第432話 18枚目:スキル難易度
「スキルが増えるのでしたら、進化先が増えはしても減りはしないと思いますよ」
「つーか普通は覚えないスキルを覚えたら、妙な進化先が出てきたりしそうなんだが」
「増える分には構いませんね」
「あついのマシになるならそっちがいいヨー」
という事で、ルウに「白紙のスキル書」を渡して【環境耐性】を覚えて貰う事に。
……した、の、だが。
「え? 出てこない?」
「無いヨ?」
「ほう」
「白紙のスキル書」は、所謂羊皮紙のスクロールの形をしている。それを広げると習得できるスキルの一覧が浮かび上がり、その中から取得したいスキルを読み上げれば、「白紙のスキル書」の消滅と引き換えにスキルが手に入る訳だ。
なのでルウにインベントリから取り出した「白紙のスキル書」を渡したのだが……うん。そもそも表示されてる数が少ないし、実際【環境耐性】は無いな。どうなってんだこれ。
ちなみに私が受け取って広げて見ると、凄まじい数のスキルが並んだ。読むのが大変なぐらいに。エルルに渡してみたら、もっとすごい数が出て来た。こんな仕様だったっけ?
「ここまで顕著なのは初めて見ましたが、ステータスと種族特性によって習得難易度が異なるのでしょう。ちぃ姫さんの場合も、罠を解除したりするスキルは出ていませんでしたからね」
「あー……それは確かに……」
どうやら仕様だったようだ。まぁルウの現状が既にかなりイレギュラーだからなぁ。そもそも独力の限界突破個体だっていう事も考えたら、相当に特殊な部類に入るだろう。
それでも魚という種族の縛りを脱するのは無理がある、という事か。……仕方ない。流石にルウだけというのはあれだから、もっと登山ペースを落としていっそチーム交代制にするか。
「まぁ難易度が高いだけで、汎用に属するスキルであれば習得する事は可能なのですが」
「と、言いますと?」
「前例は既にあるのですよ」
……カバーさん曰く、ペガサスへの進化をどうしても目指したかった
ロープで持ち上げて空中で足を動かさせてみたり、障害物が山ほどあるコースを用意してジャンプさせまくったりしてみたらしいのだが、違うスキルが生えるばかりで目的の【浮遊】は覚えない。そして最終手段として「白紙のスキル書」を使ったのだが、そこに【浮遊】は無かったのだそうだ。
それでも諦めきれないその
「で、その方法とは」
「1つで足りないのなら、数を増やせば良いのです」
「正気か?」
「え、複数同時使用オッケーだったんですか?」
「そうらしいですよ」
「待てお嬢、本気か!?」
「本気ですが何か。そもそも現在時点で既に所持数が20を越えていますから、少々使ったところで痛くありません」
流石のエルルも絶句してしまった。いやだって、私自身は基本的に行動でスキルを習得するし、種族スキルを始め伸ばしたいスキルは限界が高いし、今の所【鑑定】の限界突破にしか使ってないんだよ。
という事なので、ルウが持っている「白紙のスキル書」に新しいものを重ねてみる。あ、ほんとだ。重ねて開くと出てくるスキルの数が増えてる。だがしかし【環境耐性】は無い。更に難易度が高いらしい。
「ちなみにカバーさん。その、馬に【浮遊】を覚えさせた時って何枚ぐらい使ったんですか?」
「3枚ですね」
なら、ともう1枚重ねてみる。あ、一気に出てくるスキルの数が増えたな。えーと【環境耐性】は……。
「無いネー」
「まぁ馬が飛ぶより難易度が高いのは何となく分かってました」
だってそうでもなきゃあの腕力が説明できないからな。魔力耐性もほぼゼロかマイナスで、腕力以外のステータスもほぼ最底辺で、かつ生存環境が限られているからあれだけ吹っ飛んだ力になってるんだろうし。
その1つを克服しようって言うんだから、その対価がすごい事になるのは分かり切っている。そもそも進化前に【人化】出来るようになったのも相当にイレギュラーなのだ。
で、【人化】の他にルウは【地上行動適性】というスキルを海の神から貰っている。つまり、【人化】しただけでは地上での行動に差しさわりがあるって事だ。本来ならな。
「そこから更に練習を重ねて、ここまで動けるようになったんですものね」
「頑張ったヨ!」
「それに加護も、会話が出来るようになるというだけではないでしょうし。そこまで揃えてようやく、という時点で、ハードルは高くて当然なんですよね」
え? 結局【環境耐性】が出てきたのは何枚目の「白紙のスキル書」だったかって?
ははは。更にそこから重ねて、エルルとほぼ変わらない数のスキルが出てくるようになった、5枚目でやっとだよ。
……ちなみに、それ以上重ねると開けなくなったから、一度に使える「白紙のスキル書」の上限は5枚のようだ。
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