第529話 19枚目:雪かき佳境

 大物として亀ドラゴンの雪像を作ったり、ワイバーンの雪像を作ったりしながら、順調に小さめ雪だるまの数を増やしたりしている内に、イベント前半戦ラストの土日に突入した。

 少し高度を稼いでから大陸を見回してみると、東側には砦と言うか城が無数に立ち並び、西側には結構な数の氷製雪像棚が並んでいる。場所によっては地面らしい白以外の色が見えるので、少なくとも今の所、イベントは大変順調なようだ。

 第三陣以降の人達が参加しているだけはある。一気に人数が増えたという事の利点は、いかんなく発揮されているのだろう。


「大陸南側の山脈が、何となくシルエットが分かるって言うのはすごいですね」


 最初は本当なんの起伏も無かったもんな、雪で埋められて。それが、何となく地形が分かるとか。数の暴力凄いな。

 さて前半戦の盛り上がりはここだが、このイベントには後半戦がある。そこが引っ掛かると言えば引っ掛かるんだが……と思いつつ、とりあえず雪だるまを作る。だいぶ慣れて来たので、小さいものなら掲示板を見ながらでも作れるようになった。

 なお、雪像で今のところ一番の力作は、先月のイベントである亜空間、そこの、人間種族贔屓の神々の領域を再現した物らしい。細かい所まで作りこんだ超大作なんだそうだ。


「複数のクランが合同で作ってるって時点ですさまじい手間暇がかかってますね……」


 あとメジャーなもので行くと、神々の雪像だろうか。次点でエリアボスだったらしいモンスター、次いで有名な住民の雪像が人気らしい。映像はスルーしたが、私を含む「魔王候補」の雪像も結構な数が作られているようだ。

 まぁ別に雪像を作られるのはいいんだけどな。私が気にしなければ良いだけだし。公式マスコットになった以上は回避できないだろう。……ただ、その雪像に「氷晶の核」を埋め込んで動かすのは流石にどうかと思うんだ。

 なお、雪像の評価としてはまず大きさ、そして作りこみの細かさ、そして全体のバランスや印象、というあたりで評価されているらしい。だから小さいのを数作るんなら、大きいのを1個作った方がポイントは稼げるって事だ。


「……もうちょっとワイバーンを作っておきましょうか」


 イベント限定武器は記念品以上の意味は無いが、「白紙のスキル書」は交換上限まで取っておきたいし、その他素材も交換しておきたい。そしてそれには、このまま雪だるまを作るだけではちょっと届かなさそうだ。

 雪像置き場を上に伸ばして雪を運び込み、氷で透明な支えを作って飛んでる姿のワイバーン雪像を作る。ステータスが高いとこの辺にも補正があるらしく、スクリーンショットを見ながらでもなかなか再現度の高いものが出来るのだ。

 そしてその足元に、わっちゃわちゃとティフォン様の火山に居た小型モンスター達の雪像を配置する。……完全に小型がワイバーンに狙われてる図だなこれ。実際そうだったんだろうけど。


「さて、雪合戦の方は、と」


 雪像置き場を伸ばしながら掲示板を見た所、そっちもそっちで相当に立派な砦や城が出来ているようだ。まぁ上空から見た時にも思ったけど、現在はそれに加えて、相手を妨害したり、逆に進攻していく時に使う障害物や小さな砦何かを作る動きも活発らしい。

 そしてもちろん雪玉の備蓄も進んでいるようだ。まぁ雪の消費が捗れば何でもいいんだけど。と思いながら次のワイバーン雪像の作成に取り掛かり、


『ごめーん! 「第三候補」! ちょっと手伝ってくれ!!』


 ……そんなウィスパーが飛んできて、作業を中断する事になった。




「こっちは平和に雪像づくりをしてたんですけど?」

「悪い悪い、単純な人手は増やせても大物を作るとなるとやっぱり限界があってさぁ。それにちょっとは手伝って貰わないと「第三候補」がこの砦を使えないみたいだし」

「さらっと雪合戦の頭数に加えられてるんですが?」

「安心できる軍事拠点はあった方が良いだろー、色んな意味で」


 という言い分に、残念ながら反論しきることは出来なかった。なのでひたすら積み上げられる氷のブロックに水をぶっかけて堅固にしたり、氷のブロックを作っているところに大量の雪を運んだりして大人しく働いた。

 なお、「第四候補」が選んだ立地はそこそこの大きさの池が湧いている、そこそこ高さのある丘だ。その池を取り囲むように、上から見ると五芒星を2つ重ねたようなとげとげした形の砦が作られている。


「本当に、どこでこういう知識を仕入れてくるんです?」

「この程度は有名な話じゃんかー。ちょっと歴史を勉強すればすぐ分かるフツーの知識だぞ☆」

「…………」


 籠城準備が完璧すぎるんだよなぁ……。

 ちなみに対空防御の方も、魔法的な手段を多用して備えているらしい。……というか、砦の一部がヘリポートみたいになっている。

 で、現在私が手伝っているという事は、エルルとサーニャも手伝っているという事で、手伝ったら砦の防衛に参加できるって訳だから、うん。


「本っ当に、どこでそういうガチな防衛戦思考を育てて来たんです?」

「あっはっはっはっは! それが分かる「第三候補」も大概防衛戦慣れしてるけどな!」


 …………まぁコトニワは色々略されたオマケ要素程度だったとは言え、タワーディフェンスもあったけどさ。

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