第460話 18枚目:合流と移動

 とりあえず方針が決まった所で、外縁からやってくるモンスターの群れをどうにかしなければならない。たぶん、恐らく、「本来の外縁」であるティフォン様を始めとした推定地母神系の神々の領域まで退く事が出来れば、外縁からのモンスターの群れは止まるだろう。

 で、内部のモンスターの群れは種族を問わず召喚者プレイヤー達が団結して攻略に向かい、徐々にその絶対数は減っていっているらしい。そこを乗り越える事が出来れば、中央に集中できるだろう。

 平日になると私はログイン出来るのが1日1回になるのであまり動けなくなる。学生の定めだからな。仕方ない。


「……とは言え、一番の山場は月末の土日でしょうからね。それまでには何とか出来て良かったというべきでしょう」


 そして木曜日のログインで、どうやらこの亜空間の大きさは、最初のものに戻ったらしい、という話を聞いた。つまり、モンスターの群れが発生しなくなったって事だな。

 一旦落ち着いたからか、“細き目の神々”の火山山脈等、管理する神がはっきりしている領域でも再びモンスターが出現し始めた。まぁちょっとでも空間の歪みを消費しなきゃいけないからね。

 さてそれで現在の中央はどんな感じだ、と、元『本の虫』組の人達が書き込んでくれた、クランメンバー専用掲示板を読み進んでいく。


「防衛ゲージの回復と減少量の軽減は今のところ順調。防衛ゲージ自体は回復傾向にあり。中央部分の探索と攻略は、超低速ながら進行中。……流石に亜空間が広がる傾向はありませんか。祭壇の入手は無理ですね」


 まぁおおむね「第一候補」とした想定通りだな。祭壇の入手が出来ないのなら、私達も中央に向かうべきだろう。別に防衛ゲージの回復を手伝ってもいいんだけど。結局あの、正式名称「集め融かす外法の肉塊」のドロップって確認してないし。ヒラニヤークシャ(魚)は殴り足りないし。

 ステータス補正の入るスキルを【吸引領域】で鍛えるって意味で、「眠らぬ故に起きぬ存在」でもいいけどな。他の3種も、素材の大量入手って意味で美味しいだろう。結論、どれに動いても問題や不満は無い。

 ならまぁちょっとでも周囲にとって助かる場所に動こうって事で、久々にエルルとサーニャに揃って合流した所で待機だ。


「たぶんこの元凶も、「大神の悪夢」に加えられる可能性が高いでしょうしね。この流れだと」

「そうなの姫さん?」

「多分ですけどね。この召喚者全体を巻き込んでいく感じからすると、です」

「……まぁ不思議ではないな」


 実際の悪夢かどうか……世界が過去に負ったあまりに大きな傷か、と言われると微妙な所だが、あの海鮮系の巨大なナニカが悪夢認定ならたぶんそうなるだろう。どんな姿と能力でどう攻略すればいいのかはこれから当たってみないと分からないけど。

 サーニャに以前の話や、そもそも「大神の悪夢」とは何かを説明しながら待つことしばらく。


「おっすおっすー。今回はっつか今回もよろしくな「第三候補」! ところでなんか「第一候補」がやけに熱心に魔法の練習してたけど理由とか知らね?」

「あー、数と個の力を使い分けるのと、そう言えば探知系得意でしたっけ。よろしくお願いします「第四候補」。はよ【人化】を使えるようになってくれと言葉で伝える代わりに飯テロしました」

「ぶっははははは!! そういう事か! 超納得!」


 へーい! と相変わらず高めのテンションで「第四候補」がやって来た。そう、私、エルル、サーニャ、「第四候補」でパーティを組み、あの中央部の探索に参加するのが今回の目的だ。パーティ枠に随分余裕があるが、下手に埋めるより臨機応変に応援を入れられるようにした方がいい、という事らしい。

 まぁその辺は「第四候補」に任せる事にして、飛んできたパーティへの招待を受ける。エルルとサーニャはシステム上私のテイム下にあるので、そのまま3人がパーティに入る形だ。

 で、何で「第四候補」がリーダーをやってるかというと、中央への移動の関係だ。実はさらっと、あの3つの宗教の隙間地帯に位置するボックス様の領域に行って、その簡易大神殿に転移できるようにしていたらしい。


「話聞いた時点で絶対必要になると思ったからな! まぁ俺は戦力的にはあれだったから、内側を探索する時間が有り余ってたってのも無くは無いけど」

「助かるには違いありませんね。『可愛いは正義』の方々にお願いしても良かったとは言えますが、それはそれで騒ぎになるでしょうし」

「まぁなるだろうな!! 決まるまでに絶対ひと悶着あると思う!」


 最低でも勝ち抜き戦は行われるだろうな。じゃんけん程度で済むか、バトルロワイヤルまで発展するかは分からないけど。

 まぁ少なくとも、あの防衛ゲージがある間は中央部分にも入れるようになるらしい。それは確定だ。いつから入れるようになっていたのかは、今となっては分からない事だが。

 ……まぁ、間違いなく邪神の領域になってるだろうなっていうので、今から気が重いが……仕方ない。それに邪神の領域だから、盛大に地形を壊しても怒られる程度は低くて済むだろうし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る