第535話 19枚目:雪かきの続き

 イベント最終日を含む土日では、それなりにモンスターの出現頻度が上がるというギミックこそあったものの、今までこの大陸のイベントで起こっていた番狂わせ……多くはあのゲテモノピエロのせいだが……を考えると、平和で大人しいものだと言えるだろう。

 私はひとしきり「第四候補」に協力して雪玉を作り、後の時間は可愛いを意識した動物の雪像を作る事で過ごした。雪合戦の方は、私が居る方だとエルルとサーニャが大活躍だったし、ソフィーさん達とフライリーさんの方ではルシル達がこれも大活躍だったので、大量のポイントが既に入っていたからね……。

 一応交換期限があるので、さくさくと交換しておく。もう誰かが手に入れているだろうけど、カカオ豆をゲットだ!


「これでいつでもチョコレートが食べられてココアが飲めるという訳ですね。育て方はこれから手探りですけど」


 というか環境から作らなきゃいけない場合、どうしようかな。ビニールハウスの再現とか出来るんだろうか。魔法もスキルもある世界だし大丈夫か? 逆にそういうのが噛んで環境を再現するのが難しいとかもありそうだけど。

 イベントのお知らせは、恐らく次のイベントも期間は2週間なんだろう。だから来週、3月の頭に来る筈だ。そして「雪祭り」が終わったからか、「氷晶の核」を埋め込まれた雪像以外は最初の形に戻って動かなくなった。

 ちょっと問題になったのが「氷晶の核」を埋め込まれて、なおかつ【絆】でも【契約】でもテイムされていなかった雪像なのだが……彼ら(?)はまず自分の制作者の所に向かい、何かをねだるようにして、しばらくの間その後をついて回るという行動を取った。


「どう見ても「なかまにしてほしそうなめでみている」だったっすよあれは。結構な人数が根負けしたって聞いたっすけど、あれはしょーがねーっすわ」


 なおこれは実際にそういう雪像を見たらしいフライリーさんの感想だ。……まぁ、「氷晶の核」はそれなりに必要ポイントが高かった。だから埋め込むとすればそれなり以上に出来の良い雪像な筈で、思い入れもあるだろう。

 だがそれでもテイムしない召喚者プレイヤーもいるようで、これは雪像の製作者と「氷晶の核」を埋め込んだ人物が違う場合が多かったらしい。しばらくついて回ってみて、全くテイムの目が無いと判断すると、今度は「氷晶の核」を埋め込んだ人物の所へ行って、同じくしばらくの間その後をついて回るらしい。

 ここまでで9割方はテイムが実行されるのだが、製作者と「氷晶の核」を埋め込んだ人物が同じで、なおかつテイムの目が全くない場合と……製作者、及び「氷晶の核」を埋め込んだ人物、そのいずれもが、既にこの大陸を去っている場合が、ちょっと問題で、うん。


「いやーこうくるかーって感じだよなー」

「そうねぇ~。……まぁ~、この子達の気持ちを考えると~、分からなくはないけれど~」

「…………えぇまぁ、程度の差があるとはいえ、犬猫よりは賢いようですから、分からなくはないのですが」


 その場合……つまり、自分を作り、仮初の命を吹き込むのに関係した相手が見つからなかった、テイムしてくれなかった、という雪像は、何をどうやって感知しているのか、どうもステータスの魅力や、【絆】及び【契約】のスキルレベルが高い相手を探して、そっちに寄って来るみたいでな……?

 ……うん。さっきの言葉というか会話で大体で分かる通り、私、「第五候補」、「第四候補」が、野良になってしまった雪像達に大人気なんだよ。まー色々いるもんだ。やっぱり人数が増えるとこういうのの幅は一気に広がるな。

 が。正直に言わせてもらえば、面倒が見切れない。こっちの大陸に拠点を移す予定も、出張店みたいな形で拠点となる場所を作る予定も無いんだ。余り気味とはいえ「白紙のスキル書」も、こうわらわらと集まるほどの数になると絶対に足りないし。


「しっかしほんとにこういう関係で「第三候補」は真面目だなー」

「そうね~。だから色んな子が寄って来るんでしょうけど~」

「その言い方は何となくそれなりに語弊があるような気がするのですが?」

「あっはっはっは、気のせいだって!」

「そうそう~。気のせいよ~」


 ……何だか微妙にもやったが、最終的にカバーさんに相談して、恐らくここから救出できる冷人族に預けるか、この大陸での活動をメインにする、あるいはこの大陸に拠点を置くだろうクランに託す、という事にして、雪像達をテイムする事になった。

 枠の方は心配いらない。何せ皆の活躍はすごいから、更にレベルは上がっている。色々とおかしなことになっている私をリーダーとした場合のパーティ上限とかで分かってた事だ。

 ……ただ、何でこう、私に寄って来るのは、モンスター型とか動物型の雪像ばっかりだったんだろうな? いや、下手に人の形してるよりかは受け入れやすかったけどさ。

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