第528話 19枚目:雪かきの工夫
イベント開始から3日。
「で、今度は何をやってるんだお嬢」
「ちょっと大物を作ってみようかと思いまして」
パウダースノーの層を広い範囲で掘り返し、雪のブロックの層を何かの形に削っている私に、様子を見に来たらしいエルルがそう声をかけて来た。もちろん私としては、そうとしか答えようがない。
パウダースノーも固めればいいだけの話なんだが、少しでも雪を消費したいなら、大物は上に積み上げるのではなく、下に掘り抜いた方が良いだろう、という判断をした。掘り返したパウダースノー? ……あれは固めて雪だるまかな。
雪のブロックはそう表現されるだけあって、しっかりと固まっていてそうそう簡単な事では崩れそうにない。それはつまり、細かく作りこんだり大きな雪像を作ったりするのに向いているという事だ。
「……お嬢、ちゃんと外に雪は放り出せてるんだよな?」
「割と回りも広めに掘りましたし、一応力加減してその辺りに放るようにはしてますが……あれ? もしかしてもうそこまで積もってます?」
「周りに雪が無いから聞いてるんだよ」
と言う事はつまり、どこかさらに遠くに雪が飛んで行っているという事で……しまった。力加減してるつもりが出来てなかったらしい。
いくら
「……周りには誰もいないので問題ありませんね!」
「そうか。あの雪像の群れがちょっと壊れてるけど、あれはいいんだな」
「あれっ!?」
なお、完成後の雪像が壊されると、与えられたポイントがマイナスされる。でないと、壊して作ってを繰り返すのが最高効率になるし、それだと雪が減らないからね。
イベントページを確認すると、ちょっとポイントが減っていた。やってしまった。とりあえず壊れた分の雪だるまを直してと。
「力加減って難しいですね……」
「なぁお嬢。ちょっと思ったんだが、この雪像、置く場所を作ってそこを守ってから他の場所に行けばいいんじゃないのか? こう、棚みたいな」
「…………それは盲点でした」
多分イメージ的には、棚っていうか立体駐車場だろうか。雪だるまなら大体全部同じ大きさだし、氷で作れば耐久性の問題もクリアできるだろう。どんなに特大の一枚板だって、今の状況なら水を撒くだけで作り放題だ。
後から凍らせられるんだから、一番下をしっかり作っておけばそこから下に掘って新しい段を作るのも簡単だろう。もちろん上にも積み上げられる。天才か? 何でも出来る系のイケメンエリート軍ドラゴンだった。
「流石ですエルル。ナイスアイディアです。ありがとうございます」
「え、おう。……まさか今から本気で作る気か?」
「本気で作りますが?」
うん。何でそこで固まるのかな、エルル。ナイスアイディアなんだから即実行するに決まってるじゃないか。雪像の置き場所に困るなら、置く為の場所を作ってしまえばいい。当たり前の事だが、ちょっと頭から抜け落ちてたな。
さてそんなエルルのナイスアイディアで雪像置き場を作った訳だが、何か次の日にログインした時点では、既に結構な
カバーさんにざっくりと聞いてみた所、どうやらあの「氷晶の核」を使う事のメリット、作った雪像を壊さずに動かし、その下にあった雪を利用できるという点が、雪像置き場を作れば解決するというのが大きかったようだ。
やっぱりフリアドに慣れている人達ほど、あの「氷晶の核」についての警告は真剣に受け取っていたらしい。それでも雪像を置く場所に困って「氷晶の核」を使うしか無いか……。と困っていたところに、私の行動だ。
「なるほど。ちなみにこれはエルルのアイディアですからね」
「お嬢っ!?」
「そうですか、エルルさんが。語弊と誤解の無いように伝えておきますね」
「!?」
だから何でそこでエルルが挙動不審になるのか。褒めてるじゃん。全力で褒めてるじゃん。いい機会だからもっと褒めさせろ。そして自慢させろ。エルルはもう誰が何と言おうがうちの子なんだから。
……もしかして、照れてる? 褒められ慣れてなくて照れてる? びっくりしてるから挙動不審なのかと思ってたけど、もしかして驚きじゃなくて照れだった?
「……ふ、普通の事を、言っただけだぞ……!」
「私の頭からは抜け落ちてましたし、現状を見る限り大半の召喚者は思いついていませんでしたからね。ナイスアイディアです。流石エルル。すごい。相変わらず格好いい上に頼りになります!」
「…………っっ!!」
顔を逸らされてしまった。
んー? 耳が赤いぞ? エルルは髪が短いから首も普通に見えるんだけど、そこまで真っ赤だな? 珍しい事もあるもんだ。エルルは【環境耐性】を鍛えている筈なので、まさか今この段になって霜焼けって事も無いだろうし?
…………絶対今後も事あるごとに褒め倒そう。
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