第534話 19枚目:詰めていく先
そこから数日をかけて、翌日は土日というところで「第一候補」が調べてくれたところによると、冷人族は北国の大陸の北半分の内、女神様の山の麓を中心として暮らしていたらしい。
以前話に出た時に、雪女的な種族、という理解をしたが、やっぱりそれで大体合っていたらしい。もちろん性別比は大体同じだし、高温で溶けて消えてしまうなんて事は無い辺り、ちゃんとした人間種族ではあるが。
寒冷地に適応した彼らは基礎体温が低く、また非常に燃費が良い為気温が低い場所でも普通に動けるのだそうだ。そしてそんな生活の中で、氷や雪、及びそれに類する冷気を操る能力を獲得したのだという。
『でも確か、山の麓を探しても集落跡が残るばかりで、肝心の冷人族は見つからなかったんですよね? どこに行ったのかっていう手掛かりすらも無かったと聞いていますが』
『うむ。だが、冷人族はその特性が特性である故に、逃れる先自体がさほど無いのだ。少なくとも、南は有り得ぬからな』
『……あら~。でも、そうなると~……色々、まずいんじゃないかしら~?』
『あー、あー! そういう事か! なるほど確かに、それはうん、俺らの出番だな!』
なおこれは広域チャットであり、どうやら「第五候補」は北国の大陸の、西の沿岸まで戻ってきているようだ。効果範囲が結構広いな。どうやら(主に「第四候補」が)クランランクを上げたお陰だろうか。
で、話に出て来た冷人族だが、うん。そうだな。現時点で影も形も見えない、だが女神様達曰く全滅はしていない、というのなら、それはつまり、未探索領域に居るって事だ。
もちろん、この北国の大陸の探索が終わった訳じゃない。今回のイベントで、除雪と並行して相当な範囲を探索できたとは言え、まだ未探索領域は残っている。……が。
『“雪衣の神々”曰く、以前召喚者に提供した「雪衣の紐」は、神としての繋がりを通して大神に願い出た結果なのだそうだ。そしてその場合、物はちゃんと用意した上で、それを配って貰う、という形になるらしい』
『なるほどね~。そして~、その場合~、あちらで用意する為の準備が足りなければ~、適宜応じて
『ははぁ、そうなると、向こうに余裕が無い時は、ちょぉっとお高くなるって訳だな?』
『そして余裕が無いというのは、何かしらマズい状態と言う事で……つまり、非常事態が継続している、という事になる訳ですね』
『うむ。すなわち朧げに確認していた問題を、本格的に解決に動く必要がある、その前振りという事であるな』
要するにあれだな。アザラシ達の話に出て来ていた「何か恐ろしいもの」の、調査・攻略フラグだ。最初にその単語が出てきた時から考えると、ようやく、というべきか、それとも8月まで後半年ある事から考えると、もう、というべきか。
どうやらこつこつ調べていた一部のクランから共有された『アナンシの壺』発表情報によれば、あの邪神の化身ことヒラニヤークシャ(魚)の召喚にもどうやら冷人族が噛んでいる、らしい。何で、らしい、かって言うと、どうもこの異常気象で、その辺の資料がやられてしまったようなのだ。
絶対狙ってるよな……というのはフリアドに慣れた
『まー間違いなく1つは雪が降らなくなるって事だし! どっちにしろスルーは出来ない問題だし! 頑張るか!』
『そうですね。とりあえずは目の前の雪合戦を制してからの話ですが。そう言えば「第一候補」、あの「氷晶の核」で自立するようになった雪像について、結局【絆】と【契約】で何が変わったんです?』
『どうやらその冷人族と、何らかの力が混ざった結果という事であるな。なので、今の所どちらが良いとは一概には言えぬ。もちろんこの話はすでに共有済みであるよ』
『あぁ~、そうねぇ~。【絆】を使えば、冷人族の人達に寄るのでしょうし~、【契約】を使えば、その何かに寄るんでしょうね~。少なくとも調査の段階では~、どちらとも言えないかしら~』
『まぁ色々パターンは取り揃えておいた方が良いって話だよな。まーかせろー!』
『半分以上趣味でしょう「第四候補」の場合。趣味の部分はこれ以上は言いませんが、冷人族の方々に引かれない程度にして下さいよ』
『辛辣!!』
『……まぁ的確な事実ではあるがな』
『「第一候補」まで!?』
だって『アナンシの壺』が発表してる資料的に、冷人族の人達って寒冷地に住む人らしく、がっつり着込んでるんだよ。
で、どうやらその使役する人形にも、下手に雪と融合して形が変わらないようにとかそういう理由で、割としっかり着せてたみたいでさ。
……薄着は、ウケないと思うんだよね。
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