第461話 18枚目:中央部探索

 もちろん「第四候補」も私のログイン時間については承知の上なので、一緒に行動する時間は打合せ済みだ。エルルとサーニャについては本人に別途交渉って事で、そちらも話が付いている。

 移動先はボックス様の領域なので、当然そちらにも特殊な「大神の悪夢」へ挑戦する為の召喚者プレイヤー達がいたのだが、そこはソフィーさん達が張り切って手を回してくれたらしく、『可愛いは正義』のメンバーで固められていたようだ。

 お陰で実にスムーズな移動だった。……聞いてないぞ。何だか聞き覚えのある苗字が出てくる第三陣同士のハイテンションな会話なんて聞いてないからな。


「で、ここがその中央部に向かう為の?」

「そ。通称「ゲート」。実際は【鑑定】が通らないから不明!」

「まぁ良くても邪神の物ですし、悪ければ文字通り世界のルールが通用しない相手のものですからね。妥当でしょう」


 向かった先にあったのは、自分の手も見えなくなるんじゃないかと思う程濃い黒い霧と、そこに空間が捻じれる事で開いているように見える大きな穴だった。ここに入る事で中央部へ移動できるらしい。

 ちなみに誤差5秒以内に通らないとバラバラな場所に飛ばされる上、内部で倒されると死に戻りに加えて、ランダムに強制転移させられるようだ。範囲はこの亜空間内部全域。ボックス様が居なきゃ戻るのも一苦労どころじゃない。

 戻るにしても内部を探索して見つかる脱出専用のアイテム「退避の宝珠」を使わなければならず、しかも1人1個以上必要との事。なるほど、それで余計に人数を絞った訳か。


「これは内部で救出待ちをしている人数が結構いそうですね……」

「その救助も兼ねてるんだってさ、今回。その「退避の宝珠」は最低でも中ボスレベルの相手を倒さないと手に入らないらしくて、特殊能力やなんやらでうっかり初見殺しを喰らったパーティの生き残りが逃げ回ってるんだと。怖いな!」

「怖いですね。逃げるにも戦う必要があるとは。で、逃げ回って見つかるアイテムはあるんですか?」

「うーん冷静。通常探索アイテムかー。通常探索アイテムなー。一言で言うと、めっちゃ尖ってる。らしい。状態異常やステータスダウンと引き換えにどうこう、みたいな」

「使いづらいですねぇ……ある意味魔物種族向けではあるんでしょうけど」

「それは思った!」


 なお死に戻りすると、オートマップの記録も消えるとの事。なので色んな意味で情報が圧倒的に足りないのだ。そして、その情報を抱えているであろう救助待ちの召喚者プレイヤーを助けるのも目的の1つだったらしい。

 エルルとサーニャも納得した所で挑戦だ。……まぁ、一応私が防御系の支援バフを掛けてから行こうか。




「うーんこれは何というか全体的に思っていた以上って言うか酷いっていうか。一言で纏めるならどうなると思う「第三候補」?」

「種族レベル1000以下お断り仕様、では?」

「それだ!」


 とりあえずしばらく進んでみて、向こうから襲い掛かって来た上にそこそこ手強い相手を倒して「退避の宝珠」が1個しか出なかったのを確認しての会話がこれだ。いや、とにかく酷いんだよ。

 まず壁のようになっていた黒い霧だが、予想通り内部もその霧で満ちていて視認性が最悪。カンストした【暗視】をメインに入れていても見え辛いって時点でお察しである。【暗視】が何気に必須スキルと化してるな。まぁ視界って大事だけどさ。

 なのでこっそり【暗視】を【暗視☆】にしてみると、何とか徐々に見通せる範囲が広がっている。最初が半径10mあるなしなら、急激にレベルアップが進んでいる現在で15m前後ってところだろうか。普段なら誤差なんだよな。


「ところで何で「第三候補」達は平気なんだ?」

「竜族の状態異常耐性舐めんなです。というか、またですか「第四候補」」

「またなんだよなー。という訳で「第三候補」解除ヨロ」

「いい加減ちょっとは耐えて耐性スキルを取ってみては? ――[影を払うように、病を、毒を、呪いを祓え、清らかなる光よ――ピュアリファイ]」

「流石にこんな複合状態異常食らったら耐性つく前に死んじゃうんだよな! さーんきゅ!」


 で、この黒い霧。どうやら触れていると毎秒状態異常チェックが入るらしく、そこそこの頻度で「第四候補」が状態異常を積み上げては解除を要請してくる。いやまぁ滅多に使わないだけで状態異常解除の魔法はあるけどさ。

 これはアイテムで解除してるといくらあっても足りないし、状態異常の回復だけで魔力が尽きるんじゃないか? しかも確率は低いものの即死もチェックが入るようで、「第四候補」が用意していた対即死の身代わり人形のようなものが壊れていた。

 え、魔法の中に状態異常耐性を上げるものは無いのかって? 属性別であるし、もう全属性分かけてるよ。かけてる上でこれなんだよ。これの何がヤバいって、「第四候補」だってそこまで状態異常耐性が低い訳じゃないって事だ。


「見つかってないだけで既に全滅済みなのでは?」

「いやーそれはナイナイ。あの元凶の影響が出たダンジョンと違って、掲示板やウィスパーやメールは使えるから。一部の情報が声でも文字でもスクショでも出せないだけで。生きてるのは間違いないし、安全地帯があるのも確定情報」

「なるほど。……問題は、その安全地帯が何処にあるのかさっぱり分からない、って事ですが」

「それなー! 見えないって言うのがここまで厄介だとは思わなかった!」

「数で調べようにも、この霧による状態異常で然程もいかないうちに耐久度が尽きてしまいますし」

「俺、役に立ってない!!」


 ちなみにエルルとサーニャは周辺警戒に集中してる。流石に2人でも見えないって言うのは厄介なようだ。

 ……見えない場所からの攻撃でも反応して迎撃してるのはあれ、気配は察知できてるのか、それとも見てから反応して間に合わせてるのか、どっちだろうね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る