるって事だな。

 多分根回しが必要な所へは全部連絡がいってるだろうし、月末の土曜日の夜だから勝負をかけるならここだろう。もちろんそれはあの害悪クランも想定しているだろうから、妨害も考えられるけど。

 ……いっそ妨害に来られた方が良いかも知れないな。それってつまり、直接殴れるチャンスって事だろう?


「ま、妨害無しで勝負を決め切れるのが一番だし、その裏をかいてポリアフ様達に何かあったりするって言うのも無ければ最高なんだけど」


 大体の場合はそうならない、ってだけの話でな。本当にあの自分の趣味に思う存分走るゲテモノピエロは。

 さて、いつもよりちょっとずれてるが、時間だ。ログインしよう。




 ログインしてまずクランメンバー専用掲示板を開く。お、結構大量の情報が書き込んであるな。というかこれはもしかして、作戦会議みたいなことをしながら見る為の資料扱いか?

 とりあえず一旦確認を止めて、先にうちの子の様子を確認しに行く。……うん。だと思ったよ。案の定しんどそうな顔が揃っていたので、大部屋に集合しつつ【王権領域】を展開だ。


「ほんともう、元凶許すまじね……」

「私、あちらでも低周波が苦手なんですよ。近くで工事があったりすると、もうずっと気分が悪いままになってしまって……」

「まぁ実際探索に行ってる人は体調崩してるそうっすし、きっちりとっちめておきたいとこっすね」


 流石に探索の最前線にいるエルルとサーニャとルージュは、向こうの入り口付近にある休憩所兼砦の基礎から戻ってこないようだが、あちらにはナヴィティリアさんがいる。そしてこちらには、フライリーさん、ソフィーナさん、ソフィーネさんと、3人分の“ナヴィ”さんが居るので、恐らく会話に参加するぐらいは問題無いのだろう。

 さほどなくカバーさんもやってきたので、私以外の「魔王候補」(「第二候補」を除く)とエルル達をテレビ電話で結ぶことが出来るな、と思ったら、本当にそういう形でやるらしい。なんかすごいとこの会議っぽいな。


「あら? そう言えばちぃ姫のエリアバフが発動してるのに、普通に繋がるわね?」

「そうですね? 確か大神官さんが、祈りや儀式に差しさわりがあるって言ってませんでしたっけ」

「恐らく、正真正銘の眷属様本体である事と、ちぃ姫さんがメイン信仰しているからだと思いますよ」

「すっげぇ説得力っすね」


 ……。まぁ大丈夫ならそれに越した事は無いし、何も問題は無いな。

 流石最高な“ナヴィ”さんと言うべきか、住民の皆にも掲示板に書き込んであった内容を見れるように出来るらしい。なのでやっぱりそのまんま会議資料だったらしいクランメンバー専用掲示板の内容を見ながら話し合いだ。

 まずはざっくりとした現状確認からスタート。エルル達を筆頭に、トップ召喚者プレイヤー達はもう既に、あの低い音の音源の位置をほぼ特定するに至っているそうだ。もっとも、そこからがどれだけ探しても進めないようだが。


『たぶんこれ、道自体が無い感じだな。お嬢じゃ無いが、壁を壊さないとどうしようもないぞ』

『まぁ別に壊せるかどうかで行ったら壊せるだろうけど、確か壊しちゃダメなんだよね?』

『(・x・;)(お2人は大丈夫かも知れませんが、私と周りの皆様はたぶん氷漬けになってしまいますので……)』


 ナイスストッパー、ルージュ。普段の私も大概だって? まぁうん、それはそうなんだけど、ほら、私が今まで壁をぶっ壊したのは、誘拐された上で他に護衛対象が居て致し方なくとか、別空間になってて本時空には影響が無い場所だけだから。

 探索状況はそんな感じで、現在も雪の掘り出しは進んでいるとの事。ちなみにエルルとサーニャが探索に向かっている現在雪雲の対処はどうしているかと言うと、どうやら攻城兵器を作るだけ作っているというクランがあったみたいで、そっちが担当しているらしい。……いろんな趣味の人がいるんだなぁ。

 そして冷人族の人達の身体だが、こちらも比較的順調なようだ。人数が人数だし、魂の総当たりはなかなかに時間がかかる。それでも、時間経過とともに難易度は下がっていくし、スピードは上がっていくだろう。


「そしてこれからの動きですが、お手元の資料をご覧ください」


 んで、これから実際にどうするかという内容だが、まず「第一候補」は万が一に備えてポリアフ様達の神殿に常駐したまま、つまり戦略的バックアタックの警戒兼冷人族の人達を守るって事で現状維持だ。

 「第五候補」はクレバスからそこそこ離れた位置で最終防衛ラインを形成。「第四候補」はそれよりクレバスに近い位置で対超大型モンスター相手の籠城戦を用意。要は大規模戦闘に備えた準備って事だな。

 そして私は、後方の防衛ラインの辺りで生産作業を続けつつ、実際大型が出現したら即座に最前線へ参戦だ。もちろん他に対処が必要な大物か、事件が発生したらそちらへ向かうという可能性もある。


「と、いう形で動きつつ、他のクランとの連携も意識して動いていく予定となっております。ただし実際にどうなるかはなってみないと分からないので、あくまでこちらは基本として、その場に応じた動きをお願いします」


 こんなに嬉しくない「予定は未定」があっただろうか。……いや、分かるけどね? 主にあのゲテモノピエロが噛んできたらとか、運営大神が余計なギミックを仕込んでいたらとかで、予定は狂うものだけどね?

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