第546話 20枚目:探索計画

 途中でカバーさんから連絡が来て、一度だけ枝道を行き止まりまで進んでみた。そしてそこに、恐らくは掘り残しだろうな……という感じで溶岩石に埋まった山火石を見つけた事で、推測の裏付けは完了だ。

 ディックさんと一緒に海岸を探して見つけた山火石は、小さいものでテニスボールぐらい、大きいものでバスケットボールぐらいだった。だがここからは、ピンポン玉サイズからバランスボールぐらいまで、本当に様々な大きさの山火石が掘り出せる。

 海岸にあった物は、噴火の時に一緒に飛んで来たものだと考えると、やっぱりこの洞窟がメインとなる入手場所だったのだろう。


『山火石は、その大きさに応じて気温を上昇させる範囲が変わるというのが既に分かっている。故にその一番大きいものは、村や町の中央に置いて使うものであったのかも知れぬな』

「町1つ丸ごと暖房かけられるって、冷静に考えるとすごいですね……」

『消耗品とは言え、まごう事なき神の力によってつくられ、授けられたものであるからな。ある意味形ある神の加護である。ならば、それぐらいの性能はあろう』


 洞窟の奥に何が居るのかというのはほぼ確定したが、そうなると今度は仕掛けてある罠の方向性というのが変わって来る。何故なら、直接こちらにダメージを与える必要は無いからだ。

 具体的な方法は分からないが、この山で眠っている女神様を起こしさえすればいい。起こしてしまえば、大陸の現状、大事な洞窟の状態、そういうのを認識する。そして認識すれば、後は勝手にブチ切れて全てを台無しにしてくれるだろう。


「抑える側の力が足りない以上、ここの調査を取りやめてでも刺激しない方が良いんでしょうけど」

『一理あるが、そうであるならなおの事調べねばなるまい。その場合、時限式の何かが仕掛けられている可能性が高いであるのだからな』

「そうなんですよね。と言うか、仕掛けてない訳が無いでしょうし」


 だって私なら仕掛けるからな。それも思いっきり気合を入れた難易度も被害も最大化した奴を。見た目のリスクを避けて探索を止めてくれれば万々歳、リスクを背負って探索するなら発見も解除も可能な限り難しいようにしておくさ。

 なので、嫌な予感はしながらも、入っていく分には1本道の洞窟を進んでいく。んー、カバーさんのやり取りだと、そろそろ中央にある火山の真下に到着する感じなんだけどな。

 ついでに残りログイン時間を確認。……これはちょっと、今日中の確認は厳しいか?


「問題は、女神様の所に辿り着く事があのゲテモノピエロの仕掛けをどうにかする事とイコールではないって事ですが……時間の都合もありますし、どうしましょうか、「第一候補」」

『そうであるな……どこかの枝道の先をさらに改造、などとされていては、どれほど捜索に時間がかかるか分かった物ではない。そしてもちろん、それ以外に手段などないのだから、当然罠が仕掛けられているであろう』

「まぁ仕掛けますよね。女神様を起こしてしまいかねないものから、自分達の利になるようなものまで各種取り揃えているでしょう。だってわざわざ仕掛けているところに飛び込んで来てくれるんですから」

『となれば、慎重にせねばならぬわけだが……やはり人手が足らぬな』

「「第四候補」にも限界がありますからね。特にこういうややこしい問題の時は」

『確かにモンスターによる寄生と洗脳は警戒しなくとも良かろうが、邪神の手札自体にそれらが無いとは思えぬからな。その点、「第五候補」もなかなか手出しし辛かろうし』

「かと言って、情報を一般公開してしまうのもそれはそれで、妙な細工を重ねられないとも限りませんしねぇ……」


 本当に、油断しない相手って面倒だな。私が言うなって? ははは。

 ともあれ、その辺も含めてカバーさん達に相談だな。……確か何か一部トップ召喚者プレイヤー達が、対『バッドエンド』での特別協定というか、PKに対するPKKみたいな感じで集団を作ってた筈だから、その辺りになら協力を仰いでも大丈夫……じゃないだろうか? 多分だけど。


「私達で探索し尽くせればいいんですが、流石にこの規模だとちょっと厳しいものがありますし」

『そうであるな。やはり、慎重に話を運ぶ必要はあっても、外部に協力を要請するべきであろう』


 もちろん私達が働かないって事では無いので、ひとまず翌日のログイン時間は相談しておくけどね。出来ればリアル2時間は合わせて探索を進めたいところだ。

 ……だって、万一女神様が起きそうになった時、それを抑えられるのはたぶん「第一候補」だけだし。ごく少数での護衛、という意味では、私とエルルとサーニャが現状最高だろうからね。

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